民間企業における障がい者雇用は増える一方、コロナ禍によってその働き方は変化しています。在宅勤務や業務のデジタル化により、障がい者の方々がこれまで携わってきた業務が減ってきているという実態があります。
ベネッセグループの特例子会社で、障がい者の雇用を促進する株式会社ベネッセビジネスメイト(本社:東京都多摩市)は、公益社団法人多摩市シルバー人材センターとの地域共働サービスに関する包括連携協定を締結しました。
この協定により、両社がそれぞれに業務を受託する中で、互いの強みを生かし、ハンディを補いながら働く場所や業務を安定的に確保・シェアし、障がい者・高齢者ともに働きがいをもって地域社会へと貢献することを目指します。

コロナ禍で障がい者雇用の現場に起こった危機。提携することで、相互にメリットが

ベネッセビジネスメイトには、2023年4月時点で知的障がいを中心に172名の障がい者が働いており、10年勤続表彰者が 129名に及ぶなど多くの社員が長きにわたって活躍しています。


障がい者雇用の現場では、定着が難しく離職率が高いという現状がある中、ベネッセビジネスメイトでは一人ひとりに寄り添いながら業務工程を見直し・支援体制を敷くなど、障がい者が長く働き続けられる職場づくりに取り組み、効果を上げている

東京事業部で現場の社員育成・マネジメントにあたっているのが飯田と伊藤です。
「ベネッセビジネスメイトの請け負う業務はベネッセグループ内の事業所で清掃を行うクリーンサービスや従業員に対する郵送物の配達などを行うメールサービスがメインでしたが、コロナ禍で社員の在宅勤務が増えたことでオフィスにかかわる業務が激減。このままでは請け負い業務がなくなるかもしれない、という強い危機感を覚えました。」(飯田)
これからの働き方を検討していった結果、可能性を見出したのが外部のクリーンサービスを請け負う、という新しい業務のありかたでした。
「工程・設計を見直し、ユニバーサルでシンプルな業務に変えていくことを推進した結果、非常に品質が高いレベルの清掃も安定的に行うことができるようになっていたクリーンサービスであれば外に出てもうまくいく可能性がある、と考えました。その一方で、障がいのあるメンバーにとっては生活リズムの安定が重要であり、シフト勤務や就業時間外の勤務が求められる業務に対応することが難しいという課題もありました。」(飯田)

そこで、ベネッセビジネスメイトからはじめに声をかけたのが多摩市のシルバー人材センターでした。

「それまでに、早朝勤務の業務でシルバー人材センターから紹介されたかたに派遣でお仕事をお願いしたところ、非常に安定的かつ品質高くお仕事をいただいていたため、すでに信頼関係があったということもありました」(伊藤)

シルバー人材センターは高齢者と仕事をマッチングしていく役割を担っていますが、ニーズは高い一方で、高齢者のかたの経験や嗜好に合う業務の確保やマッチングが難しい、という側面もありました。今回の連携によって、より幅広い業務の受託を増やし、高齢者にとっても働きがい・生きがいのある業務が提供できます。

シルバー人材センターでは草取りや清掃のニーズが多いが、担い手不足という課題があった(※写真はイメージです)

両者がお互いの強みを生かすことで、地域の高齢者と障がい者ともにイキイキと安定的に働くことができる

多摩市シルバー人材センターとの締結式で、ベネッセビジネスメイトの茶谷社長はこう語りました。


「今後、両社がそれぞれの形で業務の受託を進めていくなかで、たとえば弊社に強みのある衛生管理業務やパソコンを使った専門的なスキルが求められる部分でシルバーセンターにご協力しつつ、逆に弊社では対応が難しい時間帯の業務、あるいは単独で離れた拠点に行かなければならない業務についてサポートいただくなど、両社がカバーできるのはないかと考えました。今後は、それぞれの事業領域拡大とサービス対応力の向上を実現するとともに、地域の高齢者と障がい者の仕事の枠自体を増やすことを目指します」

締結式では、多摩市シルバー人材センター・稲垣勝理事長と、ベネッセビジネスメイト代表取締役社長・茶谷宏康により調印が行われた

地域の中で働きがいやいきがいを持って、自分らしく暮らしていける機会と場所をつくりたい

締結式が終わった後日、今回の締結を推進した飯田・伊藤に改めて今後への思いを聞いてみました。


「いま、日本全体が少子高齢化などによって労働力が社会全体で不足するという課題を抱えています。そのような中で、潜在的な労働力が高い高齢者がいる多摩市シルバー人材センターと当社の業務提携がモデルケースとなり、求められる業務に障がい者またはシルバー人材をマッチングさせることで、双方の雇用や働き方の活性化につながればと考えています」(飯田)


「これまでは『ベネッセグループのためのビジネスメイト』。企業内における業務の支援を中心として、社員から『ありがとう』と言われるようになっていましたが、このような新しい取り組みをきっかけに、今度は地域にとっても必要とされる存在になり、それによってさらに働きがいを感じる機会を増やしていきたいと思います」(伊藤)


相互の強みを生かした連携で、高齢者と障がい者の活躍を広げながら、サービスの向上へ――東京都多摩市で始まった取り組みは、地域におけるダイバーシティ(多様性)の拡大に向けても新しい一歩を踏み出します。

情報協力

飯田 佳子

飯田 佳子
株式会社ベネッセビジネスメイト
東京事業部にて部の運営を担当。
今回の協定の締結を推進。

伊藤 寧々

伊藤 寧々
株式会社ベネッセビジネスメイト
東京事業部にてスタッフの育成・マネジメントを担当。
今回の協定の締結を推進。



ベネッセビジネスメイト「地域共働サービスに関する包括連携協定 締結式」
https://blog.benesse.ne.jp/bbm/topics/2023/2023071097.html