年間出生数が80万人(※1)を切るという激震が走った2022年、日本で出産・育児に向かう家庭はどんなことを思いながら日々、子育てに向き合っているのでしょうか。
妊娠・出産育児ブランド「たまひよ」は、産前産後の父母の意識、父親の育休取得を取り巻く環境や育児へのかかわり方を調査した結果を「たまひよ妊娠・出産白書2023」(※2)として発表しました。そこから見えたのは、年々増加する「育児にもっとかかわりたい」と思う父親像、一方で「出産・育児のしづらさ」を実感しているという父と母の姿でした。この調査の担当者に、創刊時と現在の比較、調査結果の発信を通して伝えたい思いを聞きました。

創刊30周年を迎えた「たまひよ」。時代が変わりママだけの子育てからチームでの子育てへ

今からさかのぼること30年前の1993年、核家族化が進む中で「初めての出産育児のことを誰に聞けばいいのかわからない」「子育てと共に社会と切り離された孤独感がある」というママたちの内なる叫びから、“一番信頼できる読者参加型の情報誌をつくろう”という思いをもとに『たまごクラブ』『ひよこクラブ』創刊されました。

その後、時代とともに雑誌のデジタル化が進みましたが、それ以上に大きな変化があったといいます。それは「パパがママと区別なく育児にかかわる時代になった」ということです。その大きな変化を捉えた『たまひよ』は30年前、特集の主語は「ママ」が当たり前でしたが、2019年に、「ママ」だけではなく「パパママ」、さらにチームで子育てに取り組もうという思いを込めたキーワードとして「チーム育児」を初めて打ち出しました。

(左)1993年10月「お砂場が雑誌になった」というフレーズとともに読者参加型の雑誌として創刊された『たまごクラブ』『ひよこクラブ』。 (右)2022年4月、妊娠期・育児期を初期・中期・後期と6時期に分け、これまで以上に各時期にフィットした情報を届けるべくリニューアルした。

父親の育児参加意向は昨年から増加、育休利用も約4割に

父親の育児参加意向、育児休業制度利用者は昨年より増加し、休暇取得日数も長くなりました。これには、2022年4月の育児・介護休業法の改正、10月からの「産後パパ育休※」がスタートした影響がありそうです。


※「産後パパ育休(出生時育児休業)」とは、子の出生後8週間以内に合計4週間まで取得可能な新たな育休制度。より男性の育児参加需要が高い期間を対象としており、子が1歳(最長2歳)までの育児休業制度とは別制度となる。

「たまひよ妊娠出産白書2023」より

「日本は生み育てやすい社会だと思わない」は母親で昨年から10pt増加
父親と母親で意識の差が顕著

母親は「日本の社会は、子どもを産み育てやすい社会だと思いますか?」という設問に対し「あまり+全くそう思わない」が76.8%と、昨年調査から10ptも増加したのが特筆すべき点です。その理由は「経済的・金銭的な負担が大きい」が約9割を超えています。一方で「出産・育児がとてもしやすい」が父親で6pt増加するなど父親と母親とで意識差が大きいことが明らかになりました。

「たまひよ妊娠出産白書2023」より
父親については「あまり+全くそう思わない」が約5割と半数を占め、昨年と比べ大きな変化はないものの、「とてもそう思う」という回答が増えた。

出産・育児に30年間伴走してきた「たまひよ」として、子育てのリアルをパパ・ママと共に発信し続けたい

この調査を担当した松崎と、たまひよ統括編集長の米谷に調査実施のねらいを聞きました。


「出産・育児の“今”を読み取るために実施している『たまひよ妊娠・出産白書』は、コロナ禍の2021年からスタートし今年で3回目の調査。初年度は感染拡大の不安の中、立ち合い出産や両親学級ができていない状況を踏まえ、とくに妊産婦の意識を調査する緊急度の高いものでした。その後、さらなる共働きの増加やパパ育休制度の新設といった時代背景を受け、パパ・ママの意識が変わってきているという実感があります」(松崎)


「『産み育てにくい』というスコアが大きく取り上げられがちですが、この結果について、そのネガティブな側面ばかりに目を向けないでほしいと思います。育児を通して、実に9割の親が「楽しい・幸せに感じる」とポジティブにも捉えています。少子化が進んでいるが、今年はこども家庭庁の発足や育児・介護休業法の改正などもあり、子育て家庭にとって大きな変革のタイミング。新しく作られた制度を利用しながら、どう子育てに向き合うかを読者参加型の『たまひよ』を通じて、自らもぜひ発信をしていっていただきたい。30周年を迎えた今、出産・育児を次の世代へとどう伝え、つないでいくのか。『たまひよ』はこれからも誰よりも、子育て世代と一緒に考える存在であり続けたいです」(米谷)


「創刊時パパ・ママだった読者が30周年を迎えると、中にはおじいちゃんおばあちゃんになる方もいて、一緒に雑誌を読んでくれています」と目を細めうれしそうに語る米谷。30周年を迎えた「たまひよ」は、この先の30年もずっと子育て家庭のそばに寄り添いたい――その伴走はこの先も未来へと続いていきます。

情報協力

(右)米谷 明子 (左)松崎 裕江

(右)米谷 明子
株式会社ベネッセコーポレーション
『たまごクラブ』『ひよこクラブ』統括編集長
『妊活たまごクラブ』編集長
株式会社ベネッセクリエイティブワークス
たまひよ雑誌・ムック制作局局長

(左)松崎 裕江
株式会社ベネッセコーポレーション
たまひよ広報ブランド担当

※1)厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai22/index.html
※2)たまひよ妊娠・出産白書2023
https://st.benesse.ne.jp/press/content/?id=146304
「たまひよ」創刊30周年スペシャルサイト
https://st.benesse.ne.jp/30th/