未来の担い手である子どもたちに、身近な課題に目を向け、自分なりに取り組む体験をしてほしい。そんな思いから始まったのが<夏のチャレンジ全国小学生「未来」をつくるコンクール>です。研究作品を完成させるプロセスには、保護者などまわりの上手な“ひと押し”が必要なこともあります。15回めとなる2018年度の選考を終えたコンクール事務局に、子どもたちの主体的な取り組みと保護者の関わり方について聞きました。

未来をつくる力は、学力だけでは足りない。「社会への関心と自ら取り組む力」を身につけてほしい

「進研ゼミ小学講座」(株式会社ベネッセコーポレーション)などで募集する<夏のチャレンジ全国小学生「未来」をつくるコンクール>には、全国から毎年3万超の作品が寄せられます。なかでも環境や身のまわりの疑問を解決する<エコ活動報告><不思議調査>がテーマの環境・自由研究部門では、現場を見学したり、そこで働く人に話を聞いたりと、子どもたちの積極的な取り組みが見られます。

コンクール事務局の運営責任者・黒瀬裕之は、開催の目的をこう語ります。
「学校での勉強はもちろん大事です。それを、身近な社会に目を向け疑問を解決していくために使い、興味を持ったことにはどんどん踏み込んで、自分たちの未来をつくる力にしてほしいのです。子どもたちが取り組む目的は、学年が上がるほど『身近な人のため』から『社会の誰かが喜ぶため』にと変わる傾向にあり、社会意識の成長を実感します。中には、仮説を立てて調べて考えて、取材をして・・・と、審査員の先生方が『一人前の研究者だね』と感心する作品もありますよ。」

ここ数年は、震災以降のエネルギー問題、気候変動、食品ロス、プラスチックリサイクル等をテーマにするものが目につくとか。また、一般的に環境によいとされる取り組み、例えば「打ち水」について、「猛暑対策として、そもそも有効か?」など、既成概念にとらわれずに自分で考え検証する切り口も見られると言います。

3年前から環境部門を担当し、受賞者への取材にも携わる永田千晶(事務局)によると、
「夏休みだからこそできる学び体験なので、協力的な保護者の方が多いですね。普段の生活で困っている事や、なぜ? という素朴な疑問を家族ぐるみで話し合い、テーマの絞り込みに協力したご家庭もありました。給食関係で働く親御さんの話から食品ロスの問題に気づき、身近な生活の中でどう解決するかに取り組んだお子さんもいます。」

作品の傾向を振り返る永田千晶(ながた ちあき/左)と黒瀬裕之(くろせ ひろゆき/右)。普段は「進研ゼミ小学講座」の教材編集に携わる。コンクール事務局は同講座などのベネッセ社員によるプロジェクトで運営されている。

行き詰まったら、「どうしてそう考えたの?」のひと言を。子どもだけでは無理なら保護者も一緒に

自分で取り組むことが大事とはいえ、子どもだけでは超えられないハードルもあります。そんなときには、保護者の協力の“ひと押し”がカギを握ることも。
たとえば研究やレポート作りを進めるうちに、次はどうすればよいかと行き詰まる場面があります。そんなとき受賞者の保護者が試みていたのが、「どうしてそう考えたの?」と問いかけること。答えを言ってしまうのではなく、ひと言客観的なアドバイスを与えることで、子どものモヤモヤが解け、考えを整理できたり、本来の目的に立ち戻ったりするきっかけになるのです。

これまでの受賞者の保護者に取材したポイントをまとめたもの

また、問題の本質や解決策を見つけるために「あの場所へ行ってみたい」、「こんな実験をしたい」と思っても、ひとりでは難しいこともあります。
「ゴミ処理問題を調べていたお子さんは、おうちの方に関連施設やワークショップに連れて行ってもらったそうです。そのおかげで複数の視点から多面的に考えることができ、『リサイクル全体の流れがわかった! だから私はこう行動します』という身近な提言にまで仕上げていました。」(永田)

一緒に行動できる時間には限りがありますが、ここぞというタイミングでのサポートは、子どもの探究心をより深める手助けになるようです。

社会で求められる力が変わっていく時代。子どもの「なぜ?」に、未来へのタネがある

日本も世界も先行きが見えづらいなか、これからの社会で求められる力は今とは変わっていきます。
「同じ環境問題でも、どういった視点で取り組むかのアプローチ方法が広がるとよいなと思います。そのためには調べ学習で終わらせずに、自分の生活に引きつけて何を解決したいかまでを考える、そのきっかけが大事ですね。保護者の方には普段から、日常の出来事に対して『どう思う?』とお子さんに投げかけたり、一緒に話すなどして、興味のワクが広がるやりとりをたくさんしていただければと思います。」(永田)
「お子さんの主体的な気持ちを第一にし、何かに少しでも興味をもったら保護者の方も盛り上げてあげたり一緒に出かけたりと、取り組みを応援していただけるとありがたいです。」(黒瀬)

身近な環境に関心を持ち、その課題の解決に意欲をもつ子どもたちは、未来をひらくタネをたくさん持っています。そうした「問題解決力」で、将来にわたって続く豊かな社会を実現してほしい。そのためには保護者の効果的な“ひと押し”が必要なときもあります。ベネッセは、そんな学びが生まれる場のあり方を、これからも考えていきます。

情報

夏のチャレンジ 全国小学生「未来」をつくるコンクール
※2019年度(第16回)も募集予定

主催:ベネッセ教育総合研究所
共催:進研ゼミ小学講座 ベネッセグリムスクール アップ教育企画 ベネッセの学童クラブ
後援:文部科学省 環境省 東京都教育委員会 全国小学校理科研究協議会 全国小学校生活科・総合的な学習教育研究協議会 全国教育研究所連盟
一般社団法人環境教育振興協会 全国都道府県教育委員会連合会 公益社団法人日本PTA全国協議会 福井県立恐竜博物館

URL:https://sgaku.benesse.ne.jp/sho/all/others/concour/