高校生にとって、多様な入試が選べる昨今。いわゆる“年内入試”と言われ、従来の決定時期より早い12月までに入学が決まる学生の割合は増え続けています。
大学や専門学校向けに広報・教育・コンサルティング支援を行っているベネッセグループ(株)進研アドでは、早期に入学が決まった高校生に向けて、成長を実感しながら学ぶ意欲を高め、学習習慣をつけられるプログラムを独自開発。大学・短大に進む生徒向け教材とは別に、専門学校に進学する学生を対象とする入学前教育教材を提供しています。
2024年5月には専門学校との連携のもとに新たなコースを開発・リリース。この教材にかかわる担当者たちに、教材やその提供に込めた思い、今後の展望について聞きました。

mits / PIXTA(ピクスタ)

入学までの空白期間で、いかにモチベーションを上げられるかが今後のキャリアを左右する

今や高校生のうち2割以上が進路として選択する専門学校(※1)。しかし、将来への夢を描いて入学するものの、その後「授業についていけない」と感じる人も約半数もの割合で存在しています。

※1)令和2年度の専修学校(専門課程)への進学率は、女子27.3%、男子20.5%(男女共同参画白書 令和3年版)

専門学校生でのアンケートでも、授業についていけないと感じている学生の割合は55.0%にのぼっている。「2023年度 基礎力リサーチ 1年生2回目 アンケートより(n=5,509人)」より

専門学校生が途中で学校をやめてしまう中退率は約14%(※進研アド調べ)にものぼり、意欲不足や学力不足がその大きな要因となっています。

「未来に就きたい職業をイメージして入学を決めた専門学校を中退してしまうことは、学生にとっては入り口段階でのキャリア中断ともなり、その後キャリアデザインしていく事が難しくなる若者が増える事はことは大きな社会課題です」と、進研アド 専門学校営業部長を務める川辺は懸念します。

新入生の成績に差が出始めるのは夏休み前の6月7月が最も多く、9月に中退者が顕在化することも多い状況です。この傾向の中で、受け入れ側の専門学校では、志願して入学してくれる学生たちに必要な学びを届けながら、ミスマッチを早期に発見し、必要なサポートをするためにも「入学前教育」を導入する学校が増えています。

【グラフ1】
新入生の成績に差が出始めるのは1年生の夏休み前後
(進研アド調べ セミナー参加申し込みアンケート結果より)
【グラフ2】
中退を考えるきっかけは、選択した職業分野と自分とのミスマッチを感じての意欲不足が4割(青項目の合計)、授業が理解できない等の学力不足が4割(赤項目の合計)となっている。
(2023年度基礎力リサーチ 専門学校1回生2回目アンケートより)

どうすれば学生が「学びのスタートラインに立てるか」を考え抜く

進研アドは、入学前教育プログラムを日本で初めて2009年に開発。専門学校に進む学生を対象とするオリジナル教材の「入学前教育プログラム」では、具体的な専門分野へ関心をもつ学生たちに学ぶ意欲を上げ、継続的な習慣化へとつなげる教材を提供しています。これまで看護・医療やIT・情報ビジネスなど計12のコースを各専門学校と連携して提供、新たに2025年度入学生に向け「建築・土木・造園・インテリア」コースの提供を開始します。

このプログラム立ち上げから長年教材開発に携わる寺田は、その工夫点を次のように語ります。

「まずは入学を控えた学生たちのやる気をいかに上げるか。そして、将来の夢へとつながる大きな通過点である国家資格や資格試験などといった “ゴール”を見据えながら、そのために必要な学びを促し、定着をさせるか。それに徹底的にこだわった教材を作成しています。」

また、高校までの学習範囲で解ける国家試験問題なども随所に盛り込むことで入学前からのモチベーション向上と、机に向かえる学習習慣をつけられるオンリーワン教材としている、と言います。「教材によっては国家資格で出題される3000問以上の過去問から、高校までの履修内容で解ける問題をピックアップして改題・出題し、“やればできる”という体感を早い段階からもてるように工夫しています」

