取材レポート 2023-12-06

ウェルビーイングな社会に向けて、高校生が思い描く「人と人をつなぐ」場所

「全国高校生プレゼン甲子園」という大会があります。「テーマについて深く考察し、自分の考えや念い(おもい)を『伝える』ことで、論理的思考力、表現力、創造力等を養うとともに、互いの発表を通して、プレゼンテーションスキルの向上を図ること」を目的として毎年開催されており、2023年8月に3回目の決勝大会が開催されました。(HPはこちら)。

第3回大会でのテーマは「Well-being(ウェルビーイング)と未来社会-幸せとは何か-」。
高校生が考える「ウェルビーイング」とはどんなことなのでしょうか。私たちは、この大会で「最優秀賞」と「ベネッセコーポレーション賞」をダブル受賞した、奈良県立国際高等学校「Team GUM」に取材。大会でプレゼンされた「ウェルビーイング」実現に向けたアイデアが生まれた背景や思いを聞きました。

INDEX

身近な興味や地元愛から生まれた「ウェルビーイング」につながるアイデアを競い合う

第3回のプレゼン甲子園に応募したのは全国から手を挙げた616ものチーム。そのうち予選審査で選抜された10チームが、決勝大会で福井県に集結し、5分間のプレゼンと、審査員との質疑応答を行いました(決勝大会の様子はこちら)。
「Well-being(ウェルビーイング)と未来社会-幸せとは何か-」というテーマに対し、多様なアイデアでのプレゼンが展開されました。

<決勝大会でプレゼンされた提案> ※一部を紹介

その中で、「最優秀賞」と「ベネッセコーポレーション賞」をダブルで受賞した奈良県立国際高等学校「Team GUM」のプレゼンのタイトルは、「みんなで創る幸福のメカニズム」でした。ウェルビーイングを「日々の食事から幸せを見出すこと」と定義し、一人での食事である“孤食”と、誰かと共に食事をとる“共食”を比較。共食のほうが、肉体的、精神的、社会的に良い影響がありウェルビーイングにつながる。この考えを元に、共に食事ができる場・コミュニティとして「人と人とをつなぐ場所」である「With キッチン」を提案しました(決勝大会のプレゼン動画はこちら)。

「With キッチン」:共食を通じた「ウェルビーイング」の実現に向けて

大会が終わった後、秋を感じる10月下旬に、高台に建つ奈良県立国際高等学校に取材に伺いました。「Team GUM」のメンバーである後藤さん、植田さん、丸田さんは、高校3年生。中尾校長先生とともに笑顔で迎えてくれました。

左から、後藤美空さん、植田晴香さん、丸田杏都さん、中尾校長先生

プレゼンからもチームワークの良さが滲み出ていた3人は、英語部、E.S.S.の部活仲間。高校2年生の時には、県内のディベート大会で最優秀賞を受賞し絆を深めたそうです。

吹奏楽部の演奏が心地よく聞こえる教室で、取材をさせていただきました。

プレゼン大会のキーワードである「ウェルビーイング」について、3人はまず概念や定義を調べることから始めたそうです。自分たちにとっての「ウェルビーイング」って何だろう、と考えを進める中で、共通認識として持っていたのが、「食事は、国、世代に関係なく、誰もが幸せを得られるものである」ということ。そこからテーマが「食」に決まりました。

「食」といっても広いテーマ。そこから、「孤食」「共食」に注目した背景には、中学3年生から高校2年生にかけて、新型コロナウィルス感染症対策として黙食を行っていた影響が大きいそうです。
「高校に入り、いろんな場所で友達と会話をしながら食事をすることを楽しみにしていたのに、叶わない日々が続きました。」
コロナ禍が明け、友達と食事ができたときに嬉しさ、楽しさを実感したといいます。
「一人での食事に慣れてしまった状況も課題に感じています。一人での食事が当たり前になって、気付くとそれが3年も続いていたことに驚きました。」

また、それとは別の課題感も。
「年齢を重ねるにつれ、家族の生活時間帯が合わないことが多くなり、バラバラで食事をすることが増えました。家族での会話が減ったように感じます。」

コロナ禍を機に一人での食事が増え、それに慣れてしまったこと。家族で食卓を囲む時間がそろわないこと。いずれも日本だけではなく世界中で起こっている問題ではないかと考えました。

