2025.09.30
子どもたちの多様性に応える新しい学びを家庭から。活用がひろがる「まるぐランド for HOME」
これまで画一的な指導法が主流となっていた、日本の教育現場における学び。デジタル技術も進化した今、多様な発達特性をもつ子どもたち一人ひとりにフィットする教育や支援が求められるようになりました。しかし、学校の先生たちは多忙を極め、仕事や家事に日々追われる保護者たちもまた、発達特性に関する専門知識を十分に持ちえず、子どもにどう向き合いながら必要な学びを与え、サポートするか。多くの人が迷いを抱えています。
ベネッセコーポレーションは、発達特性に合わせた学習支援サービスとして「まるぐランド for HOME」を小学生のいる家庭向けに2024年から展開。2025年4月からはこれまでの読み書きに加えて算数のレッスン提供も開始し、一人ひとりの特性に寄り添いながら可能性をひろげるための学び支援を拡大しています。
サービスを推進する担当者に「まるぐランド」を活用した家庭から届いている声や、展開の背景にある思いを聞きました。

多様な発達特性をもつ子どもたちを取り巻く、今の社会
これから先の長い人生で必要となる学びの土台をつくる小学生の時期。今、子どもたちが日々通う小学校の教室の中にある多様性を示すデータが話題になっています。
そのうちの1つが下のデータです。35人の子どもたちが机を並べる1つの教室の中で、「家庭にある本の冊数が少なく、学力の低い傾向が見られる子」は3人に1人(35.6%、12.5人)とごく普通に存在していることがわかります。また、「学習面または行動面で困難を示す子」(10.4%、3.6人)、「不登校傾向にある子」(11.8%、4.1人)もそれぞれ10人に1人と決して少なくありません。
その一方で「特異な才能のある子」(2.3%、0.8人)もいるなど、学校現場は実に多様な特性をもつ子どもたちを包括しています。その中で、見えざる課題を抱えた子どもたちが隣り合い、同じ授業を受けながら学校生活を送っているのです。
多種多様な特性ある子どもたちに対し、一人ひとりに合う学びや支援を求める声も強くなっているものの、子どもたちに相対する学校の先生たちの現状はどうでしょう。
国の指針で定められている「月45時間」の上限を超える時間外勤務をする小学校の先生は64.5%(公立学校教員を対象に実施された文部科学省・令和4年度「勤務実態調査」)と過半数を超え、教員の働き方改革が叫ばれて久しい今も、先生たちの多忙さの改善は道半ばです。
そして、共働き世帯が年々増加し、7割(厚生労働省・令和5年度「厚生労働白書」より、雇用者の共働き世帯は1,262万世帯で専業主婦世帯と合わせた全体のうち70%)となった今。家庭の親もまた、仕事や生活に追われながら多くの家庭で子どもたちに合う学びの形を模索し続けているのが現状です。一方で子どもたちはどうでしょう。「勉強しようという気持ちがわかない」「上手な勉強のしかたがわからない」という子は、年々増え続けています。自分にあった学びに出会うことなく学年が上がるにつれて不得意を抱えたり、実力を発揮する機会を逸し、自己肯定感の損失へとつながることも少なくなさそうです。

(東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査2024」より)
学年によらず、一人ひとり違う発達特性に合わせたレッスンを自動で提供
そんな多様性ある子どもたちに寄り添う学び支援として、ベネッセコーポレーションが手がけるサービスが「まるぐランド」です。
社内で行われた新規事業の提案制度がきっかけとなり、これまでの延長線上ではない新しい学びの形として誕生したこのサービスは、まず自治体や学校を対象とするICT学習サービス「まるぐランド for School」」としてスタート。そこで得た成果や知見を元に、2024年8月からは一般家庭を対象とする「まるぐランド for HOME」として新たな提供を開始しました。

