高・大・社の円滑な接続を目標に
進級要件とカリキュラムをCEFR基準に変更
4技能教育の充実を加速させる

明海大学
ホスピタリティ・ツーリズム学部 教授
三輪 祥宏 先生

学校情報

明海大学(千葉県/私立)

  • 設立年:1970(昭和45)年
  • 学部:外国語学部、経済学部、不動産学部、ホスピタリティ・ツーリズム学部、保健医療学部、歯学部
  • 学生数:約4.2千人

ポイント

  • 高校のカリキュラム変更、入試改革、そして社会で求められている英語力の変化を鑑みて、学部内の英語教育を4技能主体のものへとアップデート
  • それまで設けられていた進級要件を、CEFR基準のものへと変換
  • 外部公開試験だけでは進級要件を満たせない可能性を考えて、「GTEC」Academicを導入
  • 「GTEC」Academicのスコアレポートとデータを活用し、学生への個別指導の質を高めつつ、刷新したカリキュラムの効果測定を行う

I.大学の紹介

明海大学は1970年に開学した城西歯科大学を起源に持つ私立大学。2020年現在は外国語学部、経済学部、不動産学部、ホスピタリティ・ツーリズム学部、保健医療学部、歯学部の6学部を抱える。歯学部のみ埼玉県の坂戸キャンパスに設置されており、その他の5学部は千葉県の浦安キャンパスに集中している。
今回取材したのは、同大学のホスピタリティ・ツーリズム学部。ホスピタリティ・ツーリズム産業で活躍する人材の育成に力を注ぐ学部だ。グローバル・マネジメント メジャー(以下GMM)、ホスピタリティ・ツーリズム メジャー(以下HTM)の2専攻が設けられており、GMMはTOEFLまたはIELTSのスコアを、HTMではTOEIC® Listening & Reading Test(以下TOEIC L&R)のスコアを進級要件にするなど、これからの観光産業で必要になる英語力の育成に力を注いでいる。2020年、同学部の英語教育は大きく転換し、その結果として「GTEC」Academicの導入に至った。その背景や今後の取り組みについて、同学部教授の三輪祥宏先生にお話を伺った。

明海大学浦安キャンパス

Ⅱ.取り組みに至った背景

ホスピタリティ・ツーリズム学部は新設された2005年以来、2019年までTOEIC L&Rのスコアを進級要件として用いてきた。1年次から2年次はトータルで500以上、2年次から3年次は600以上スコアがないと進級できない。スコアを向上させるために、ネイティブの教員による英語の授業やTOEIC 対策の授業を設け、年7回のIPテストも実施する。このように、本学部はTOEIC L&Rを軸にして、ホスピタリティ・ツーリズム産業で求められる英語力を学生に身につけさせようと努めていた。
しかし、15年もこうした取り組みを続けていく中で、いくつかの課題が浮かび上がってきた。1つ目は高校の英語教育と入試の4技能化だ。高校の英語教育のカリキュラムが4技能化し、入試も4技能を測るものへと変わりつつある。入試で4技能を測るのに、学内の教育をReadingとListeningを軸とした2技能中心で続けていくのは不自然になる。
2つ目は学生の卒業後の実情だ。グローバル化が進み、訪日外国人観光客が増えていく中、ホスピタリティ・ツーリズム産業では英語の「発信力」が重視されるようになっている。ReadingとListeningしか身につけていないようでは、活躍の幅が狭まってしまう。
大学の入り口と出口の変化に合わせて、2技能ではなく、4技能の能力育成に取り組んでいかなければならない。こうして2020年度、カリキュラムと進級要件に大きな変更を加えることになった。特に進級要件は大きく変わった。まず、進級要件自体がCEFRを基準としたものに変わり、2年次への進級はA2レベル、3年次への進級はB1レベルが必要になった。どの外部試験で要件をクリアするかは、学部が定めた8つの試験のいずれかであれば、どれを選んでもよいことになっている。
「CEFRを基準としたのには理由があります。進級要件をTOEIC L&Rで縛っていたとき、学生は英語の勉強=TOEICの勉強と考えてしまいがちでした。だからTOEIC対策以外の英語の授業は適当にこなす程度のモチベーションで受けている学生が多かった。また、3年次から4年次の進級要件はなかったために、3年次の進級と同時に英語の勉強をやめてしまう学生も見られました。ですから、進級要件を一つの試験に縛るのではなく、あくまで4技能の力がついていればよい、ということにしようと考えたのです」
(ホスピタリティ・ツーリズム学部/三輪祥宏教授)

