CASE STUDY

業務改善だけではなく、人を育てるDX。日報で、営業スキル測定技術および育成プログラムの構築

事業フェイズに合わせたDX推進 /
企業向けコンサルティング

ベネッセグループは、日頃の営業活動の効率化、サービス向上のためにデジタルを活用した営業支援に取り組んでいる。そのプロジェクトの一つである「営業日報に基づく、営業スキル測定技術および育成プログラムの構築」が、公益社団法人企業情報化協会が主催する第39回IT賞において「IT奨励(マネジメント領域)」を受賞した。このプロジェクトのリーダーを務める田中達也にベネッセのDXを活用した営業支援への取り組みを聞いた。

田中 達也

Digital Innovation Partners
DXコンサルティング部 課長

大学でロジスティクスや業務改善・BPRを学び、食品メーカーに就職。国内外のR&D部門でBPRやIoT活用のためのシステム導入・データ分析・AI開発や、情報システム部門でグローバルのITインフラの戦略・開発や働き方改革などのプロジェクトに従事。その後外資系コンサルティング会社へと移り、コンサルタントとして通信会社での新規サービス拡大戦略や配送業での組織改革など、幅広い業種・部門の支援にあたる。2020年ベネッセコーポレーション入社。データ分析やRPAといったデジタル技術を用い、生産性向上や顧客価値向上を図るデジタルシフトはもちろんのこと、ベネッセの事業の中核となる学校教育、介護の分野のプロジェクトをグループDX戦略本部DXコンサルティング部 課長という立場で推進している。

ISSUE(課題)

営業担当者にかかる業務負荷の軽減と活用出口の創出

学校向けにアセスメントや教材、授業やコミュニケーションに用いるデジタルツールなどを販売する営業部門では、営業担当者にかかる業務負荷の軽減が課題になっていました。一人当たり数十校を担当し、先生一人ひとりと密にコミュニケーションを取りながら、100以上の商品・サービスの導入・活用促進を行っていたという状況でした。また単独での営業活動が中心となるため上長や同僚とのコミュニケーション機会も少なく、営業スキルに関する育成やシェアリングにも課題がありました。

同部門では、それまでセールスフォースを使って、学校訪問の都度、精緻に訪問内容を記録する仕組みはありましたが、記載に時間が掛かる「記載の負荷」や記載後の具体的なアクションにつながりにくい「活用出口の無さ」により、訪問に対し6割ほどが未記載となっていました。セールスフォースへ記載されている情報は、学校の課題と対策、今後に向けた検討や現状の商品・サービスへの改善要望など非常に粒度の細かい有益な情報源でしたが、十分に記載・活用されていない状況でした。

SOLUTION(ソリューション)

ポイントは2つありました。
まずは「①訪問履歴の記載にかかる時間の削減」、そして「②記載することで自身の成長にもつながる仕組みの構築」により、効率的で、かつモチベーション高く、情報収集し、先生やその先の生徒一人ひとりへ有益な支援につながることを目指しました。

「①時間削減」では、訪問履歴を代理で入力するコールセンターを設置。

日中は車移動が多く、夜に会話の内容を思い返しながらまとめて記載するため時間がかかっていたことに着目し、対話形式で簡易に記載が可能となるよう、専用のコールセンターを設置して対応を図りました。

「②成長へのつながり」では、テキストデータを用いたスキル測定とレポートの構築を実施。

テキストデータは1訪問あたり数百文字で記載されており、導入商品の継続や新規商品の営業、先生方のご意見への対応の仕方など細かく記載されています。3,000を超える訪問履歴を読み込み、営業担当者に求められるスキルを抽出し、営業本部長や支社長、営業担当者を交えて12のスキルに分類。文章単位で各スキルへの該当有無を確認し、担当者ごとのスキルレベルを測定できるAIを開発しました。

その測定結果をスキルごとの強み・弱みとして記載し、支社内でのランキング形式で表示するレポートを構築し月次で発信しました。それにより上長や同僚とのコミュニケーションも密になり、各自のモチベーションの維持とスキル成長に利用してもらえる仕組みを構築しました。

RESULT(結果)

入力は半分の時間に。また成長実感の機会創出にも。

コールセンターには先生との会話内容を鮮明に記憶した状態で報告できるので、それまで記載に1訪問あたり平均約25分かかっていた作業時間を半分以下の約10分まで短縮。加えて対話形式で訪問の目的や成果を報告することにより、担当者自身の頭の整理や報告を意識した訪問につながったという声もあり、特に若手の育成に効果がありました。また、支社ごと、担当者ごとにバラバラだった記載フォーマットも統一したことで、商品部門も含めた訪問履歴の理解度向上にもつながりました。

スキルの測定では、レポートを提供している営業担当者からは自身の強み・弱みに加え、同僚の強みも分かり、誰に相談したらよいかが分かったことや上長との1on1もありコミュニケーションが活性化され、成長を実感できるようになったとの声が多数届きました。上長からも、日ごろ机を並べて業務していないため正確な実態が分かりづらく的外れな指摘にならないかという懸念が、数値化されたレポートがあることで自信を持って指示・指導ができるようになったとの声も頂きました。

この技術やスキームは、顧客への提供価値を高めるために社内の育成を図っていることが評価され、企業情報化協会主催のIT賞でIT奨励賞を受賞しました。現在この技術は特許申請しており、今後、同様の課題を抱える社内外の営業部門への提供も図っていきます。

PERSPECTIVE

PERSPECTIVE

PERSPECTIVE

PERSPECTIVE

ベネッセがDXで成果を出せる理由はなんでしょう?

プロセス自体を楽しみ、切磋琢磨しながら取り組む姿勢だと思います。顧客への価値提供による「よく生きる」の支援だけでなく、社員自身も新たな取り組みに「ワクワク」しながら、DXによる新たな取り組みを成功させようと一生懸命に学習・実践していました。ベネッセには、成果への強いコミットメントとプロセスを楽しみ、どうすればもっとよくできるか、みんなで話し合いながらより良いものに仕上げていこうという風土があります。推進側がそういうモチベーションを持って取り組むことで、導入先にも熱量が伝わってより良い循環になっている点が、一人ひとりが「よく生きる」ためのDXを支えていると思います。

ベネッセのDX推進。今後どう進めていきますか?

まだまだグループ内でも多くのニーズや機会は存在します。DXコンサルティングは、推進部門だけの取り組みではなく、現場と共に、考え、実行するものです。プロジェクトを進める中で、進め方や技術をエキスパートから伝授しながら進めており、事業成果の創出だけでなく現場・組織の成長にも直結していきます。これからもより多くのプロジェクトを実行して、DXに対する抵抗感や進め方が分からずに成果創出へつながりづらい状況をどんどん減らし、より難易度の高い課題を解決できる力をつけ、顧客に対してより大きな価値を提供していくサイクルを根付かせていきたいですね。

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