SDGsという言葉が世界で誕生する以前よりあった、日本古来の考え方「もったいない」。 SDGsの認知は日本においても広く浸透した一方、課題に対応する具体的な取り組みはまだ不足しており、子どもたちへのSDGs教育の中心は小学生以上が中心という実態があります。
そのような中で、幼児の教育・生活支援ブランド<こどもちゃれんじ>を35年以上展開しているベネッセコーポレーションは、毎日ふれる紙やおもちゃ、水など身近な物や場所に隠れている「もったいない」を親子で発見し、幼児にもわかりやすい手法で物を大切にする心を自然に育む「まみむめもったいない」キャンペーンを展開。全国約2万の保育園、幼稚園やこども園にも紙芝居を無償提供するなど、連携を広げて実施しました。このキャンペーンをしかけた担当者たちに、実施の目的や背景にある思いを聞きました。

ニーズは高いが、幼児に伝えることは難しい
「ものを大切にする」ということ

キャンペーンの企画を担当した加地(ベネッセコーポレーション マーケティング戦略部)に聞くと、その発端は、全国の保育園、幼稚園やこども園で働く先生たちへのアンケートにあったといいます。
「<こどもちゃれんじ>では2009年から「幼児のまなび応援団」いう園と家庭のまなびをつなぐ取り組みを継続するなかで毎年、先生方へのアンケートやヒアリングを元に園向けのツールの提供をしています。少し前のコロナ禍では、手洗いを子どもたちに教えたい、という声が先生方から多くありました。それが落ち着いたところでどんなお困りごとがあるか聞いたところ、SDGsの時流がある中で、もっと食べ物や水、おもちゃなどを大切にすることを子どもたちに教えてあげたいが、まだ小さい子どもたちに教えることが難しい、どうしたら? という声がたくさんあることに改めて気づきました」(加地)


そこで、「小さな子ども達にもまずは“もったいない”という言葉に親しみをもってもらうこと、それがどんな気持ちかを理解してもらうこと」を目指し、物を大切にする心を自然に育むキャンペーンを企画し、しまじろうと踊りながら学べる「まみむめもったいないダンス」をYouTubeで公開。
さらに全国の保育園や幼稚園・こども園を対象に、楽曲「まみむめもったいない」のCDや楽譜、物を大切にすることを学べる紙芝居やポスターも無償提供しました。

「まみむめもったいない!」は軽快な歌とダンスで、もったいないに気づき、具体的に何をすればものを大切にできるかわかるように。ダンス動画をSNSで投稿すると、テレビ番組「しまじろうのわお!」でも放映されるなど、取り組みたくなる仕掛けも用意した。

幼児が遊びの中で自然と取り組めるよう
「楽しさ」「わくわくすること」にこだわり

「まみむめもったいない」のキーワードに「まだつかえるよ」「みずはとめてね」「むだづかいダメ」「めざせお皿ピカピカ」「もったいない!」のメッセージを込め、しまじろうと一緒に歌やダンスを通して日常生活や遊びの中で自然と意識してもらえるよう工夫してつくられています。
さらに家庭向けにも冊子を配布し、親子で家の中でも「まみむめもったいない!」を実践できるように工夫しました。

(左)「保育園でも“もったいない”のお話を聞いたみたいでノリノリでダンスしていました」 と、SNSに投稿されたYoutubeのダンスをみながらお子さんが踊っている様子
(右)家庭向けに配布した冊子はめくり仕掛けやシール付きで“もったいない”を親子で楽しめる仕様に

子どもたちが園で楽しく学んだことが、親子で話し合うきっかけにも

加地のほか今回のダンスや動画を考案・制作し、園へ音源や楽譜、紙芝居の配布を共に実施した冨安・小柳津にも話を聞きました。


「幼児向けに『環境教育』をやってみようとなった時、どうやって子どもたちに理解をしてもらうか、をかなり考えました。例えば『ご飯を残さない』など、いわゆる“しつけ”のような伝え方は簡単にできますが、それを大人からの目線や“理屈”として伝えるのではなく、子どもたちには“心”でわかってもらいたい。それで、実際に子どもたちから話を聞き、監修の先生やさまざまな方とも議論を重ねた結果、子どもたちは自分が『大好き』な人やもの、それはおうちの人がつくってくれた食事や、お絵描きに使う紙などに対して大切にしたい気持ち、つまり「もったいない」の元になる気持ちを抱いていることがわかりました。それで、ただ子どもたちに「もったいない」と言わせることをゴールにするのではなく、大好きなものを基点にしてその考え方が楽しみながら伝わるようなコンテンツを届けることを大切にしました」(冨安)


「大人になると環境教育は地球が破壊されているから必要、など知識を得ながら理屈として理解することができますが、それはどこか『他人事な関わり方』になるのかもしれません。子どもたちが小さいうちから大事なものを増やしていくことで、身近な問題をもっと自分事として捉えることができれば、思いやりをもちながら、大人になっても自発的に行動ができる人が社会に増えていく。その先に、結果としての“地球にとってよいこと”があるのではないか、と思います」(冨安)


小柳津は、子どもたちからの視点とは別に、園の先生たちからの視点を大切にしたといいます。


「『SDGsを子どもたちに教えなければ』と思うとハードルが高く感じますが、改めて考えてみると“もったいない”はSDGsという言葉が生まれる以前から園でずっと大切にされてきた考え方ではないか、と思いました。それで、新しいことをやらねば!と難しく考えるのではなく、これまでも先生方がずっと大切にされてきた“もったいない”をもっと具体的に、身近なものから子どもたちにわかりやすく伝えることができるようなツールも一緒に提供したいと考えました」(小柳津)

(左)園の身近な生活シーンから先生が“もったいない”を子どもたちに話し、気づや理解を促すことができる紙芝居も提供
(右)<こどもちゃれんじ>の35周年を機に、子どもたちの未来について考え環境教育を推進していくためにつくられた象徴アイコン

「キャンペーンを通じて、全国の園にツールを配布しましたが、子どもたちが朝から夕方まで、ともすれば家よりも長く過ごす園という場所で学ぶことの一つに、物を大事にする、“もったいない”があり、そこで楽しんで学んだことが家に帰ったあとでも“やってみよう”につながるのではないかと思います。親もまた、子どもの素直な言葉や行動にはっとすることも多いはず。そうして親子で学び合いながら自然に行動がかわるきっかけにとなることを思い描いています」(加地)


「まみむめもったいない」キャンペーンを通じて、たくさんの子どもたちへと届けられた“もったいない”の会話は全国の園や家庭、そして未来へとひろがっていきます。

情報協力

加地いつ葉

加地いつ葉
株式会社ベネッセコーポレーション
マーケティング戦略部
「まみむめもったいない」の企画を推進

小柳津里咲

小柳津里咲
株式会社ベネッセコーポレーション
マーケティング戦略部
「まみむめもったいない」の企画を推進

冨安悠

冨安悠
株式会社ベネッセコーポレーション
こどもちゃれんじ企画制作部
「園向けCD/楽譜/ポスター」を作成



「まみむめもったいないダンス(Youtube)」 http://shimajiro.jp/mottainai_full/