いたるところで見かけるようになったキーワード「ウェルビーイング」。 SDGs の宣言文に含まれるビジョンでは、SDGsがめざす世界として、「すべての人が身体的・精神的・社会的にウェルビーイングな社会」と記されています。言葉としては浸透が進むものの、体だけではなく心も満たされる状態とされるウェルビーイングとは果たして何なのか?ウェルビーイングであるために何が必要なのか?1990年から企業理念「Benesse(よく生きる)」を掲げ、さまざまな事業を通じて、自分らしく「よく生きる」ことを支援しているベネッセは、ウェルビーイングを自分ごととして考えるワークショップを実施。大きく変化する時代の中で未来をつくる次世代の若者がワークショップに参加し、活発な議論を交わしました。このワークショップを仕掛けた担当者に、実施を経て気づいたことや企画の背景にある思いを聞きました。

※Benesseは、ラテン語の「bene(よく)」と「esse(生きる)」を一語にした造語で、英語ではウェルビーイング(well-being)

ウェルビーイングってなんだろう?大きな問いに対話を通して向き合うワークショップ

ウェルビーイングワークショップは、「サステナブル・ブランド」(サステナビリティのリーダーが集うグローバルコミュニティ)との共催で、ベネッセホールディングスが企画設計を実施。社会課題を考えアイデアを発信していく、Z世代のチェンジメーカーが集うコミュニティー「nest(SB Japan Youth Community)」のメンバーたちが参加して行われました。


2022年9月、オンラインとリアルの会場でのハイブリッドで開催されたワークショップには、海外在住者も含め、高校生や現役の大学生、働き始めた社会人と多様な若者が集結しました。会の冒頭、このワークショップのテーマである「ウェルビーイング」を知っていますか?と質問を投げかけると、ほとんどの参加者が手を挙げます。改めて、「ウェルビーイング」というキーワードが言葉としては浸透していることが印象的だった後で、本題のテーマへと入ります。


「あなたにとってのウェルビーイングはなんですか?」、数名ごとのグループになって、ウェルビーイングを自分に引きつけながら考え、言葉へと落として仲間に共有してみることからスタート。途中で何度もグループをシャッフルしながら議論を重ねることで、より多様な視点・価値観に触れ、少しずつですが漠然とした広い概念であるウェルビーイングが紐解かれ、具体的なキーワードへと言語化されていきました。

当日のテーマは2つ。自分にとってのウェルビーイングを考えキーワード化した後は、視点を広げ、ウェルビーイングを社会全体に広げるためにどんなことができるか?を議論していきました。

社会をつくる一人ひとりが尊重され、自分らしく生きること。自分らしくあり続けるための、第3の居場所を



「自分にとってのウェルビーイングとは?」テーマ1では、各自が自身のこれまでを振り返りながら、どんな状態のときにウェルビーイングを感じるかを活発に述べる中で、次のような意見が出されました。

「ウェルビーイングは精神的なもの。日常的にSNSに触れ、意識せずとも人と比較しては落ち込むこともある中で、いかに自分のペースを保ち『心のゆとり』を確保できるか」

「誰かのため働かなちゃ、頑張らなくちゃ…日本は世界と比べると“こうでなければならない”が強すぎるのかもしれない。もっと固定概念にとらわれず、自分の気持ちに時には『わがまま』になること。ウェルビーイングであるためにはいかに自分らしくあるか、が大切」


さまざまな言葉が出る中でも、共通項として目立ったのは皆がモノや身体ではない精神的な豊かさについて言及していたことでした。その上で、多くの共感を集めたのが自分らしくあるための場所、という意見でした。
「自分らしくあるための居場所がウェルビーイングへとつながるのかもしれない。家庭や学校・会社という枠組みにとらわれると、そこでつまずいた時に人はしんどくなる。そう考えると、自分を受け入れてくれる誰かや、人とかかわりながら、モヤモヤを共有し解消できるような第3の場所が必要」


続いて、「社会全体をウェルビーイングにするためにできることは?」を考えたテーマ2では、視点をより広げながら意見をまとめていき、

「個人の集まりが社会。社会をつくる最小単位である、多様な一人ひとりがもっと尊重されるような世の中になることが必要だと思う」

「個人への尊重を高めながら、自分らしさを表現できて、人や社会とつながり、ひろげるための第3の場所がそれぞれにあること。そんな場所を子どもたちやたくさんの人に提供していきたい」

などの意見が発表されました。


ワークショップが終了した後、参加したメンバーからは
「ウェルビーイングという一つのテーマを深める経験が新鮮だったのと共に、言葉の定義の難しさ、考え方の多様性を改めて感じた」「会話を重ねるごとにウェルビーイングを見つけられていく感じが心地よかった」などの感想があがり、広い概念を言葉に落とし、融合することの難しさに対面した一方で、思いを深める時間が各自にとって刺激的だったことがうかがわれました。

問うことで気づき、意識することが、ウェルビーイングへと近づく一歩かもしれない

後日、このワークショップを企画設計した担当者である泉(ベネッセホールディングス・サステナビリティ推進部)に話を聞きました。

当日の企画説明シーン(写真右が泉、写真左:nestプロデューサーの入江遥斗さん)

「今回のワークショップの設計にあたって留意したのは、情報のインプットからすぐにアウトプットするのではなく、まずはウェルビーイングが何かを自分ごととして言葉へと落としてみるアウトプットから始め、いろいろな意見に触れるインプットへと戻るステップを含めたこと。それによって多様な価値観に刺激を受けて思考をひろげ、考えを深める過程が重要なテーマだと考えました」


「実際にワークショップを実施して気づいたことは、みなさんウェルビーイングという言葉は知っていても、それを言語化することには苦労していたということです。一方で、自身の経験やそこから感じたことはとても素直にのびやかに語り合っていたことが印象的でした。ワークショップでいろいろな意見が出たように、一人ひとり違い、ただ一つの正解はないのがウェルビーイングなのかもしれません。でも、学校とはまた違うこのようなコミュニティーの場で議論することで、さまざまなウェルビーイングに気づき、意識することがウェルビーイングに生きる上でのヒントの一つとなるかもしれない、そう感じました。今回のワークショップをスタートとして、今後はさらに対象をひろげ、いろいろな世代で話したときにどんな気づきが生まれるのか。問うことで見える発見をさまざまな人と共有しながら、ウェルビーイングを紐解き、考えていきたいと思います」


一人ひとりが自分らしく「よく生きる」ことができるウェルビーイングな社会を目指して。「よく生きる」をこれまでも追求してきたベネッセは、これからもウェルビーイングを問い続けながら、その実現への一助となるような活動を続けていきます。

情報

・nest [SB Japan Youth Community] Z世代のチェンジメーカーが集うプラットフォーム
https://www.sustainablebrands.jp/community/nest/index.html