将来の夢や目標を見定めていく時期に経験する海外での学びや異文化体験は、英語力の養成だけではなく、子どもたちに様々な刺激と、将来につながる第一歩となる大きな成長をもたらす可能性を秘めています。今年の夏、アメリカのポートランドで行われた、持続可能なまちづくりを自ら学ぶSDGs留学プログラムに参加した子どもたちが、現地で実際に体験して得たその学びについてご紹介します。

語学だけではなく、持続可能な社会・まちづくりを学べるSDGs留学

中高生を対象に、様々な学びのある留学プログラムを提供しているベネッセ海外留学センターが2019年の夏に開催した、アメリカのポートランドでのSDGs留学。
昨今、SDGsへの取り組みが広がり、社会とどう関わるかに向き合う子どもたちが日本においても増える中、持続可能なまちづくりで注目されるSDGs先進都市で、自ら学びたいテーマを設定。現地でその探求・リサーチができるプログラムに、14~18歳の子どもたちが参加しました。

目の当たりにしたのは、高齢者や障がい者ものびのびと暮らすまち

元々、まちづくりに興味があったという、16歳の飯島 布珠乃(いいじま ふみの)さん。「なぜ、ポートランドは公共交通機関が発達して活気があるのか?を実際に見て知りたいと思ってプログラムに参加しました」

実際に行ってみたポートランドは、「サイクリングをしている人が多く、朝からランニングや犬の散歩をゆったりと楽しんでいて・・・まち全体に活気があって、みんなが自然を楽しみながらのびのびと暮らしているまちだなと感じました」という印象を持ったそう。

飯島さんが撮影したポートランド。自然豊かなまちの中心に流れるウィラメット川ではカヤック体験も楽しんだ。

中でも印象的だったのが、自分で現地での探求テーマとして設定していた公共交通機関のこと。
「まち中にバスやストリートカーがたくさん!障がいのある人にも優しい設計で、他の人の手を借りなくても簡単に乗ることができるので、車椅子で利用している人がたくさんいました」

「高齢者が車を使わなくてもいいまちをつくりたい」

「日本では、超高齢社会なのに、バスやタクシーなどの公共交通機関が特に地方では少なく、値段も高い。それが高齢者の車の運転による交通事故が減らない一因になっているように思いました」

現地でのリサーチ後、「日本でも、公共交通機関のコストを減らしたり、割引制度を作ったりとできそうなことを考えてみたいです。自分自身が住んでいるまちでも、もっとバスを増やしたり、手軽に利用できる方法を考えて、高齢者が車を使わなくてもいいまちを作りたいと思いました。そのためにも、大学で学びたいことがはっきりとわかりました」と飯島さん。

今後はこの留学で得たことを、たくさんの人に向け、発信もしていきたいそう。

チームごとに課題をリサーチ、発表を行う場も。公共交通機関をテーマに英語でプレゼンをする飯島さん。

飯島さんの他にも、「ポートランドはなぜ人口が増え、活性化しているのか」「アメリカの制度から日本の年金制度を考える」など、さまざまな社会課題に関するテーマを設定し、参加した子どもたち。
「実際に現地に行くことで、日本にいてはわからなかったことに気づくことができた」「興味をもったテーマについて、自分で考え学習ができ、自信をもてた」など、プログラムを終えた後は、それぞれの発見・学びの様子がうかがえました。

自らの力で道を切り拓き、将来を考える第一歩になる体験を届けたい

今回のSDGs留学の企画を担当した、菊池(ベネッセコーポレーション・グローバル事業開発部)
によると、留学場所を選定する際は、以下のような観点を重視しているそうです。

「その場所ならではの体験や学びを提供できるか?ということを意識しています。今回の留学先であるポートランドは、全米で最も住みたいまちに選ばれるなど、そのライフスタイルやエコフレンドリーな取り組み、またそれを推進するまちづくりが世界中から注目されています。実は中高生にとっては、アメリカのほかの大都市に比べるとなじみが薄いのですが、SDGsに関連した社会課題への気づきや学びを深めるのにぴったりの場所だと思いました」

「ベネッセのプログラムは『旅行』ではなく『留学』。何もかもお膳立てをするわけではなく、参加されるみなさんが、自分の力で現地での生活や勉強を頑張れるようにサポートをする、というのが大きなポイントだと考えています。海外で生活をしてみる、ということは楽しいことばかりではありません。うまく言葉が通じなかったり、文化の違いでお互いの考えていることが理解できなかったり、大変な経験も数多くあります。そういった困難な状況を主体的に解決したり、乗り越えたりすることで、自分の力で自分の道を切り拓く経験をしてほしい、将来を考えていく第一歩としてほしい、という想いでプログラムを提供しています」

今回のプログラムでは、現地の語学学校で、日本の文化について自分で準備をして説明・交流するような場も設けた。写真は日本の「こけし」を紹介する飯島さん。

子どもたちが未来を自らの力で切り拓いて、自分らしく生きていくために。ベネッセグループでは今後も、教育事業での知見をいかした“学びのあるプログラム”の開発・提供を通じて、SDGsの課題を将来解決できるような、人材育成に貢献していきたいと考えています。

情報協力

菊池 麻衣(きくち まい)

ベネッセコーポレーション グローバル事業開発部
菊池 麻衣(きくち まい)
国内教育事業、語学事業を経て2016年から現職。自らの留学経験や、海外での留学サポートの経験を踏まえ、小学生~大学生まで幅広い年代に向けた留学プログラムの企画・開発を行っている。

・ベネッセ海外留学センター
https://www.benesse-kaigai.com/