高齢者向けホームの運営などを行うベネッセスタイルケアは、2019年9月に介護スタッフ向け総合情報サイト『介護アンテナ』を開設。20年以上の介護事業で培ったノウハウや知見を無料で公開しています。その目的は、自社だけではなく全国の介護スタッフが現場で困ったときに、知識や情報を見つけるより所になること。高齢化が進む日本で、一人ひとりに寄りそう介護を目指し立ち上げた経緯と今の手応えを、サイト担当者に聞きました。

「どうすれば?」を抱える介護スタッフは全国にいる。課題を解決するために自分たちのできることを考えた

高齢化が進む日本では、介護が必要な人・そこに関わる人が増えていきます。とくに高齢者施設で働くスタッフの人材不足は、社会課題とも言われています。ベネッセスタイルケアの福島隆顕(ふくしま たかあき)によると、

福島「日本の多くの介護スタッフは、日々忙しく働いています。困っていることやもっとこうしたいという思いがあっても、ノウハウや情報を集める時間がとれないことも多く、悩んで辞めてしまうという話も聞きます。また、人材育成や知識の伝承にまで十分に手が回らない事業者も少なくないのが現実のようです。同じ仕事に取り組むものとして、この問題を解決するためにできることはないかと考え生まれたのが、介護スタッフ向け総合情報サイト『介護アンテナ』です。」

「介護アンテナ」開発担当のWeb戦略部部長・福島隆顕

福島「たとえば介護ホームのレクリエーションで使う素材準備はスタッフに一任されることが多く、ネタを探すのが大変です。『介護アンテナ』には専門家の監修した素材などが2000以上あるので、目的や難易度、季節に合わせて検索し、ダウンロードして使うことができます。そういう具体的な手助けで負担を減らすことも、大事な役目ではないかと思っています。」※無料の会員登録が必要

脳トレや、認知症へのアプローチの一種である「回想法」に基づく素材も多い(右図)。昭和の頃を思わせる絵で当時を思い出したり、そのことについて語ることで認知機能の維持・向上に役立つといわれている。

文字だけでは伝わらない現場のノウハウをイラストにしたり、わかりやすく言い換えたりと、工夫を重ねた

開発時にとくに難しかったのは、自社の介護技術のガイドラインを、Web上でだれにでもわかる内容に編集すること。実際の現場では人から人にレクチャーしながら使うものなので、そのまま掲載するだけでは理解しづらいのです。

福島「ベネッセスタイルケアが目指すのは、ご本人が『介護されている』のではなく『まるで自分で動いているかのように感じられる』お手伝いをすることです。技術の説明とともにそんな気持ちも伝わるように努めました。一目でわかるイラストにしたり、社内用語を一般にもわかる言葉に言い換えたりなど、試行錯誤の連続でしたが、自社の介護スタッフも協力を惜しまずアドバイスをくれて、社内全体の力で作り上げたコンテンツです。」

ベネッセスタイルケア「介護技術ガイドライン」からコンテンツ化した一例。注意点がすぐわかるようにイラストとフキダシを活用している。

47都道府県から会員の登録が! 広く活用してもらえることが何よりの喜び

オープンから3か月たった今、自社の介護ホームのない地域も含め、会員は全国に広がっています。

福島「より多くの介護スタッフに役立ててもらうことが目標なので、47都道府県から登録をいただいているのは何よりうれしいですね。メンバー自身が取材した、お出かけスポットのバリアフリー情報も『介護アンテナ』の注力コンテンツのひとつですが、全国の会員からそれぞれの地域にある公共施設や観光地のバリアフリー情報などを寄せてもらえたら、さらに充実した内容を提供できるのではと構想を膨らませています。」

サイト制作のメンバーたちは日々情報収集に飛び回る。休みの日に出かけた先でも多機能トイレや優先駐車場の設備が気になり、つい取材を始めてしまった…ということも。

福島「アクセス数を見ると、大雨で避難警報が出たときにベッドから車いすへの移乗介助方法の閲覧が増えるなど、どういうときに何の情報が必要とされるかもわかってきました。ご家庭で介護している人や介護の仕事に関心を持つ人にも見ていただけるような、介護に困ったときのより所になれたらと思います。」

これからの社会に自分たちができることは何かを考えて生まれたこの取り組みは、さらに進化していきます。


情報・取材協力

・『介護アンテナ』
https://www.kaigo-antenna.jp/

・株式会社ベネッセスタイルケア
https://www.benesse-style-care.co.jp/