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英語学習アドバイス
世界は異文化ではなく「多文化」の集合体。相手・場面・状況に応じた適切な英語表現が、グローバルコミュニケーションのポイント。
田中茂範先生
田中茂範先生 慶応義塾大学湘南藤沢キャンバス環境情報学部教授

 

国際社会におけるコミュニケーション能力とは──

田中茂範先生
 インターナショナルとグローバリゼーション。この両者の違いを考えたことがあるでしょうか。私はこのように定義しています。インターナショナルには国と国との「境界」が存在するけれど、グローバリゼーションには境界が存在しない。 つまり、さまざまな異文化が入り組んだ「多文化」の集合体なのです。このような環境で円滑にコミュニケーションを行うには、文化的規範にとらわれないことが大切。英語と一口に言っても、アメリカやイギリスの英語がすべてではありません。1990年ごろ “World Englishes” という概念が大きな反響を呼びました。ポイントは固有名のEnglishが複数形になっていること。これは、世界の共通言語として多種多様な様相を見せる英語が固有名詞ではおかしいという考え方を表しています。 たとえば、中東の要人の英語力は非常に優れています。しかし、彼らの英語は決してアメリカ式でもイギリス式でもない。そのような英語に触れたとき、理解に苦しむようではコミュニケーションを図ることができません。英語はもちろん、普段のさりげない風習ですら異なります。まずは、頭のなかから「英語はこうだ」「これが常識だ」といった思い込みを捨てること。それが、国際社会に通用するコミュニケーション能力育成へ向けた第一歩と言えるでしょう。 しかしながら、日本人はとくに英語の表現力が乏しいと言われています。表現としての英語を学んでいないため、英語で自己表現することに萎縮してしまうのです。また、英語を話すことへの憧れはあるものの「いまここで使う」という視点が足りないのではないでしょうか。 大切なのは「いつか、誰かと、どこかで英語を話す」という曖昧な意識ではなく「いま、ここで、私が英語を話す」という明確な目標にもとづき、自分の意思を自分自身で表現するための英語=My English を身につけること。とにかく英語は“Learning by Doing”です。使うことでしか使えるようにはなりません。心理的バリアを取り払い、表現者として英語を使う場面をより多くつくることがなにより求められると思います。

英語の基盤を固めることが「使いこなす」ための基本。

田中茂範先生
 では、英語を「使いこなす」ためにはなにが必要なのか──私は300〜500語の基本的な単語(名詞を除く)、いわゆるFundamental Wordsをしっかりマスターすることと考えます。それが英語活動の基盤(foundation)となるからです。たとえば putという単語があります。ある大学生に「目薬をさす」という言葉の表現を設問したところ、その学生は表現できませんでした。put eye drops in one's eyesと表現することができます。 あるいは「軟膏を傷に塗る」という言葉。これも put some ointment on the wound と表現できるわけです。ほかにも「猫を外に出す」だと put the cat out、「水道の蛇口に手をかざしなさい」だと Put your hands under the water.というように putの活用範囲は非常に広い。単に「置く」という意味や熟語の一部としてしか認識していなければ、使いこなすことはできないのです。

 つまり、英語を「使いこなす」こととは、基本的な単語を「使い分ける」ことであり「使い切る」ことなのです。 このような語彙力の強化が、コミュニケーションにおける表現力を豊かにします。何万語という言葉のボキャブラリーよりも、まずは「基本語力」を身につけること。そして、それを自覚しながら勉強することが非常に重要です。基本語力を身に付けるさいの鍵となるのが、「コアをおさえる」ということです。コアとは語の本質的な意味のことで、英語感覚のようなものだと考えておくとよいでしょう。 put のコアは「何かをどこかに位置させる」といったもので、何をどこに位置させる(putする)かによって日本語にした場合の意味合いが異なるのです。put a stamp on the envelope のように切手を封筒の表面に put すれば「切手を貼る」、put a letter in the envelope のように手紙を封筒の内部にput すれば「手紙を封筒に入れる」となるように、です。

 また、言語に文法のないものはありません。私たち日本人が日本語で会話するときでさえ、無意識のうちに文法に則ってコミュニケーションしているのです。つまり、だれでも「文法直感力」を持っているということです。たとえば会話のなかで、相手が違和感のある表現をしたとします。そのときに「なにか変だ」と感じる。例えば「子供は子供だ」は理解可能でも「子供が子供だ」は変な表現だと感じるはずです。 理屈では説明できなくても、そう感じるのは文法直感力が働いているからなのです。当然、英語表現においても事情は同じで、文法は不可欠です。文法なくして英語が話せるということは絶対にないのです。というのは、意のままに表現を紡ぐ力(状況に応じて英文を編成する力)が文法力だからなのです。

 一見、「語彙と文法を強調する」といえば、古めかしい英語教育の響きがあるかもしれませんが、実は、英語力という点において、正鵠を射た考え方なのです。この語彙力(特に基本語力)と文法力を養うためには「日常的に触れる英語の量と質」「実際に使う英語の量と質」「英語を使う必然性」──この3つの条件を満たす学習環境を整えることが求められます。

学習環境を整えるために必要なこと

田中茂範先生
 では、いかにして「日常的に触れる英語の量と質」「実際に使う英語の量と質」を増やすかという問題ですが、日本のように英語が生活言語でない環境ですと、reading を中心に据えた学習法が有効だと思います。

