雑誌「たまごクラブ」「ひよこクラブ」や、Webサイト等を通じて出産育児情報を届け続け、今年で27周年を迎えた妊娠・出産・育児ブランド『たまひよ』では、これまで届けてきた出産育児の課題解決情報のみならず、さまざまな新しい家族のかたちを発信しています。少子化が進む一方、同性間の結婚や、結婚後の夫婦別姓問題など法整備がなく、いまだ伝統的な家族観が根強く残る日本において、多様な家族の姿を伝えようとする背景にある思いを担当者に聞いてみました。

※タイトル画像:2人のパパと赤ちゃん。戸籍上の性別は女性のままで“パパ”になり、パートナーの女性との間に赤ちゃんが誕生した杉山文野(すぎやま ふみの ※写真向かって左)さん。生物学上の父である、親友のゴンさんと一緒に。

LGBTQ、ひとり親、特別養子縁組・・・多様な家族像をサイトや誌面で発信

ブランドスローガン「Enjoy 1000 days」のもと、妊娠出産期のかけがえのない日々におけるさまざまな課題や不安に応える情報を発信してきた『たまひよ』が今、これまでとは別に力をいれて発信している情報の一つが多様な家族のありかた。LGBTQのカップルや、ひとり親、特別養子縁組によって子どもを迎えた家族、ステップファミリーなど、さまざまな背景をもつ家族に取材をし、その出産育児のリアルを伝える記事を紹介しています。

2020年4月に立ち上げた、「たまひよとつくる こどものミライ」コーナー。多様な家族像や、子育て世代に伝えるSDGsなど、だれもが生み育てやすい社会と、サステナブルなこどもの未来に向けた情報発信を行っている。

家族ってなんだろう?婚姻関係や血縁関係、家族のかたちに「正解」はない。

『たまひよ』がこのような多様な家族を取り上げるきっかけと、取材を通して印象的だった家族の一例を担当である堀中 由美(ほりなか ゆみ/ベネッセコーポレーション たまひよメディア事業部)に聞いてみました。

「元々、『たまひよ』では赤ちゃんをとりまく環境や家族のかたちが変わってきている実態を追い続けていましたが、25周年を迎えた2018年、“もっといろんな考え方を伝えていこう”と、『たまひよ 家族を考える』特集をスタートしたことが今につながっています。継続的な発信の中から選出した記事を「こどものミライ」に掲載していますが、コーナーへの反響も高く、たくさんのかたから興味関心の声をいただくようになりました」

「これまで色々な家族を掲載してきて、印象的な家族がたくさんいました。例えば、子ども3人を抱えてシングルファーザーになった吉田さんというかた。シングルマザーは大変だ、という話はよく聞きますが、ひとり親世帯の13.2%(※1)」を占めるというシングルファーザーの育児も本当に大変です。吉田さんの場合は、積極的に自らの状況を伝えたことが風通しのよい子育てへとつながったそうですが、周りのかたのちょっとした声かけが、孤独や悩みを抱えがちなシングルファーザーの大きな助けになる、という話が心に残りました」

「また、継続的に紹介をしている、LGBTQの活動家である杉山文野さんは、家族のスタンダードってなんだろう、と考えさせられるケース。杉山さんは同性のパートナーと家族になり、親友であるゴンさんからの精子提供を受けて赤ちゃんが誕生しました。現在は杉山さんの両親の家で子育てをされていますが、ゴンさんも親の一人としてそこに通い、育児に参加されています。そこには、赤ちゃんという弱者を守るために結束した大人のチームがあります。『たまひよ』は「Enjoy 1000 days」で、日々違う出産育児のかけがえのない毎日を伝えていますが、同じように1000人いれば1000通りのストーリーがある。血縁や婚姻関係、赤ちゃんを産む・産まないという選択も含めて、家族のかたちにどれか一つの正解はない、ということを実感しています」

吉田さんと杉山さんの出産育児を伝える実際の記事より。

個々人がチームをつくり、みんなで子育てを楽しみながらよりよい社会へ

最後に、堀中は『たまひよ』が発信する多様な家族像の発信にこめる思いについて、次のように語りました。
「さきほどの杉山さんのお話で、出産された都心の病院ではLGBTQの人の出産について「そんなことでどうこういうスタッフはうちにはいません、心配しないでください」と言われたそうです。ああ、日本も変わってきた、と感動する一方で、新しい家族像がそこにあるのに、ないものかのように扱う“ズレ”が存在することも事実です。こうした多様な家族像や、さまざまな価値観を知ってもらうことで、理想の家族像にしばられて声をあげられず苦しんでいる人が楽になってほしいと思います」

『たまひよ』WEBメディアの編集ポリシーより。妊娠・出産・育児に多様性があることを前提として、よりよい社会をめざす方針が明記されている。

「これまでの記事を見た読者からは、“これ、『たまひよ』(の記事)なんだ”、と意外と思われるような声をいただくこともありますが、誌面のみならずWebでの発信が増えた今、母親・女性たちだけではなく、男性や幅広い年齢のかたが『たまひよ』の読者になりました。読者層や時代の変化に応じて幅広い情報をお届けするようになりましたが、『たまひよ』のコアは変わりません。信頼、そして共感を大切にしながら、「新しい命」のためのよりよい社会をめざして――これからも『たまひよ』らしい情報を届けていきたいと思います」

「たまひよ」は、これからも出産育児を取り巻くよりよい社会をめざした発信を続けていきます。

※1:厚生労働省「平成28年度 全国ひとり親世帯等調査」より

情報協力

飯塚真希

株式会社ベネッセコーポレーション

たまひよメディア事業部 堀中由美

グッズ系雑誌の編集長を務めた後05年ベネッセコーポレーション入社 主婦生活誌『サンキュ!』『ルチェーレ』育児雑誌『ひよこクラブ』編集を経て現在たまひよWEB編集長を務める。2女児の母。

・たまひよとつくるこどものミライ
https://st.benesse.ne.jp/sustainability/

・「ある日突然、妻が家族から離れていった…」シングルファーザーの奮闘、助けとなったのは?
https://st.benesse.ne.jp/ikuji/content/?id=68491

・トランスジェンダーの僕が、赤ちゃんを授かるまで
https://st.benesse.ne.jp/ninshin/content/?id=35599