CASE STUDY

ガバナンスの高度化およびITリソースの最適化を実現し、事業変化に迅速に対応する環境づくりに取り組む

ベネッセの横断組織であるDIP(Digital Innovation Partners)にはガバナンスの面からデジタルイノベーションを支える組織として「ITガバナンス部」が存在している。ベネッセは事業毎に基盤が強く、運営体制がしっかりしていることから、ITガバナンス部が組織全体を管理・コントロールするためには意志を持って横串を入れていかなければならない。ITガバナンス部について「表立つ仕事ではないけれど、会社の要石だ」と語る部長の渡部真氏に話を聞いた。

渡部 真

Digital Innovation Partners
ITガバナンス部 部長

ベネッセのシステム機能会社に入社し、システム開発・運用保守を担当。マネジメントの立場でシステムの運用保守チームを担う。情報処理サービスおよびセキュリティに特化した子会社「ベネッセインフォシェル」の設立に関わり、2015年からシステム運用保守の安定稼働を目的に業務改善、標準化に取り組む。2022年にベネッセとインフォシェルの会社合併のPMOに着任し、2023年7月にベネッセコーポレーションにジョインした。2023年10月より現職。

ISSUE(課題)

事業変化への対応とリソースの最適化

ITガバナンス部は客観的な視点で事業・プロジェクトのリスクを正確に捉えて各々に伝える務めと、統制管理してITのリソースを最適配置する役割を担っています。ガバナンスが機能することで各事業の目標達成と顧客価値の最大化に貢献することが大きな目標です。

事業を取り巻く環境の変化に対応するため、ベネッセはサービスや運営のデジタル化を推進してきました。多様な開発プロジェクトが立ち上がり、取引先ベンダー数も増えています。そのため各プロジェクトのリスク管理の重要性が年々増してきました。

ITリソースにはヒト・モノ・カネとありますが、特にDX人財、IT人財は数が限られているのが現状です。多くのプロジェクトが発足する中で優先順位をつけ、人員をアサインしなければいけません。また、コスト構造を把握して、人員の稼働状況に問題がないか注視する必要があります。

SOLUTION(ソリューション)

モニタリング、IT投資検討会、ITコストの管理と適正化によるガバナンス高度化

重要な開発案件のモニタリング

ベネッセが手がけるデジタルサービスやシステム開発案件は、近年ますます増えています。さまざまな成果が得られる反面、プロジェクトの開発リスクや、与える影響も大きく、何よりもお客様にご迷惑をおかけすることは防がなければなりません。そのために、特に大型の投資案件や重要案件、難易度が高いプロジェクトを対象に開発状況のモニタリング活動を継続中です。ITガバナンス部がプロジェクトに伴走することで、リスク事項を客観的に把握しプロジェクトへフィードバックする事で、プロジェクトの完遂に貢献できるよう取り組んでいます。

IT投資検討会による投資決裁プロセスを強化

IT投資検討会は社内の基本規程や権限規程にも明記される正式な組織で、決裁プロセスの前に実施され、ベネッセグループの一定規模以上の案件を全て対象とします。CDXOをはじめDIP内外の有識者を集め複数の観点から、そのプロジェクトの妥当性やリスクを評価し、プロジェクト成功の確率を高めるためのアドバイスを実施しています。

ITコストの管理と適正化

グループ各社、各事業部門にも提供しているITサービスは、IT基盤を適切に整備・拡充していくために、「投資の目的」「受益と負担のバランス」「原価の適正な構造」といった観点で、受益者であるグループ各社や各事業部との間で合意しながら進める必要があります。
時間経過と共にITサービスの利用状況は当初想定に対して変動が発生します。
そのため、ITサービスの利用実態把握、原価構造の適正化を図りながら提供しているITサービスメニューの見直し、費用負担の在り方に関して関連部門との合意形成や、投資の妥当性確認を進めています。

RESULT(結果)

ITガバナンス活動の定着化と組織知化の拡大

日々実行しているモニタリング活動の中で成功するプロジェクトと苦戦するプロジェクトの違いを整理し蓄積しています。この蓄積したノウハウを体系化し、社内の研修プログラムであるDX研修のプロジェクトマネジメントのコンテンツに組み込み、開発プロジェクトに参画する全ての人へ苦戦するプロジェクトの特徴を共有することでプロジェクトのリスク低減に取り組んでいます。
さらに、IT投資検討会における事前の確認事項にモニタリング活動で蓄積した要注意ポイントを盛り込み、プロジェクト開始前のリスク低減を進めています。

次に、今年度の試行的な取り組みとして、顧客ニーズへの対応、競合他社との差別化を目的にグループ会社を含め数々の開発プロジェクトが発足します。
この数多く立ち上がる開発プロジェクトに対して、限られた人財をどのようにアサインするのか、DIP内のIT領域の責任者が集結し協議を行う動きを始めています。
今後、各事業の目標と顧客価値の最大化への貢献を達成するためには刻々と変化する状況に対して関連部門と連携し、ITリソースを把握しながら最適配置できる仕組みの実現が急務だと考えています。

PERSPECTIVE

PERSPECTIVE

PERSPECTIVE

PERSPECTIVE

今後、チャレンジしたいことは何ですか。

ITリソースを把握する仕組み作りです。
現状は、必要な情報を保有している関連部門に情報を取りに行って全体の把握を行っています。しかし、状況変化が激しい現在においては、必要な時に情報がいつでも取り出せる状態を作っておく必要があると考えています。
予め必要情報が共有されている状態を作り、情報収集に時間を投入するのではなく対策の実行に時間を投入できる状態を作るのが目標です。

ITガバナンス部での仕事のどういった点にやりがいを感じますか。

もともと私は「ITガバナンス部は本当に必要なのか?をわざわざ設けなくても各事業で管理した方が効率がよいのでは?」という先入観を持っていました。しかし実際、部門に身を置いて役割の重要性と責任の重さを体感することでITガバナンス部の重要性を強く実感しました。横断機能として全体最適を考え、目標達成のための行動が求められることにやりがいを感じています。

MORE
CASE STUDIES