障がいの有無にかかわらず、意欲のある人々がイキイキと働き続ける職場づくりをめざしたい。そんな思いのもと、日々業務現場に立ち、障がいのあるスタッフのマネジメントに取り組む社員がいます。ベネッセビジネスメイトの佐藤瑞枝に聞きました。

ベネッセビジネスメイト 健康支援サービス課 佐藤瑞枝(さとう みずえ) 

2005年、ベネッセビジネスメイト設立のためベネッセコーポレーション総務部から出向し(その後転籍)、障がい者が活躍でき、ともに働く職場づくりに取り組む。2021年に立ち上げたベネッセオフィス内の社員向けカフェ「ふらっとCafé」の企画・運営を推進しつつ、現場マネジメントとスタッフ育成に注力している。

※株式会社ベネッセビジネスメイト:働く意欲のある障がい者に対して、積極的に雇用の場を創出する目的で設立されたベネッセグループの特例子会社。

「文芸や翻訳の仕事がしたい!」と入社。でも、やりたいことと自分に合うことは違うと気づき…

親の転勤で米国に引っ越し、大学も米国でした。帰国しての就職を考えたときに、本が大好きだったのでどうしても出版社に入りたいと思いました。自分が持っていたあらゆる本の奥付に書かれた出版社に履歴書を送り、ベネッセコーポレーション(当時は福武書店)に採用されました。

しかし、文芸や翻訳系の仕事を希望していたにもかかわらず、配属されたのは総務部。しばらくは「希望と違う…」と引きずっていました。ただ、働く現場を見ると想像と違うことも多く、やりたい仕事と自分に合う仕事は違うんだなと気づき、そこからは配属先での仕事に前向きになれました。

総務部時代でいちばん印象に残っているのは、ベネッセコーポレーションの東京本部が新しい自社ビルに移転したときです。オフィス施設をつくり上げること、しかも会社が成長していくなかで総務の仕事に携われたことは、大きな手応えでした。移転後は、ISO14001取得のためのオフィス廃棄物対策やリサイクル企画などを担当しましたが、振り返ると、今の仕事につながっているものばかりです。


互いを理解するにはまず声を掛け、小さな間違い・すれ違いに気づくことが大事

2005年に開業したベネッセグループの特例子会社・ベネッセビジネスメイト(以降略称「BBM」)に総務系の仕事が委託されるに伴い、出向しました。仕事を通して、障がいのある社員やスタッフの活躍の場をつくることをめざす会社です。それまでも社内で、障がいを抱えながら働く人たちが「障がいについてもっとわかってほしい」という思いをもって働いておられるのを見ていたので、BBMで支えることができたら! という、強い気持ちで立ち上げに携わりました。

そんな思いからスタートしているので、私が働くうえでのモットーは、「あいさつはしっかり交わして、一人ひとりのメンバーにまんべんなく一日一回は声をかけること」「きちんとわかりやすく伝えること」「できたことはしっかりほめて一緒に喜ぶこと」です。もしも伝えた仕事が思い通りの結果にならなかったら、教えたこちらが悪いと考えて、伝え方を変えるようにしています。日々のやりとりの中で、小さな間違い・すれ違いに気づくことが大事だと思っています。


障がいの有無や種類にかかわらず、みんながイキイキと働ける職場にしたい

BBMの立ち上げ時は、メンバーの体調に十分配慮できず、納期を優先するあまり無理な作業を組んでしまい、反省したこともありました。ただ、失敗から学べることはたくさんありますから、自分自身が「仕事が辛い」と感じたことはないんです。その都度、先輩や上司に恵まれたおかげかもしれません。

逆に、うれしい・楽しいと思うことはたくさんありますね。とくにメンバーが、提供するサービスを通じて誰かの役に立っていると感じてくれるとうれしいですし、自分が教わったことを後輩や実習生に教えている姿を見ると成長の喜びを感じます。

今年、健康支援サービス課で立ち上げたベネッセ・多摩オフィス内の「ふらっとCafé」は、私もスタッフと一緒にキッチンや店頭に立つので、目配りできる安心感があります。「おとなしいメンバーかなと思っていたけど、あんなに大きな声で接客できるんだ」といった発見も得られますし。商品を作り、接客して、販売して、「おいしい!」と言ってもらえるというプロセスが一連でつながっているので、彼らもより手応えを感じやすいようです。みんながイキイキと働いてくれることが、私のやりがいでもあります。

社員に「ふらっと」気軽に立ち寄ってほしい、そして上司と部下、障がいのある人とない人など誰もが「フラットに」語り合えたらという思いを込めた「ふらっとCafé」。コロナ禍での利用には制約があるものの、健康に配慮したランチメニューは大人気。

夢が少しでもかない、得意なことを活かして活躍する。それも「よく生きる」のひとつの形

新人時代には想像もしなかった仕事を任されていますが、今の職場には、たくさんの「物語」があります。思わぬ事件もいろいろ起きるものの、やっぱり、一人ひとりが成長していく姿を見ていると「ストーリー」を感じます。実は、趣味でずっと「物語」を書いていまして、童話の文章募集に応募したこともあります。仕事での出来事が、書くときの刺激になることもありますし、「物語」がたくさんある職場って素敵だなと、日々感じています。

一日を元気に働くこと、そして、どんな方でも得意なことを活かして活躍でき、夢が少しでもかなうこと。それもひとつの「Benesse(よく生きる)」ストーリーだと、私は思っています。


(写真左)佐藤が手にしているのは「第45回JX-ENEOS童話賞(現・ENEOS童話賞)」の入賞作品集<童話の花束>に掲載された自作文章「窓に描く」のページ/(写真右)受賞式当日の佐藤。やさしい物語を創り出す"書き手"としての顔。

※本記事は、ベネッセグループ社内サイトに掲載された記事を元に再構成したもので、所属・写真は2021年7月取材時のものです。