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プレスリリース

立命館大学 映像学部とベネッセ、ゲーム端末の学習利用を研究

   立命館大学 映像学部(京都市、以下;立命館)と、株式会社ベネッセコーポレーション(岡山市、以下;ベネッセ)は2010年1月より「ゲームのユーザーインタフェースのメカニズムを活用した学習コンテンツ」に関する共同研究を開始します。研究結果は次代の携帯型ゲーム機やタッチパネル型の情報端末を利用した新たな学習教材の開発に、生かしていくことを目指しています。12月の先行調査では、学習頻度と成績変化に関係がみられるなど、今後の共同研究につながる知見を得ています。

■産学共同研究開始の経緯■ 
    昨今、教育現場においても、紙の使用量による環境負荷の観点とIT利用促進の観点から、ペーパーレスの学習方法として各種の情報端末の活用が求められています。その一つとしてニンテンドーDS®やスマートフォンなどのタッチ機能を持つ携帯端末も注目されています。


   しかし、携帯型ゲーム機のソフトとして多くの学習タイトルが発売されているものの、その学習効果や品質については科学的な視点から十分にその有効性の検証がされていない状況であり、教育現場や家庭からは学習効果への疑問視や、学習を妨げる存在としてゲームそのものに対する批判も存在しています。


   立命館大学 映像学部では、サイトウ・アキヒロ教授の提唱する、「ゲームニクス」(※) の研究成果を、テレビのリモコンやタッチパネルの操作画面の設計など実用領域へ活用する実績をあげてきました。
   さらに「ゲームニクス」を活かせる領域として、学習への動機付けや反復学習などによる基礎学力の定着といった教育現場のニーズに対する解決策を掲げ、一般的には学習とは一見相容れないと思われるテレビゲームが持つ「時間を忘れてやり続けたくなる」という特性を融合することで、良質な教材の提供が可能と考え、今回の研究を行うことを決めました。
(※)テレビゲームで遊ぶ人を夢中にさせるユーザーインタフェースのメカニズムを体系化したもの。


   ベネッセは主力事業である通信講座「進研ゼミ」での豊富な指導ノウハウをもとに、これまでにもニンテンドーDS対応の学習教材ソフト「得点力学習DS」など携帯型ゲーム機を利用した教材を販売してきましたが、購入者への調査などからゲームを使った学習法が、特に反復学習などに効果をもたらすことに注目していました。


   ベネッセは今回の、立命館大学 映像学部との共同研究を行うことで、「ゲームニクス」に基づき、学習行動と成果の因果関係を分析し、その成果を今後のデジタル教材開発に活用することでより学習効果の高い教材の提供をめざす考えです。




■立命館大学 映像学部サイトウ・アキヒロ教授の提唱する「ゲームニクス」について■
   子ども達はもちろん、大人もテレビゲームに熱中する理由は、テレビゲームに「思わずもっとやりたくなってしまう」要素が意図的に随所に詰め込まれているからです。「ゲームニクス」とはこの「テレビゲームに夢中にさせるメカニズム」を分析し、その要素を多方面の分野に応用出来るようにしたものです。
   例えば、
       1.常にゲームのシナリオの最終目標を持たせながら、今、何をすればよいのかを迷わないように直近目標を提示する。
       2.最初は簡単なことから理解させ、各自の理解度合いに合わせて徐々に難しくしていくことで、自分が習熟していく快感を実感させると同時に、努力の度合いにみあった褒美を用意して常に褒めてあげる。
以上のような要素がゲームニクスの特長となります。


   一つのテレビゲームをクリアするためには長時間の集中力が必要ですが、本来、飽きっぽい子どもたちに、夢中になってもらうために上記のような要素が、テレビゲームの中には気が付かれないように随所に組み込まれています。



■参考■
<立命館大学 映像学部について>
   2007年に立命館大学が開設した日本で初めての映像に関する総合学部。対象とする映像分野は、映画やデジタルゲームをはじめとするエンタテインメントコンテンツから、文化映像、広告、メディアアートまで非常に幅広い。
   キャンパスは、日本において映画とデジタルゲームが振興した原点である京都に位置し、映像制作の知識や実践を学ぶだけでなく、コンテンツビジネスに関するカリキュラムなど、映像を広く社会的に活用するプロデューサー能力の育成に焦点をあわせた人材育成を目指している。
   また、著名な映画会社、ゲーム会社と提携・協力したカリキュラムや、映像分野に関連した企業、行政、地域との産学公連携の取り組み、さらに映像制作や活用に関する長期間のインターンシッププログラムが豊富である点にも特色がある。