そうして作成されたプログラムを学生たちに届けた後は、学習状況や意識変化をアンケートではかっています。課題の提出状況なども見える化することで、専門学校側は早期にフォローが必要な学生を把握し、入学後すぐに声掛けができるというメリットもあります。


2025年度入学生に向け新設された「建築・土木・造園・インテリア」コース
高校までの学習範囲で解ける国家試験問題例。入学後の学びと今必要な学びをつなげ、知識の必要性が改めて腹落ちできる内容になっている(看護科コースの誌面より)

夢を志す「若者に多様な未来を」入学前教育で未来への手助けをしていきたい

川辺は「受講した学生たちからは『入学するまでに必要な知識を学ぶことができ、自信がついた』『取り組むことで学習習慣が身についた』などの意識変化の声が届いているのがなによりうれしいです。入学前からワクワクしながら学び、専門学校入学後にいいスタートをはかり、将来の目標に向けて意欲高く学び続ける学生を増やしたい」と言います。

また、自身がかつて大学で土木工学を専攻し、新たに提供する「建築・土木・造園・インテリア」コースの設立に携わったのが澤田です。
「建築・土木系の専門学校に進学する学生の約6割は文系出身で、将来の夢はあるものの進路や将来に不安を抱いている学生も少なくありません。そうした課題をもつ学生たちに『今、何を学ぶことが必要で、この学びがどう将来の職業につながっていくか』までをつないで提示しているのがこの教材のポイント。新教材では、修成建設専門学校、中央工学校 OSAKA、大阪工業技術専門学校からの協力・アドバイスも仰ぎながら、将来につながる有益な学びの提供にかかわれることに、やりがいを感じています。」

入学前教育によって高校生と大学や専門学校での学びをつなぎたい、という想いを持って入社し、現在は専門学校への提案などに関わる和多田は、「専門学校に進学することは、学生たちにとっては人生における新しいチャンスです。こうしたプログラムを通じて、『やったらできる』と実感しながら未来を進むその手助けをしていきたい」と話します。

最後に寺田は、「ベネッセグループには、通信教育教材『進研ゼミ』の制作で長年培ってきた“自宅でいかに勉強へのやる気をあげるか?”の知見があります。また、『赤ペン先生』※という独自に提供してきた添削指導のノウハウもあります。そうして積み上げてきた知見の集大成とも言えるのがこのプログラムです。専門学校に進学する学生たちは看護師・建築士などいずれは大学生とも競いながら夢を目指すケースも多くあります。大きな志を元に未来へ思いをはせ、意欲を上げられるような教材をこれからも届けていきたいですね」と今後の思いを語りました。

※「赤ペン先生」の名称は、株式会社ベネッセコーポレーションの登録商標です。

単なる高校までの学習範囲の学び直しではなく、目指す未来に沿うための学びを提供するために。進研アドの専門学校生の成長に向けた挑戦は続きます。


情報協力

川辺 尚也(かわべ なおや)

ベネッセグループ (株)進研アド 専門学校営業部 部長 全国の専門学校に対し、教育と広報の両軸支援を行い、学校と協働で、学生の成長、中退防止、広報事例を創出。


寺田 外喜夫(てらだ ときお)

(株)ベネッセコーポレーション 学校事業制作部 高校生向けの教科教材の制作からキャリアをスタート。大学生、短大生、専門学校生の入学前教材の立ち上げから企画・制作を担当する。


澤田 洋一(さわだ ひろかず)

ベネッセグループ (株)進研アド 専門学校営業部 プロモーション担当リーダー キャリアコンサルタント 大阪の大規模専門学校を担当。高校生に多様な未来を提示したいから、専門学校にもっと元気になってもらいたいと支援奮闘中。


和多田 博夏(わただ ひろな)

ベネッセグループ (株)進研アド 専門学校営業部 入学前教育プログラム担当 高校生と大学、専門学校での学びをつなぎたい、という想いを持って入社。学生が学びを通じて社会で活躍できるようにするための支援を目指す。