Ⅲ.「GTEC」採択の理由

 進級要件はCEFR基準になったものの、学内で行う外部試験は依然必要とされていた。公開テストだけですべての学生が進級要件をクリアできるわけではなく、学内で補完しなければならないからだ。また、4技能育成のために一新したカリキュラムの効果測定・改善に向けて、学生の英語力に関するデータを蓄積していく必要もあった。
学内試験として継続して実施することは、少々議論になったそうだ。4技能を測るには、L&Rに加えてS&Wも実施しなければならない。そこで、学内試験として実施する外部試験を改めて探すことになり、「GTEC」Academicに白羽の矢が立った。主な採択理由は以下の通りだ。
まず、高校時代に受検したことがある学生が多く、実施がスムーズに進むこと。実はTOEICで最も気にされていたことだったそうだ。英語の能力以前の問題として、試験の形式に慣れないと点数が伸びない学生が一定数いた。英語の能力を純粋に測れるかどうか、重要な観点と言える。
次に、検定料金が低額であることだ。4技能の試験は往々にして公開テストの検定料が高額だ。その点、「GTEC」Academicは比較的低額な方だと言えた。
3つ目は、フィードバック性の高さだ。学生個人、大学ともにデータの提供に関して、実績があることが評価された。特に実施後に提供されるスコアレポートについては、学生を個別に指導していくうえでよい資料になりそうだと感じたとのことだった。
最後に、試験時間の短さも挙げられる。CBT形式の場合、学生一人ひとりにパソコンを使わせないといけないことから、あまり試験時間が長いと1日に何人も受検させられない恐れがある。1学年に200人学生がいると考えると、試験時間の短さは、実施上の効率に大きく影響するだろうと考えたそうだ。

Ⅳ.今後の展望

CEFRへの移行と同時に、カリキュラムにも大きく手を入れた。TOEIC L&R時代はReadingとListeningを学習する科目が一つしかなかったのに対し、2020年度からは4技能それぞれに対応する科目が置かれることになった。今後、新設された科目でどの程度力をつけられているか、全体の傾向を把握するうえで「GTEC」Academicのデータが活用されていくだろう。また4技能に対応した科目のクラス分けも、「GTEC」Academicのデータにもとづいて行っていく予定だという。
さらに、個別の学生指導においては、「GTEC」Academicのスコアレポートを活用していく。本学部では、学生は4年間必修の少人数ゼミに所属することになっており、各学生に担任となる教員がつく。その教員と、英語教育を担う教員が連携し、スコアレポートにもとづいた指導を日常的に行っているという。まだ始まったばかりの試みではあるが、スコアの程度に応じてどのようにアドバイスしていくか、実施を重ねていく中で少しずつ体系化されていくだろう。
「学生には、自身の英語4技能力の証明を単位認定のためだけではなく、就職活動時にもアピールして欲しいと思っています。ベネッセiキャリアは、検定試験だけでなく、オファー型就活支援サービス(dodaキャンパス)も学生向けに提供していると聞いています。学部の特性上、どうしても特定の業界しか目に入らない学生が多いので、自身の英語力がどんな企業・業界に通用するのか意識できるようになれば、学生の就職活動ももっと充実していくでしょう。活用の幅は広いように感じています」(三輪教授)

お話を伺った方

ホスピタリティ・ツーリズム学部 三輪 祥宏教授