Benesse 「よく生きる」

EPISODE 人と社会の
「Benesse(よく生きる)」
をめざして

『答えはママとパパの中にある』。本音に寄り添い妊娠・出産・子育てをサポートする「たまひよ」の雑誌
妊娠出産たまひよ

左:株式会社ベネッセコーポレーション 『たまごクラブ』『ひよこクラブ』統括編集長 米谷明子

右:株式会社ベネッセクリエイティブワークス 『ひよこクラブ』編集長 柏原杏子

「たまひよ」は、妊娠してから2歳になるまでの約1000日間に及ぶかけがえのない日々に寄り添い、赤ちゃんと家族に必要な情報・商品・サービスをお届けしています。なかでも2023年に創刊30周年を迎える雑誌『たまごクラブ』『ひよこクラブ』は、Webやアプリなどの新しいメディアとともにお客さまとのつながりを長年大切にしてきました。妊娠・出産・育児を取り巻く環境が変わりつつあるいま、赤ちゃんとの日々に喜びを感じると同時に不安も抱える読者にどう向き合い、必要な存在であり続けているのか。企画編集をリーディングする米谷と柏原に話を聞きました。

妊娠・出産・育児という変化の時期を
SNS、Web、雑誌がそれぞれの特性を活かしてサポート

「たまごクラブ」「ひよこクラブ」の2誌同時創刊から始まった「たまひよ」事業ですが、今はさまざまなサービスを提供していますね。
米谷
妊娠・出産・育児を頑張るママやパパとその家族の声を受け止めて、雑誌をはじめ、アプリやWebサービスでの情報提供、通信販売などを通してサポートしています。どのサービスも、「赤ちゃんが生まれて成長することを、ご家族のそばで一緒に祝福したい」という想いでお届けしています。
妊娠・出産・子育てのときにいつもそばにいる。そんな「たまひよワールド」をめざしている。
今の時代、メディア環境が多様になっています。雑誌はどういう役割をもっていますか。
柏原
たとえばWeb検索で出てくる情報は、個人が主観で述べたものも多く、自分にとって必要なものを取捨選択するのが難しいところがあります。特にコロナ禍においてはそれが顕著でした。雑誌は内容を整理した状態で掲載しているので、ひと目で必要な情報を見つけやすいのです。
米谷
雑誌は編集者が、こんな人にはこの内容が合うけれど、この人には別の内容のほうが・・・など、いろんな情報や視点で吟味してつくります。また監修の先生の意見も取り入れて、読者が本質的に知りたいことをわかりやすく提供しようと見出しやビジュアルを工夫します。そういうプロセスをふんだ内容であるところが、信頼をいただいている理由だと思います。
長年「たまひよ」の雑誌編集に携わる米谷。2022年4月の「たまひよ」新創刊を推進した。
柏原
読者の方々に聞くと、SNS、Web、雑誌などのメディアをうまく使い分けていらっしゃるなと感じます。SNSは雑誌にない即時性があり、個人のリアルな体験談には共感できるものも多いですよね。それぞれのよさを知ったうえで活用されているようです。

問い合わせの根っこにある「本音」に
次の企画の芽がある

読者が置かれている環境やニーズは、どうやって捉えているのでしょうか?
柏原
編集部では毎号のアンケートや、それをもとにした取材や撮影をして読者とつながっています。コロナ禍で直接お会いする機会が減ったのですが、オンラインを活用するようになり、全国規模で声が聞けるようになりました。そこはすごくプラスになっていますね。

また、お客さまからのお問い合わせには最優先で、なるべく直接対応するようにしています。たとえば「離乳食のページがわかりにくい」というお問い合わせがありよく話を聞いてみると、実は「ワンオペ」への不安があったりして・・・。
米谷
「何か悩みはないですか?」と聞いて出てくる答えは、困りごとの本質とは違うことが多いんです。編集部では丁寧にお話を聞く時間をとり、本音をこぼしてくださる関係をつくれるようにしています。お問い合わせに対応すること自体が「取材」と考えています。
柏原
お問い合わせからヒントをいただくことも多いです。やりとりで拾えたリアルな声を編集会議に持ち寄り、企画に広げていく作業をしています。「たまひよ」のWebやアプリとも常に情報共有しているので、スピードが必要なテーマは先に発信してもらうなど、連携しています。
「ひよこクラブ」編集長の柏原。「読者の本音からヒントを得た企画が反響を呼ぶと、編集者にとっても喜びになり、次への原動力になります。」

