4技能を測るテストで学生を適切なクラスに配置
学修成果も意欲も高まる
より学生に寄り添った指導が可能に

明治学院大学
文学部英文学科 教授
関口 幸代 先生

学校情報

明治学院大学(東京都/私立)

  • 設立年:1949(昭和24)年
  • 学部:文学部、経済学部、社会学部、法学部、国際学部、心理学部

ポイント

  • 必修科目のクラス分けに用いるアセスメントテストを、2技能から4技能へアップデート。各科目に対応した技能のスコアでクラス分けを行い、学生の英語力に適したクラス配置が可能に。結果として学生がより前向きに学修へと向き合えるようになった。
  • 受検前・受検後のフォローとして、授業外での学修サポート講座・GTECサバイバル講座を実施。テスト受検後も、学生自身が自律的に学修目標を立てる起点としてGTECスコアの活用を促している。

I.大学の紹介

明治学院大学は1863年に創設されたヘボン塾を起源に持つ私立大学。創設者であるヘボン博士が掲げた“Do For Others”を教育理念に掲げ、学生への教育はもとより、学生を中心としたボランティア活動、生涯学習をはじめとした社会に開かれた活動に注力している。2021年現在は文学部、経済学部、社会学部、法学部、国際学部、心理学部の6学部16学科で構成されている。
今回取材したのは、同大学の文学部英文学科。ヘボン博士による英語教育をルーツに持つ、最初に設置された学科の一つだ。3割以上の授業が少人数制かつ英語で実施されるなど、“英語で学ぶ”ための語学教育を充実させている。特に1・2年次はすべての英語の授業を必修とし、そのクラス分けに「GTEC」Academicを活用している。今回はプレイスメントテストを4技能で実施しようと考えた背景や、テスト導入後に感じている利点について、「GTEC」Academicの実施を担当している同学部教授の関口幸代先生にお話を伺った。

明治学院大学キャンパス

Ⅱ.取り組みに至った背景

英文学科は英語基礎科目として「Reading」「Writing」「Listening and pronunciation」「英文法」「Listening and Speaking」「Academic Reading」「Academic Writing」等を必修科目に指定している。1・2年次に集中して学ぶ授業だ。かつてはこれらの科目のクラス分けを2技能の外部英語テストで実施していたが、2019年度から「GTEC」Academicでのクラス分けに変更した。その背景について、関口先生は次のように語った。
「他大学でも同様ですが、近年入試の多様化が進み、本学にも様々なバックグラウンドを持つ学生が入学するようになっています。例えば、Listeningには自信があるが、Speakingは苦手な学生や、海外経験が豊富でSpeakingは得意だが、Writingが苦手な学生などです。学科の特性上、本学科は他学科に比べて英語が得意な学生が入学します。ただそれでも技能別に力を見ていくと、得意・不得意にバラつきがありました。
そうした学生たちを、2技能の総合点のみでクラス分けしてしまうと、実際の実力とクラス配置に齟齬が出てしまうことがありました。多くはありませんが、2技能での総合点では上位クラスにいても、発話の部分で対応できず、個別のクラスでのスキルのギャップで悩んでいる学生もいました」
科目編成の都合上、2技能ではなく4技能のテストでクラス分けを行う必要がある。そう感じて、関口先生らは2018年よりプレイスメントテストの見直しを始めた。4技能のテストであることと、オンラインで実施できることを条件に数社のプレゼンテーションを受け、最終的に選ばれたのが「GTEC」Academicだ。
「「GTEC」Academicに惹かれた点は主に2つです。1つは、CAT※1とIRT※2の組み合わせで“ムダ”がないこと。特にペーパーテストの場合、問題の難易度や量に対応できず最後まで回答できない学生も多くいました。プレイスメントテストとはいえ、学修活動に変わりはありません。スキルに合わせて問題が変わり、試験時間中ずっと英語に向き合うというのはテストとして理想的だと考えました。
次に、答案返却までの時間です。3月中旬に入学が決定してから、すぐにテストを受けさせ、クラス分けまでに結果をもらえるかどうか、そのスピード感が重要でした」
「GTEC」AcademicはReadingとListeningの結果は即日、SpeakingとWritingの結果は最大10日で返却する。このスピード感が魅力に映ったそうだ。

