小学生にとってのスマートフォンは、保護者との連絡・見守りの手段として便利な反面、トラブルに巻き込まれる危険性もあります。ベネッセこども基金と京都府警察は、子どもが活用する際に自分で考え、身を守る行動ができるようにと、「初めてのスマホ安心ガイドブック」を共同開発。学校での安全教室などに無償提供しています。情報化時代に生きていく子どもたちのために、知見を出し合い取り組む活動をご紹介します。

子どもをスマホから遠ざけるのではなく、自分で使いこなす力を身につけてほしい

インターネットの利用が急速に普及するなか、「使う時にやってはいけないことを、子どもにどうやって伝えればよいかわからない」「自分もよくわかっていない」という保護者も少なくないのではないでしょうか。とくにスマートフォンは一人で使う場面が多く、大人の目の届かないやりとりの中で問題が生じる可能性もあります。

2016年当時、公益財団法人ベネッセこども基金は、子どもの安全安心な環境づくり活動の一環でこの課題に強い問題意識を持っていました。そこに声をかけたのが、京都府警察本部サイバー犯罪対策課でした。

「京都府警察では、青少年を取り巻くネット問題に詳しい学識者・IT企業社員などが登録する<ネット安心アドバイザー>を組織しています。中高生への講義を行う中で、ネット利用の低年齢化という現状に直面し、子どもの教育教材に関わるベネッセさんとなら小学生用の効果的な啓発教材が作れるのでは、と思いました。」(京都府警察同課担当者)


この出合いが、小学生とその保護者を対象にした、初めてスマートフォンを使うときに知ってほしい知識のコンテンツ化の始まりでした。

理屈ではなく、具体的に、楽しく。小学生の気持ちに沿った工夫を

京都(京都府警察)と東京(ベネッセこども基金)という遠距離ながら、合同ワークショップを重ねて完成した内容には、『子どもを危険から遠ざけるのではなく、自分で身を守れるようにしたい』という共通の願いが込められています。

たとえば当初の構成案は、[基礎+発展+予防]という知識を系統立てたものでした。しかし内容を落とし込むにつれ、「実際に役立つイメージが持てない…」という壁に突き当たります。

「教えようとすると心を閉ざしてしまう」「もっと具体的に行動できる力をつけさせるべきでは?」などの声があがるなか、子どもたちは日常のどんなシーンでスマートフォンを利用し、どういう危険が想定されるのかを、丁寧に洗い直すワークを続けていきました。

合同のグループワークで、子どもに知ってほしいことを様々な角度から出し合った。

その結果、「マナーを知る」ことから始まり、「楽しくコミュニケーション」「動画・ゲーム」など、具体的な利用シーンごとの対処を伝える、生活に寄り添った構成へと修正。さらに、身近な問題だと感じられるようマンガ仕立てにするなど、工夫が凝らされていきました。

ベネッセこども基金の担当者は、こう振り返ります。
「数回に渡るグループワークでは、それぞれの専門知見だけではなく、自分の子育てや現場経験を思い浮かべつつ意見を交わしました。『〇〇してはいけない』といった上から目線のトーンは避け、『こういう時はこうしよう』といった具体的なアドバイスに徹するなど、子どもへの安全安心に対する熱い思いから作られた冊子です。」

トラブルが起きがちな場面を、文字量を抑えたQ&A形式にし、自分に置き換えやすいマンガで構成した誌面

子どもを守り、未来の情報社会に活きる教育を!

この冊子のもう一つの特徴は、各所に保護者向けのコラムがついていること。インターネット上の情報マナーや使いこなし方が日常に根付くために、周りの大人はどうサポートすればよいかを伝えるものです。
「自分なりの使い方を考え、ルールを決めるよう促すことが大事です。使用ルールを書き込むページもありますので、お子さんと一緒にぜひ活用していただきたいですね。」(ベネッセこども基金担当者)

完成した冊子を手にする、京都府警察サイバー犯罪対策課と<ネット安心アドバイザー>の皆さん、ベネッセこども基金のメンバー

半年余りを経て完成した冊子は、2017年度より、日本全国の学校など非営利活動での利用を対象に、すでに約111千部発行しています(201812月末時点)。講師用に開発された「スマートフォン・インターネット安全教室」のパッケージとともに届けられ、様々な反響が寄せられています。

「ネットの危険性を知る機会は増えたものの、子どもにうまく説明できずにいました。マンガを交え、楽しく読んでくれそうです。」(小学生保護者)
「インターネット単元の補助教材として使いました。クイズ形式で児童にもわかりやすかったです。最後の<わが家のスマホルール!>はとても良く、保護者にも紹介しました。」(小学校教師)
「一番こわいと思ったのは、ネットではいくらでもうそをつくことができるということです。(ネット上で)友だちになったとしても、会わないようにします。また、相手の気持ちを考えて、メールしたいです。」(小学生) 

スマートフォンなどの情報機器は、子どもたちが助けを求める場面で大事な道具になり得ます。また将来仕事に就く際には、必要不可欠なコミュニケーション手段です。安全かつ有効に使いこなす教育を、より多くの子どもたちに届けるために、この活動はこれからも続いていきます。

取材協力

■京都府警察本部生活安全部サイバー犯罪対策課
ネットセキュリティ・サポートセンター
菱田 篤(ひしだ あつし)氏

■公益財団法人ベネッセこども基金
龍 千恵(りゅう ちえ)、小松ゆかり(こまつ ゆかり)
https://benesse-kodomokikin.or.jp/


※株式会社ベネッセホールディングスは、CSR活動の一環として未来を担う子どもたちの学び支援に取り組み、公益財団法人ベネッセこども基金の活動を支援しています。

⇒「初めてのスマホ安心ガイドブック」詳細はこちらへ
https://benesse-kodomokikin.or.jp/activity/anzen/useful/internet/contents_1.html