育児を担うのはママとは限らない。
パパの育児参加、そして『チーム育児』へ

男性の育児参加が増えていると聞きます。読者像も変わっていますか。
柏原
パパの育児参加度合いが、ここ3~4年で大きく変化していると感じます。読者アンケートはパパからの回答が増えて、「一緒に読みました」とか「僕が雑誌を買いに行きました」など書かれていて、出産前後の育児を二人でやっていらっしゃることが見て取れますね。今は誌面での呼びかけも、ほとんどの企画で「ママとパパ」に変えています。
米谷
読者座談会にも、パパが参加してくださることが珍しくなくなりました。ママに言われたからではなく、ご自身が育児の当事者として意見を言いたいと。以前は、表紙にパパ・男性を出して違和感あるというお声をいただいたこともありましたが、今は当たり前のことになっていますね。
時代とともに、子育ての捉え方も変わってきたのですね。
柏原
パパだけでなく、少子化や共働きの増加といった環境のなか、祖父母も積極的に育児にかかわるケースが出てきています。またワンオペやシングルでの子育てなど、多様な家族のカタチがあります。そんななかで、「たまひよ」は『チーム育児』を掲げて、育児を担う人はママだけとは限らないという考え方をしています。まわりの人が何らかの関わりをもって子育てに参加する環境ができたらと。

もちろん、「たまひよ」もそのチームメンバーの一員です。単なる情報提供ツールではなく、いろんな問題提起や新しいムーブメントをつくっていき、読者や社会と繋がっていきたいですね。

読者と社会をつなぎながら、
いつの時代も妊娠・出産・育児に寄り添う雑誌でありたい

妊娠・出産・育児の領域は、社会の動きの影響を受けることも多いと思います。どのようなテーマに注目していますか。
米谷
男性の育児休業の推進やSDGs、LGBTQといったことなど、読者は社会の課題にも関心が高い方が多いので、さまざまな視点を持つよう意識しています。

今年は4月に「こども家庭庁」が発足しますが、さっそく取材させていただきました。そのような機会にはできるだけ読者の声をお伝えしたり、また、誌面企画に反映したりします。少子化が加速し、世の中の動きはいろいろありますが、社会の変化をポジティブに受け止めてよい流れをつくれるといいなと、そんな使命も感じています。
「たまひよ」の雑誌のこれからについて聞かせてください。
米谷
「たまひよ」のメディアの強みはお客さまを本当によく見ていることだと思います。創刊時からあるのは、「答えはママやパパたちの中にある」という編集部内の共通認識です。お客さまの課題の、本質のところを深堀りして、編集していくところは変わらないです。

ただ、時代が変わっても必要とされる雑誌であり続けるには、先を見ることも大事です。社会課題への視点もそうですが、2022年に行った、妊娠期、育児期をそれぞれ初期・中期・後期に分けて計6冊の雑誌にした新創刊時には、これから親になる「Z世代」にも意見を聞きました。彼らは時代をけん引していく世代でもあり、その考え方や志向を参考にしたことで、共働きやパパたちなど今の読者層にもより受け入れられた手ごたえがあります。

変えないことと時代に沿って変わること、両方の軸を持って進化し続けていきたいです。
米谷明子(Akiko YONEYA)
ベネッセコーポレーション
『たまごクラブ』『ひよこクラブ』統括編集長
『妊活たまごクラブ』編集長
妊娠・育児誌系の出版社を経て、2007年ベネッセコーポレーション入社。2009年より「たまひよ」の雑誌ディレクターを経て現職。ベネッセクリエイティブワークスの、たまひよ雑誌ムック制作局長も兼務する。
柏原杏子(Kyoko KASHIWABARA)
ベネッセクリエイティブワークス
『ひよこクラブ』編集長
関西地区で情報誌の編集に従事した後、「たまごクラブ」編集部へ。2019年より雑誌「ひよこクラブ」の編集長。
  • 「たまひよ」の雑誌は、2022年設立の新会社ベネッセクリエイティブワークスに編集部を置き、ベネッセコーポレーションの「たまひよ」事業部門と連携して企画制作しています。

撮影:デザインオフィス・キャン(2023年3月取材) ※ご紹介した情報、プロフィールは取材当時のものです。

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