<得点力学習DSシリーズ」について>
   ベネッセの通信講座「進研ゼミ」が開発・販売する中学生向け学習教材。中学の全教科書に対応した学習が可能で、1回5分から学習できる単元構成など、隙間時間を利用した暗記学習が可能。
   これまでに約78万本(2008年1月〜2010年1月22日現在)を販売。
http://ds.benesse.ne.jp/


<先行調査の実施と結果>
   2009年12月、立命館慶祥中学校(北海道江別市)の1年生を対象に、ベネッセで開発・販売するニンテンドーDS®用教材ソフト、「得点力学習DS・中学理科」を用いた先行調査を実施し、ソフトの使用頻度と成績の間に関係がみられることなどを確認しました。(立命館大学経営学部 八重樫文准教授の分析による)今後、ソフトの使用履歴と成績・アンケート調査の結果をさらに分析することで、ゲームニクスの要素がどのような学習行動に結び付くかを研究し、研究成果を発表するとともに、共同で研究成果をもとにした新しい学習教材の開発を行う考えです。


◇調査方法◇
立命館慶祥中学校、1年生の168名中116名に対し、ニンテンドーDS Liteおよび、「得点力学習DS・中学理科」ソフトを配布した。
冬季休暇中、生徒は任意に学習を行ったうえ(配布したソフトを使用しなかった生徒もいる)、2010年1月に学力テストを実施。同様に行われた夏季休暇後の学力テストと今回の冬季休暇後の学力テストの結果および、各生徒の教材ソフトに残る学習履歴、使用後アンケートの回答結果を分析した。


◇分析結果(抜粋)◇
学習履歴とテスト結果より、期間中にDS教材を使用し、2回のテストの結果が得られている76名を実験群として分析した結果、DS 教材利用における効果として以下の点が明らかになった。


    1.冬休み明けテストの成績(得点)とDS 教材使用量には、弱い正の相関がみられた。(相関係数=0.294, 有意確率=0.010)
   注)今回の調査において、DS教材使用量とは、該当する範囲の総学習回数

    2.夏冬テストの成績差(学力偏差値変化)に対して、ソフトの使用頻度が影響している。(標準化係数=0.311, 有意確率=0.014)
   注)今回の調査において、使用頻度とは調査期間中にソフトを使用した延べ日数

◇分析結果に対するコメント(立命館大学 映像学部 副学部長 細井浩一教授)◇

   デジタルゲームは日本が世界に誇る新しい表現文化の代表格です。映画やテレビと比べると30年ほどの浅い歴史であり、子どもの遊びというイメージがまだ抜け切れていませんが、最近では単に楽しくておもしろいというだけでなく、大人も納得したり感動したりする深みのあるソフトが増えてきました。


    1980年代以降、特に低年齢層を中心にして生じたデジタルゲームの大流行が私たちにもたらした変化は、大きく2つあると考えられます。一つは、メディアから一方向的に情報を受け取るだけでなく、双方向(インタラクティブ)に働きかけて情報を探索していくという行動や態度であり、もう一つはそのために必要になるメディアや情報機器とのつきあい方(ヒューマンインタフェース)の革新です。


   先行調査として実施した今回のフィールド調査では、限定された条件ではありますが、この2つの変化とも関連して興味深い結果が得られたと思います。速報として得られた2つの分析結果については、夏季学期から冬季学期までの通常の学習による効果との関係をより精査しなければなりませんが、とりわけ「今回の調査ではソフトの使用頻度が高いほど成績が向上したといえる」という点については、携帯型ゲーム機であるニンテンドーDS®のハード、ソフトの特性(可搬性や操作性、ゲーム的デザインの学習単元など)が生徒の学習に対してなんらかのプラス効果をもたらした可能性を示唆するものであり、今後の研究において重要な出発点となる結果だと考えています。


   立命館大学 映像学部では、インタラクティブメディアとテクノロジーを総合するソフトウェアとしてのゲームを重要な研究教育の対象としていますが、その中でもサイトウ教授が取り組んでいるゲームニクスは、ゲーム分野によって開発、蓄積された優れたヒューマンインタフェースを体系化して他分野に応用することで、情報に対して双方向的に働きかける仕組みや効率を改善しようとする画期的な技術です。


   今後の共同研究においては、このゲームニクスを中核として、立命館大学 映像学部におけるインタラクティブ映像研究の成果を応用していくことで、いままでにない新しい教育・学習の環境デザインとコンテンツの開発を目指していきたいと思います。



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