 具体的には、私が監修している英語の学習サイト*(無料)の "chunk" という学習プログラムを見ていただければいいのですが、基本的な考え方は Read & React です。つまり、できるだけ数多くの良質の英文を読み、それに対してなんらかのリアクションを英語で行うというものです。 話題と内容についての共有がなければ、表面的で断片的な英語学習になってしまいます。そこで、しっかりとした英文を読み(聞き)、それを背景にさまざまな活動を行うというのが「触れる英語」と「使う英語」の条件を満たす学習方法だろうと思います。 重要なのは、読むという行為が英文和訳で完結するのではなく、英文を味わい尽くすということ、そしてその内容、文体、表現を利用しながら、英文についてのリアクション(paraphrasing やopinion statement)を行うとことです。これが Read & React の考え方です。英語に触れ、そして実際に使うということを通して語彙力や文法力を養う、これは前述したlearning by doing の実践だともいえます。

   次の課題が「英語を使う必然性」をいかにして導くかですが、これには「英語を使いたい」というモチベーションが不可欠です。前述の通り「いつかは使えるようになりたい」という憧れだけではなかなか身につくものではありません。そこでコミュニケーション力を身に付けるための明確な目標設定を行うということです。 つまり、自分が英語を使う場を想定して「いつ、どこで、誰に」英語を話すのかという状況を明確化することです。その際に大切なのが、英語コミュニケーション力とは、どういうタスクをどれだけ機能的に、どういう言語を使って遂行することができるか、ということであるという視点です。つまり、task-handling とlanguage resources の相互作用として英語力をとらえるということです。 そして、自分にとって必要なタスクが明確になれば、英語を使うということにも現実味がわいてくるはずです。たとえば海外でプレゼンテーションを行うことが想定されるのであれば、それは自分にとって必要なタスクとなります。そして、具体的な場所、状況、話題、聴衆などに関する情報が加われば、英語を使う必然性が生まれ、学習へのモチベーションも高まるわけです。 企業における語学研修の枠組みづくりにおいても、この「目的と目標の明確化」を念頭に置く必要があるでしょう。その際に、「Task Handling=課題対処力」と「Language Resources=言語資源」の相互作用という考え方が重要だろうと考えます。企業研修において、どういうタスクをどういう言語を用いてハンドリングできるようにさせるか、という問題を研修時間、受講生のレベル、指導体制などの変数を考慮しながらカリキュラム・デザインするということです。
*コミュニティ英語学習サイト「エントイ」→

研修効果に主眼を置くGTEC。その可能性に大いなる期待を寄せて。

田中茂範先生
 企業における直近の課題が、必要とされる英語でのコミュニケーション能力をいかにして育成していくかということでしょう。いまでは多くの企業で当たり前のように語学研修が導入されていますが、その研修が果たして「企業の利益につながる」ものであるかを見つめ直す必要があるのではないでしょうか。 たとえば、技術者として海外に赴任するスタッフに対して、レストランでの注文方法といったレッスンがどれほどの意味を持つのか──重要なのは、ひとりひとりのニーズ(タスク)に応じた具体性のある研修を行うことです。また、あらゆる研修の結果からデータベースを構築することも忘れてはいけません。 研修の成果や反省点を綿密に分析したうえで、新たな研修へ反映させていく。このように常に「研修を進化させていく」ことが求められると考えます。「ニーズ(タスク)に応じた研修」と「研修のデータベース化」──この双方を満たすパートナー選びが、研修を成功に導く鍵といえるでしょう。

 「何 (WHAT)を、どう(HOW)教えるか」ということに加え、「何をどう評価(ASSESSMENT)するか」という観点がいかなる英語教育において重要です。WHATとHOWとASSESSMENT は相互の関連し合った関係にあり、全体としての整合性が重要です。 英語力の評価システムの在り方として、私はベネッセコーポレーションのGTECには大きな期待を寄せています。GTECの特長のひとつに、職種や役職に応じた目標値を設定できることが挙げられると思います。語学テストや語学研修はそもそも目的に応じて行われるものであり、この「Task Achievement」を設定することができる点はGTECの大きなメリットと言えるでしょう。 また、GTECは子供から大人に至るまでの発達的段階を考慮*しているため、受験者のステージに応じたテスト内容となっている。この違いは非常に大きい。なぜなら、テスト結果を学習の見取り図として活用できるからです。現在の実力を測るだけでなく、過去からどれだけレベルアップしたのかを把握できるため、企業における語学研修の成果を検証する材料としても大きなアドバンテージがあると思います。

 本来、コミュニケーションはさまざまな表現モードの複合として行われます。一言でいえば、表現そのものが multi-modal(マルチ・モーダル)であるということです。 ここでいう mode には、言語を使った verbal mode と言語以外の nonverbal modeが含まれます。そして、verbal mode はspoken mode (speaking & listening)とwritten mode(writing & reading)に分かれます。multi-modalということは、話すという行為と聞くという行為は切れ目なく連動しているということです。 それだけに、コミュニケーション能力の測定というものは非常に難しいわけですが、そこに挑むGTECのスピリッツや今後の可能性・発展性は評価に値すると感じています。私も語学教育に携わる者として、GTEC、ひいては企業における語学研修のさらなる発展に貢献できたら幸いです。


*成長に応じた英語力を育む「GTEC for STUDENTS」
小6から高3までの発育段階において、発達的段階を考慮した4つのレベルを設定。入試で必要な英語力はもちろん、社会・留学先でも使える英語力の育成をサポートします。




田中茂範先生
田中茂範先生 慶応義塾大学湘南藤沢キャンバス環境情報学部教授。英語教育の実践に根ざした言語論、コミュニケーション論を展開中。2005年よりJICA(国際協力機構)語学諮問委員会座長をめる。2008年4月より学校法人常磐大学智学館中等教育学校で常磐大学参与として英語教育を担当。「Eゲイト英和辞典」(代表編者:ベネッセコーポレーション)、「文法がわかれば英語はわかる」「キーワードでわかる単語帳」(NHK出版)など著書多数。
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