専門性、社会人基礎力、そして実践的な英語力
グローバルで活躍できるエンジニアとして資質を伸ばし
学生を世界に羽ばたかせる

京都先端科学大学
工学部
教授・副学長・学部長 田畑 修 先生
教授・教務主事 中村 康一 先生

学校情報

京都先端科学大学(京都府/私立)

  • 設立年:1969年(前身の京都学園大学開設)
  • 学生数:約3,600名

ポイント

  • 日本電産の会長永守 重信氏が理事長となり、世界トップメーカーを立ち上げ育てた経営手腕を活かして、即戦力となる京都発世界人財の育成をめざしている。
  • 工学部の授業は、専門科目も含めてすべて英語で実施。また学生の半数を留学生が占め、学生同士のコミュニケーションを含め、常に“英語を使う”環境を整えている。
  • 「GTEC」Academicをアセスメントテストとして実施。また初年度は学生が成長を実感しやすいよう年4回受検。2020年度入学生はこれまでに9回もの受検で自身の成長を可視化している。

I.大学の紹介

京都先端科学大学は京都府の私立大学。2019年に旧・京都学園大学を名称変更するなど、大学改革に関わっているのは、日本電産の会長である永守 重信氏。世界トップのモーターメーカーを立ち上げ、主導してきた手腕を生かし、優れた専門性と国際的に活躍できる英語力を身につけた人材の育成に注力している。
今回取り上げるのは工学部について。工学部は専門科目を含めたすべての科目を英語で実施する、定員の半数を留学生が占めるなど、日本人学生にとってタフな教育環境を整えている。その教育の特徴や背景にある大学・学部の理念、そして「GTEC」Academicの活用について、田畑 修教授・副学長・学部長、中村 康一教授・教務主事にお話を伺った。

京都先端科学大学太秦キャンパス

Ⅱ.教育の特色

京都先端科学大学工学部は、国内有数の国際・英語教育に力を入れている大学・学部だ。まずはその教育の特色について紹介する。
授業は「English Medium Instruction(英語を用いた教育)」の考えにもとづいて、専門科目を含め“すべて”英語で実施する。英語科目は非常に充実しており、1年次の前期は必修の英語科目が週に10コマ用意されている。2年生終了までの英語科目は14科目21単位、そのうち18単位が必修である。また、専任教員の1/3はインターナショナル教員。教員とのコミュニケーションやレポートの提出も英語で実施される。
学生に占める留学生の比率が極めて高い点も特徴だ。京都先端科学大学は1年次の後期から留学生を受け入れており、2022年度は1年生定員200名の半数以上が留学生。もちろん学生同士でグループワークやディスカッションを行うアクティブラーニングも豊富に用意されている。学生の半数が留学生なのだから、学生同士のコミュニケーションでも、常に英語を使う必要がある。
このように、京都先端科学大学工学部の学生にとって、英語を“使う”ことは大学生活を送る前提となっている。ハードな環境に感じるかもしれないが、中村教授によると、ほとんどの学生は早い時期から順応し始めるという。
「1年次のうちは主に数学、物理と、学生にとっても馴染みのある分野の科目が多いですから英語でも比較的学びやすい。また1年生に限ってですが、重要なポイントは日本語で説明を補っていますし、日本語での質問も受け付けています。
より重要なのは、入学してすぐにオールイングリッシュの授業が始まる以上、学生が自分で『英語に慣れないと進級できない』と覚悟を決める点にあります。ハードだからこそ意欲的になれる部分は大きいでしょう。」(中村教授)