※1 CAT(Computer adaptive Testing)。回答に応じて出題が変わるテストのこと。
※2 IRT(Item Response Theory、項目応答理論)。統計に基づく評価項目で受験者の能力を判定する試験理論。

Ⅲ.「GTEC」Academic採択の理由

「GTEC」Academicの導入後、英文学科がどのようにクラス分けを行っているかを説明する。
仮に「Writing」の授業のクラス分けを行う場合、まず「GTEC」AcademicのWritingのスコアに応じて全体を上位・下位として2分割し、「ハイクラス」と「レギュラークラス」の2つに分ける。そのうえで、ハイクラスを成績順に20名程度の5−6クラス編成とする。レギュラークラスについても同様だ。ただしこちらのグループについては、学生の学修意欲の低下を避けるため、成績順での縦割りの配置ではなく、ある程度スコア分布を平均して学生を5−6クラスに分割する。また、スコアの開きが大きく、最下位層により綿密なサポートが必要な年度に関しては、別途最下位層を1クラス設置し、この層をレギュラークラス編成には含めないこともある。こうしたクラス分けを、各技能にもとづいて科目単位で実施する。およその流れはこのようになっていて、最下位層のクラスを設けるかはスコアの分布を見て、年度ごとに検討している。
「「GTEC」Academicのスコアの分布を見ていると、レギュラークラスの中でもボトム層の成績が特に大きく伸びているのがわかりました。クラス分けの精度が上がって、適切なクラスに適切な学生を配置できているからだと考えています」
また、4技能の各セグメントで学生の成長を把握できるようになった結果として、Speakingに関する課題も浮かび上がったそうだ。
「以前は2技能の総合点でしか学生の成長を把握できなかったのでわからなかったのですが、4技能全てのスキルをスコアによって可視化することができるようになり、一つの問題点としてSpeakingについて学生の成長が鈍いことがわかりました。今後のカリキュラム改善に活かしていきたいと思います」
なお英文学科では「GTEC」Academicを1、2年次の英語基礎科目クラス分けにのみ活用しており、そのスコアを成績評価や発展科目の履修選考に用いる予定はない。
「もちろん、英語力を客観的に見るためのツールとして、学生にスコアを振り返るよう伝えてはいます。「GTEC」Academicは結果帳票で4技能の説明もされていますので、学生が個人で振り返りやすいところがよいと思っています。ただ点数化して学内の他の活動で用いるとなると、学修のチャンスが減ってしまう場面があると考えています。特に英文学科生には海外の学生と交流するCOIL科目やオンラインでハワイ大学のコースを受講できる発展科目もあるのですが、これらの科目の履修はスコアでの制限をつけずに、学生の自主性を重んじ、学修意欲のある学生が受講できるよう間口を広く保っておきたい。ですので、GTECの学生自身の活用法としては、今の自分の4技能の現状を知り、今後の学修計画に活かすツールという位置づけでよいかと考えています」

Ⅳ.今後の展望

最後に現状の課題として、受検後のフォローについても伺った。
「「GTEC」Academicの受検方法は、入学前の試験実施前にオンラインで『GTECサバイバルガイド』という外部講座を提供し、説明できていました。一方で、受検したテストを振り返る機会は、成績評価と直結していない関係で提供できていませんでした。この点を改善しようと、今年度は『GTECサバイバルガイド』を1年次末にも実施し、2度目の受検前に自身の成績を振り返らせることにしました。具体的には、各技能のスコアランクを1段階上げるためにあと何点必要か考えさせたり、教員やTAに英語の学修法を相談できる時間を設けたりしました。今後も同様の取り組みを続け、学生の自律した学修を支援していきたいと考えています」

お話を伺った方

文学部英文学科 教授 関口 幸代 先生