学年によらず、その子のつまずきの箇所を特定しながら最適な内容で始めることができるのも特長のひとつ。iPadなど家庭にあるデバイス(「進研ゼミ」会員はチャレンジパッドでも利用可)を使って学び進めるうちに、読み書きや算数の基礎スキルを身につけることができる。
家庭向けサービス開始までの軌跡を、現在この事業を推進する有田 佳那子(ベネッセコーポレーション 横断サービス部)はこう振り返ります。
「元々、『まるぐランド』が誕生した頃から、一人ひとり違う特性に応じたより良い学びにアクセスできるようにと、家庭向けのサービス展開を視野に入れていました。そのファーストステップとして、たくさんの教育現場でまずは活用をひろげ、教育のプロである先生方に認めていただきたい。ということで、自治体や学校を通じてサービスを始め、実証試験でその成果が出たり、学習教材として賞(2022年度には第19回日本e-Learning大賞で最優秀賞を受賞)をいただいたりした後、2023年ぐらいから「学校だけではなく、家庭でもこのサービスを使いたい」というお問い合わせをいただけるようになりました」
「そういった声を受けて、念願だった家庭向けのサービスとして「まるぐランド for HOME」をリリースできたのが昨年の夏です。さらに、元々提供していた読み書きの支援だけでなく、すべての学びの基本とも言われる“読み書きそろばん”の両方を発達特性に合わせて家庭でトレーニングしながら、学ぶ楽しさを子どもたちに体感してほしいと今年の4月から算数の学習機能も追加しました。試行錯誤と一歩ずつの前進で、当初から目指していた姿にようやく近づいてきたように感じています」
特性に合った学びの力で、成長を実感できる喜びを一人でも多くの子どもたちに
「まるぐランド for HOME」の開始から約1年。有田と、マーケティング担当としてサービスに関わる橋本 正明(ベネッセコーポレーション プロジェクト推進部)の二人に、これまでの提供を通じて得た手応えや印象的な声を聞いてみました。
「発達の特性に悩みを抱えるご家庭の声を受け止め、それに応えていきたいと個別指導で手厚くサポートするプランから提供を開始しました。個別指導では、ご家庭ごとの心配ごとを都度受け止め、子どもたちの様子を見守りながら運営チーム一丸となって講師や心理資格を持つ専門家の先生がたとタッグを組み、授業にあたります。そうして改善や研修を積み重ね、一定の満足の評価をいただけるようになりました。
印象的だったこととして、いじめが原因で不登校になったお子さまがいたのですが、以前は学校の授業を思い出すと泣いてしまったり、勉強自体にもどこか後ろ向きだっだりする様子でした。でも、「まるぐランド」で半年ほど授業を受けた後は、お盆休みで間が空くと「次のまるぐ、いつ?」と心待ちにしてくれるようになったんです。家庭でも、学校でもなく、「まるぐランド」で学ぶ時間が子どもたちにとって、大切な一つの居場所になってきている。そう思えた瞬間でした」(有田)
「お子さまの発達に不安があると、どんな教材が合うのか、どう接すればいいのか。日々悩む保護者の方がたくさんいらっしゃいます。そうしたご家庭に、より手軽に体験をしていただけるようにと、この夏からはタブレット学習のみのライトプランも始めました。「まるぐランド」は、最初にチェックテストでお子さまごとの特性・スキルを明らかにし、その中でこれまでは見過ごされてきたような小さいつまずきを学年によらず捉え、レッスンが自動提案されるので、「何をすればいいか悩まず、わかりやすい」という声をよくいただきます。その子の特性、気持ちに合わせた設定が豊富で驚かれることも多々あります。発達特性にとことん寄り添った新しい学びの形を、そうした悩みを抱える多くのご家庭に届けていきたいと思います」(橋本)


発達特性に応じた学びを家庭からひろげる「まるぐランド for HOME」。最後に今後の展望やサービス提供の裏にある思いを二人はこう語りました。
「発達特性に凸凹があるお子さまへの社会の理解は進みつつあるものの、それでも誤解されて時には怒られたり、わがままだと言われてしまったりする子も多くいます。これから先の人生へとつながる学びの土台を築く幼少期だからこそ、自分に合った学びに出会い、成長を実感できる喜びを体感してほしい。今後は、いろんな特性をもつ子どもたちが今よりもっと集中して楽しめるようサービスを改善しながら、一人ひとりの自己肯定感を高め、学びを通じて、自分らしい生き方の支援をしていきたいと思います」
「ベネッセの提供するサービスは、これまではどちらかといえば真面目で学習意欲がある人向けのものが多かったように思います。でも、生まれもった特性で学校での授業についていけない人や、あるいは「学びたくない」人だってたくさんいます。そうした子どもたちへのサービスをこれまで通信教育サービスを長く手がけてきたベネッセが出すことに意味があるし、そこへの期待もあると感じています。「まるぐランド」でようやくそうした期待に応えるサービスを提供することができました。これからもっと多くの方に、このサービスをひろげていきたいですね」
一人ひとり違う特性に寄り添いながら、自分らしい人生を生きる上で必要な学びの基礎力と成長する喜びを多くの子どもたちへ。「まるぐランド for HOME」の前進は続きます。
情報協力
- まるぐランド for HOME

- 有田 佳那子
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ベネッセコーポレーション 横断サービス部 「クラスベネッセ(現・進研ゼミ個別指導教室)」で教室長を担当。その後「まるぐランド for School」の開発に携わり、現在は「まるぐランド for HOME」の運営責任者。

- 橋本 正明
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ベネッセコーポレーション プロジェクト推進部 幼児・小中学生領域中心に、デジタル教材のサービス・事業開発に携わる。現在は様々なプロジェクトを支援しており、「まるぐランド for HOME」のマーケティングも担当。