Ⅲ.教育の背景

京都先端科学大学が国際・英語教育にここまで注力している理由は、設立の背景にある。詳しい話を田畑学部長に伺った。
「本学は2019年に京都学園大学が名称変更して生まれた大学です。その改革を行ったのが、新理事長として就任した日本電産の永守会長でした。
永守理事長は日本電産を立ち上げ、世界トップのメーカーへ育てあげた経営者。50年にわたる経営の中で、様々な人材を見てきました。そこで感じたのが、“今の大学教育は社会に出て即戦力となるような世界人財を育てられる環境になっていない”という不満でした。ここで言う世界人財とは、具体的には優れた専門的知識・技能を持っていて、国際的に活躍できる英語力があり、誰とでも交渉できる社会人基礎力を持った人財です。そのような人財の育成を永守理事長が教育界に働きかけていたところ、それを知った京都学園大学の前理事長が、『既存の大学を改革してみては』と後任の理事長になるよう依頼し、経営に参画しました。
工学部は永守理事長の改革のもとで新設された学部です。だからこそ、特別強く理事長の想いが教育に反映されています。授業はすべて英語で行い、学生の半数を留学生にする。これは工学部の新設前に永守理事長が掲げた条件で、私が学部長に就任する際に『絶対にやってください』と念押しされました。もちろん、伸ばすのは語学力だけではありません。『English Medium Instruction』はあくまで英語を用いた教育であって、専門性や社会人基礎力も同様に重視してカリキュラムを組んでいます。例えば工学部では『キャップストーンプロジェクト』という企業の現場の課題解決に学生がチーム4人で取組む卒業研究に代わるPBLを3年生と4年生に設けています。それも理事長の考える世界人財の育成のためです。今も理事長は授業の見学に来て、学生や教員を見守っています。」(田畑学部長)

Ⅳ.「GTEC」Academicの活用

京都先端科学大学の英語科目は、習熟度別のクラスに分かれて行われる。そのクラス分けで利用されているのが「GTEC」Academicだ。なお他学部はクラス分け等にTOEICを採用している。なぜ工学部のみ「GTEC」Academicを採用したのか、中村教授に伺った。
「当然ながら、自分の実力に見合ったクラスで学んだ方が学生は成長します。『English Medium Instruction』を実践するためには4技能すべてのレベルアップが必要であり、本学部ではそのための授業を実施していますので、4技能を測れるテストでなければクラス分けに使えません。そして1年次の4月からどんどん授業を行っていく以上、入学前の3月までに実施できて、授業が始まるまでに結果が戻ってくるテストでないと活用できません。この2つの条件を満たすのが「GTEC」Academicだけだった。それが採用した理由です。」(中村教授)
「GTEC」Academicは1年次だけでなく、以降の学年でもアセスメントテストとして活用されている。また、特に伸びしろの大きい1年次は、学生に自身の成長をより実感させるために、年4回も受検させている(他学年は年2回)。
なお、一般的に学生の英語力は入学時がピークであり、以降はスコアを緩やかに伸ばすか、落とす傾向が強いが、京都先端科学大学工学部の学生は1年次の2回目という早いタイミングで多くの学生がスコアを伸ばしている。特にスピーキング・ライティングなどのアウトプット力の成長が著しい。学部の英語教育が効果をあげている証拠だ。ただし、中村教授によると、伸びているという一点だけで満足しているわけではないという。「実施年度によって多少変わるのですが、例えば2020年の1年生はリスニングのスコアが他の技能に比べて伸びていない傾向が見られました。我々工学部の専任教員と英語担当者が密に連絡を取っていて、定期的に会議を行っています。そうした会議の場で一緒にデータを見て、伸びている分野と伸びていない分野を確認し、常に授業内容の改善をはかっています。」(中村教授)
「GTEC」Academicのデータを活用して授業改善につなげていくことが、学生の成長に大きく影響しているようだ。
「GTEC」Academicを活用することのメリットとして、学生の観点では、自身の成長を振り返り、今後伸ばしていく技能を見極めることができること。「GTEC」AcademicのスコアレポートのフィードバックやCan-Doが充実しているからこそ振り返りができる、と中村教授は考える。また大学の観点では、学生のテスト結果を可視化し、目標と現状とを分析することで、データをカリキュラム改編の参考にできることがポイントだという。

京都先端科学大学工学部2020年度1年生「GTEC」Academicの受検データ

Ⅴ.今後の展望

今後の展望の一つとして、田畑学部長と中村教授は学生が自身の英語力を試せる場の充実をあげた。「せっかくこれだけ英語力を鍛えているのですから、学生にはやはり現実の海外にも出てもらいたい。本学はインターンシップセンターという部署を設けており、海外の企業とのコネクションを積極的に開発しています。海外インターンシップに参加する学生はすでに多くいるのですが、今後はさらに割合を増やしていきたいと考えています。また、留学の提携校も増やす予定です。」(田畑学部長)
2024年度に工学部が育成する「Be a Street Smart Global Engineer!」の第1期生が世界に羽ばたくときは近い。

お話を伺った方

工学部
教授・副学長・学部長 田畑 修 先生(右)
教授・教務主事 中村 康一 先生(左)