ベネッセホールディングスは、CSR活動の一環として、子どもたちの学び支援に取り組んでいます。2018年2月に特定非営利活動法人キッズドアが主催したシンポジウム「『東日本大震災から7年』〜被災地の子どものこれからの支援を考える〜」での議論からの報告です。

2018年2月23日(金)、全日本不動産協会全日東京会館にて、特定非営利活動法人キッズドア(以下、キッズドア)が主催するシンポジウム「『東日本大震災から7年』〜被災地の子どものこれからの支援を考える〜」が開催されました。シンポジウムでは、東北の被災地の現状や子ども支援活動に関する講演が行われ、これからの被災地で必要な子ども支援について、さまざまな観点から議論が行われました。株式会社ベネッセホールディングスは、CSR活動の一環として、子どもたちの学び支援に取り組んでいます。このシンポジウムでの被災地の子ども支援の議論を通して、「未来を担う子どもたちに必要な学び」について考えました。

ベネッセこども基金の助成先団体「NPO法人 3.11こども文庫」のアートをテーマにしたワークショップ。親子や子ども同士の交流を通じて、社会や地域へのつながりを育む。

被災地の学びの支援から 見えてきた課題

当日は、企業のCSR担当者などが多数参加した。 ※CSRとは、Corporate Social Responsibility の頭文字をとったもの。企業の社会的責任。
宮城県本吉郡南三陸町 佐藤仁町長

基調講演では、宮城県本吉郡南三陸町佐藤仁町長が登壇し、「東日本大震災から7年 今までとこれから」というテーマで、震災直後からの復興への道のりを当時の写真や動画を交えて説明しました。
その後、「被災地の子どもたちのこれからの支援を考える」というテーマで、キッズドア理事長の渡辺由美子氏とキッズドア地方創生推進室長の佐藤陽氏、公益財団法人ベネッセこども基金(以下、ベネッセこども基金)事務局長の龍千恵氏、東北の被災地での支援活動を行う公益財団法人東日本大震災復興支援財団の相内洋輔氏が登壇し、各団体が取り組む被災地の子ども支援についての講演が行われました。

ベネッセこども基金事務局長 龍千恵氏

ベネッセこども基金の龍氏は、「子どもの学び支援の現場との連携から見えてきたこと」というテーマで講演を行い、被災地の子どもの学び支援を行う団体への助成事業を通して気づいた課題について、一番の課題として「担い手人材の確保や育成」を挙げました。「子ども支援の核となる団体のスタッフの他、学生ボランティアの数なども、地域によって大きな差があります。良い活動を行っていても組織基盤が弱いため事業継続が難しいという団体もあり、基盤強化も課題です。また、団体単体の活動では着手が難しいテーマもあるため、助成団体交流会を開催するなどして、団体同士の横のつながりを構築したり、ノウハウを共有したりできるようなサポートにも力を入れていきたいと考えています」(龍氏)

子ども支援の現場では 復興を支える人材の育成が急務

龍氏も指摘したように、今回のシンポジウムのキーワードとなったのは、「復興を支える人材の育成」です。

キッズドア 理事長 渡辺由美子氏

キッズドア理事長の渡辺氏は、被災直後は、マイナスになってしまった子どもの学びをゼロへと戻すための支援が最優先されていたが、震災から7年が経ちゼロからプラスへと進むために、子どもたちを地域のリーダーとして育成していく視点が必要だと話しました。
「震災当時小中高校生だった子どもたちは原体験があるので、『自分も何かしたい』と思っている子どもが多いです。そうした子どもたちを東北の復興を支える人材に育成したいです」(渡辺氏)
そのための具体的方策として、キッズドアでは、南三陸町の宮城県志津川高校で生徒の学習支援を行う公営塾「志翔学舎」の運営を行ったり、東北の発展や復興支援を支える新たな次世代リーダーを育成するためのビジネスコンテスト「U25東北ソーシャルビジネスコンテスト」を開催したりしているとの報告がありました。

社会をより良くするために 子どもが主体的に社会と関わる力を養成

インタビューに答えるベネッセこども基金の龍氏

シンポジウムを終え、ベネッセこども基金の龍氏にインタビューを行いました。
「近年、核家族化が進み、子どもたちと社会のつながりが希薄になっています。社会をより良くするためには、社会や地域と主体的に関わる視点が私たち大人だけでなく、子どもたちにも必要だと感じています。社会に主体的に関わる力を当財団では、“ソーシャルリーダーシップ”と定義しています。東北は被災により、人口減少などの社会課題が先鋭化しているだけで、今後、どの地域においても地域の次の担い手不足は問題になるでしょう。より良い社会の実現のためには、すべての子どもたちに“ソーシャルリーダーシップ”を育むことが、大切だと感じています。私たち、ベネッセこども基金は、地域で子ども支援に取り組むNPO等と連携を深めながら、地域の次世代人材育成をサポートしていきたいと考えています」(龍氏)

東北では震災後、地域で次世代を担う子どもたちが自ら課題を感じ、地域活性化のために、ボランティア活動や観光振興のための活動に積極的に取り組んでいます。「地域の次の担い手不足」という課題は、被災地に限ったことではなく、少子高齢化の進む地方でも同様に生じている社会共通の課題と言えます。こうした時代を生き抜く子どもたちに、地域でできることを考えると共に、私たちも教育の会社として何ができるかを考えていく必要があるのかもしれません。

  • 株式会社ベネッセホールディングスは、CSR活動の一環として未来を担う子どもたちの学び支援に取り組み、公益財団法人ベネッセこども基金の活動を支援しています。
    http://benesse-kodomokikin.or.jp/