「働き方改革」が言われる今、働く当事者は、仕事と家庭のバランスをどう意識しているのでしょうか。ベネッセ教育総合研究所・次世代育成研究室の調査結果から見えた、乳幼児の子どもを持つ「父親」の、仕事と家庭に関する実態と意識のレポートです。

乳幼児の平均的就寝時間は21時台。 その後に帰宅する父親も少なくない現実

ワークライフバランスの実態をみる指標のひとつである帰宅時間については、父親の帰宅時間は「19時台」「20時台」が全体の約4割を占めました(図1)。全体の分布は19~20時台をピークにした山を描き、17時台以前に帰宅する父親が約7%いる一方、22時台以降に帰宅する父親は約20%います。
子どもの平均的な就寝時間は、乳幼児で21時台ですから(ベネッセ教育総合研究所「幼児の生活アンケート」より)、父親は子どもが起きている間に帰宅できるとは限らず、当然、平日育児にかかわるチャンスは非常に限られてきます。
経年でみても、この傾向は2005年ごろから大きく変わっていません。

「育児する父親」にとって社会の壁はまだまだ厚い

ワークライフバランスの実現には、育休やフレックスタイム制など、職場における諸制度の充実が欠かせませんが、それらの実効を上げるための、子育てへの理解や風土といった質的な要素も重要です。
下の図は、育児に関する職場の雰囲気を父親に尋ねた結果で、もっとも「あてはまる」比率が高いのは「子どもの出産時には休みを取りやすい※1」(73.6%)でした。一方、「男性の子育て参加を大事にする風土(社風)がある※1」は35.1%にとどまりました。
ある程度、予定や見込みを立てられる出産や行事への参加に加えて、子どもの突発的な病気などに対する職場の理解は広がっているものの、職場や会社全体の雰囲気や風土といったものはなかなか広がらないようです。

※1「とてもあてはまる」+「あてはまる」

父親の本音は、「もっと家事や育児にかかわりたい」

そもそも、父親自身はどの程度家事や育児に積極的な気持ちを持っているのでしょうか。

上の図からわかるように、家事・育児に今まで以上に関わりたいと思っている父親は2014年で全体の約6割でした。「関わりたくない」比率は8.9%、「どちらともいえない」は32.9%です。経年でみると、2005年からの9年間で「関わりたい」と思う父親は増加しています。
ところが、男性育児休業率は5.14%(2017年度、厚生労働省発表)。「2020年度までに男性の育休取得率13%にする」という政府目標からはほど遠い状況です。
「働き方改革」の実現には、改革を後押しする制度の拡充に加えて、こうした「もっと育児したい」父親の思いに応えようという、社会全体の意識変革が求められていると言えそうです。

「イクメン」という言葉が流行語大賞のトップ10に入ったのは2010年のことです。その後、国も働き方の変革に乗り出すなど、ワークライフバランスを真剣に見直そうする機運が高まっています。例えば母親だけでなく父親をも支援する仕組みづくりなど、これからの社会に応じた、従来の枠組みにとらわれない家族のあり方を皆で考え、解決していく必要がありそうです。

(分析レポート:ベネッセ教育総合研究所・次世代育成研究室長 高岡 純子)

*本記事は、「ベネッセ教育総合研究所」サイト掲載の次世代育成研究室トピックスをもとに作成し、掲載のグラフ図は同サイトからの転載です。

関連サイト