孤食よりも共食のほうが幸せやウェルビーイングのために良さそう、という漠然とした感覚はあったものの、その違いは何だろう?とデータを探しても、ぴったりとはまるものが見つからないという壁にぶつかったそうです。そこで、「実験をしよう!」自分たちで実際に孤食と共食を体験しながらデータをとることを思いつきます。

データをとる中でこういった事実がわかり、やはり共食のほうが、心にも体にも良いことを実感。
そこから、共食で得られる幸せをもっと広げたい。コミュニティをつくり、オンラインではない「場」を多くの人に提供したいと、「With キッチン」のアイデアへとつながりました。

左から、後藤さん、植田さん、丸田さん

彼女たちは現在、高校3年生という多忙な時期の中で、「With キッチン」の実現に向けて準備を進めているといいます。色々な人とコンタクトを取り、関係を築きながら教えてもらったり、後輩にもレクチャーという形でやりたいことや思いを伝えたりと、持続可能な活動となるよう仲間を増やしているそうです。

「いずれは、誰もが気軽に立ち寄れる、食の大切さ、幸せを再発見できる場にしていきたいです。」(植田さん)
「私たちのコミュニティが全国に広がり、孤食が当たり前になっていることが少しずつ減っていってほしいです。」(丸田さん)
「この活動を持続可能なものにしたい。活動を発信し続けて、日本中、世界にも共食の良さが広がると嬉しいです。」(後藤さん)

「ウェルビーイング」につながる活動を必ず形にし、広げていきたいというパッションを感じることができました。

大会までは、寝る時間を削って相談をしたり、前日まで修正を加えるほど工夫を重ねたり(プレゼン冒頭で登場する、伸びるラーメンの小道具は、前日に完成したそうです!)と、大変な日々があったとのこと。全国の高校生とともにプレゼン大会に挑んだ、この経験からどんなことを感じたのでしょうか。

「他のチームのプレゼンを聞いて、高校生には社会を変える力があると感じました。ここまで来られたことについて、チームの2人や先生方はじめ、支えてくれた皆さんには感謝しきれないほど。やはり、人の支えがあってこそだと感じています。」(後藤さん)
「『ウェルビーイング』という1つのテーマでも、様々なとらえ方があるのだと知り、『ウェルビーイング』は、どこにでも見つけられるものだと感じました。また、出場にあたり、大人の方々とやり取りをしながら準備をしてきたことが、貴重な社会経験となりました。」(植田さん)
「ほかのチームの熱量、伝え方の上手さに感銘を受けました。そして、大会に向けてチームで活動してきたことを通じて、これまで自分では気づいていなかった長所を見つけることができたとも感じています。」(丸田さん)

受賞したトロフィー、表彰状を手に

最後に、自分にとって「ウェルビーイング」とは何かを言葉にしてもらいました。
「一度の大きい幸せではなく、小さい幸せの積み重ね。積み重なってこそのウェルビーイングだと思います。」(丸田さん)
「学校に行ける、友人と過ごせる、など、今の自分にはありふれていることもよく考えたらウェルビーイング。日常の幸せを見つけること、だと思います。」(後藤さん)
「心の持ちよう、だと思います。どんなに幸せでもそれを当たり前ととらえるとウェルビーイングを自覚できない。1つ1つに焦点を当て、幸せと気づける。「実感する」ことがウェルビーイングだと思います。」(植田さん)

「ウェルビーイング」について漠然としたイメージだけだった状態から、わずか半年ほどで、人や社会の「ウェルビーイング」につながる具体的なアイデアを生み出し、その実現に向けて動き出している。その事実や、一人ひとりが語るしっかりとした言葉から、「ウェルビーイング」な社会やありたい未来に真剣に向き合い、歩みを進めようとしている力強さを感じました。
今回取材したのは1つのチームでしたが、参加した616チームにもこのように志を持った高校生がいると思うと、その情熱の総量はものすごいパワーであっただろうと、ワクワクします。

改めて、取材させていただいた「Team GUM」のみなさん、ありがとうございました。

「ベネッセ ウェルビーイングLab」は、これからもさまざま方にお話を伺い、ウェルビーイングへの気づきや思いのストーリーを発信していきます。