CASE STUDY

システム開発子会社を統合。
内製化促進で次の時代を担う人財を育てる

2023年4月からIT全般を統括する立場になった最高情報責任者の保本尚宏氏。横断部門のDIP組織におけるIT領域(ITガバナンス部、インフラソリューション部、コーポレートシステムソリューション部)に加え、事業カンパニーの4つのシステムソリューション部(「校外学習カンパニーシステムソリューション本部」「学校カンパニーシステムソリューション本部」「介護・保育カンパニーシステムソリューション部」「こどもちゃれんじシステムソリューション部」)も統括する。アウトソーシング(外部委託)に大きく依存していたベネッセグループのシステム開発体制をいかに変えるか。地道な成功事例を積み上げた経緯について話を聞いた。

保本 尚宏

Digital Innovation Partners 副本部長 最高情報責任者

ベネッセコーポレーションに入社後、IT部門にて約5年の経験を積みロサンゼルス支社にてシステム開発に従事。
日本に戻り経営企画を経て、グループ子会社である岡山ランゲージセンターの責任者を務める。その後、新規事業領域を担当し、英語共通テスト事業(現在のGTEC)の立ち上げやインドネシア での新規事業開発に携わった後、2022年4月 よりDIP副本部長としてIT領域全体を統括、最高情報責任者を務める。

ISSUE(課題)

外注依存が生み出した負の側面
デジタル必須の時代に改革着手

少し昔話になりますが、1990年代半ば頃、ベネッセもアウトソーシングブームに乗ってシステム子会社を設立していました。当時としては正しい判断だったと思いますが、要は役割を明確に分けていたんですね。いつしか、システム部門が空洞化、システム子会社も取次の仕事になってしまっていました。当然、自分たちで開発はできなくなり、下請け、孫請けと二重三重のコストがかかっていました。悪い弊害です。

もともとシステム開発は我々の本業ではないという考え方があったのだと思います。でも、いま我々のあらゆるサービスでデジタルは必須になっています。開発を外部へ頼り切っていたのでは、目まぐるしく変化する外部環境に迅速に対応しながら、お客様に新しい価値を提供することは不可能でしょう。これまでの開発環境を全社的に変えていこうというのが、今、我々が取り組んでいる課題であり、チャレンジです。20年近く自分たちだけでシステム開発をしてこなかったところから、少しずつ内製化の実績をつくっていこうとしています。

SOLUTION(ソリューション)

人財育成が選択肢を生み出す
地道に積み上げた6年間の実績

システム開発を自前でできるようになると、ベンダーに依存することなく我々の判断で様々な選択肢から選べるようになります。内製したほうがよいか、ベンダーにお願いしたほうがよいか。お願いするとしたらどのベンダーが良いか。こうした判断ができる人財が育つ点がとても重要です。

約6年前に校外学習カンパニーシステムソリューション本部で取り組みを始めました。最初はこの小さな一歩から始めて成功して、さらに次を手がけてという地道な6年間でしたが、確実に実績を積み上げてきました。今では校外学習カンパニーのシステムの約7割を内製化できています。事業側からの要求に迅速に応えられるスピードを手に入れましたし、コストもまた大幅に削減できました。

会社の中でも認められてきたことで今回、全社的に広げようとしているのです。

RESULT(結果)

変わり始めたエンジニアの意識
「守り」の意識が「攻め」に転じる

2023年7月にシステム開発子会社のベネッセインフォシェルを統合しました。子会社にいた人たちの思考や意識が大きく変わり始めているように思います。これまでは、どこか言われた通りに実行に移して失敗をしないようにという守りの思考をとても強く感じていました。今は失敗も含めてチャレンジしようという意識が芽生えています。これはすごく大きな変化であり、成果だと思っています。

長年アウトソーシングをしているとベンダーロックイン(特定企業の独自技術に大きく依存していることにより、ほかの企業への乗り換えが困難な状況)に遭っているケースもあります。これは大きな問題なので早期に改善を進める必要があります。

一方で、校外学習カンパニーでの知見から内製化率は7割くらいがちょうどいいのではという感触も得ることができました。ベンダーがつくったシステムがすでにあって、きちんと動いていてコストもさほどかかっていないのであれば、使えるものは使ったほうがいいわけです。

いずれもこうした議論ができるようになってきたのは、小さくても確実に成功例を積み上げてきたからだと思っています。

PERSPECTIVE

PERSPECTIVE

PERSPECTIVE

PERSPECTIVE

今後、どのようなことを手掛けていきたいですか?

人財育成を強化していきたいと考えています。現在、若手のエンジニアには基礎的な研修の後、製造経験、開発管理経験などを5年ほど積んで事業側に転出してデジタル事業企画の経験を担ってもらうというキャリアパスを歩んでもらう取り組みをしています。こうした改革を通じて、ベネッセのこれからを支えるIT人財を育てていければと思っています。

人財育成における課題と、これからの取り組みを教えてください。

やはり人財の育成には現場に大きな負荷がかかります。事業そのものが大変な環境下にある部署では人財を育てる余裕がありません。ある程度、組織が成熟し、余裕ができて初めて、人財育成に力を割けるようになります。当初は校外学習カンパニーでのみ経験を積んでもらう形で進めてきましたが、2023年4月からは他の部署の組織成熟度を上げて、若手を育成できる環境を拡大する取り組み を進めています。

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