COI<「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」>は、文部科学省と科学技術振興機構が平成25年度から開始した、産学連携による研究開発の取り組みです。既存の分野や組織の壁を取り払った枠組みで、将来の社会の課題に対して、基礎研究段階から社会での実用化まで目指しています。

そのひとつ、東京藝術大学COI 拠点では、<芸術と科学技術が異分野融合して生まれた新しいコンテンツ>を、教育・医療・福祉産業との連携により、社会に実装していく取り組みを行っています。

ベネッセホールディングスは、この東京藝大COIの枠組みに2015年度から参画しています。従来の企業の発想からは生まれなかった、芸術と科学技術が融合したユニークなコンテンツを、教育・介護の現場でどのように活かすことができるのか。そして、これまでになかったサービスを生みだすことはできるのか。一人ひとりの「よく生きる」のための事業に取り組んできたベネッセにとっても大きなチャレンジです。東京藝術大学とともに実験的なプログラムを試行しながら、これからの未来を生きる子どもたちに、物質的な豊かさのみならず、心の豊かさをもたらす、新しい学びのプログラムを届けようとしています。

ここでは、現在進行中の2つのプロジェクトをご紹介します。

【プロジェクト例①:ロボット演劇とベネッセの教材ノウハウが融合したユニークな体験型授業を開発中】

上写真は、研究者向けロボット「CommU(コミュー)」(左)に話しかける子どもの模様

現在、平田オリザさん(東京藝術大学社会連携センター 特任教授 / 劇作家・演出家・青年団主宰)が取り組まれてきたロボット演劇と、ベネッセの教材ノウハウを融合させたユニークな体験型授業の開発に取り組んでいます。
(※テスト授業の模様は後日レポート予定)

【平田オリザさんより】
電子黒板やタブレットを使った授業が、すでに普通になっているように、あと十年もすればロボットを使った授業が当たり前になると私たちは考えています。
ロボットを使った授業は、英語教育やコミュニケーション教育、プログラミングの授業など様々な発展の形が見込まれますが、何よりもロボットを通じて「人間とは何か?」と考えるような授業を組み立てていきたいと願っています。

【プロジェクト例②:発達障がい支援ワークショップを開催】

ベネッセホールディングスが設立した公益財団法人ベネッセこども基金では、東京藝術大学COI拠点、および特定非営利活動法人ADDS(子どもの療育に取り組む団体)と共に、発達障がいがある子どもとその保護者を対象としたワークショップのプログラム開発に取り組んでいます。

「音と光の動物園」と題されたワークショップは、アートや療育、保護者支援など三者それぞれが培ってきた知見・ノウハウが一体となったオリジナルのプログラムで、2016年からこれまで東京と横浜で計3回開催してきました。

動物の世界をテーマに、東京藝大から提供される映像や音楽で表現されたデジタルアートの体験や、ペーパークラフト作り、音楽コンサートなどを楽しみながら、子どもの五感に働きかける内容となっています。

2016年8月に東京藝大内のホールで開催された第1回の模様。子どもとその保護者の方約50名に、子どもが彩色した動物のペーパークラフトが動く映像を背景に、オーケストラが動物に関わる楽曲を演奏

また、それと並行して、保護者向けのコーナーも用意し、参加者同士で情報交換ができるカフェタイムや、専門スタッフからお子さまとの関わり方などのアドバイスをお伝えする時間など、日常、家庭で子どもと接する保護者のサポートも行っています。
このプロジェクトでは、こうした、連携する各団体の強みを活かしたプログラムを試行しながら、将来的に各地域で自治体・団体などと共に子ども・保護者のサポートができる環境を作っていくことを目ざしています。

プロフィール

平田オリザさん

1962年 東京都生まれ。劇作家、演出家。こまばアゴラ劇場総監督、劇団「青年団」主宰。城崎国際アートセンター芸術監督/東京藝術大学社会連携センター特任教授/大阪大学COデザインセンター特任教授。
平田さんの戯曲はフランスを中心に世界各国語に翻訳・出版されています。2020年度以降中学校の国語教科書にも平田さんのワークショップの方法論に基づいた教材が採用され、多くの子どもたちが教室で演劇を捜索する体験を行っています。