2026.04.24
AI時代に必要な自分で考える力を磨く、新たな学び体験を。「問いの島」キャンプin 直島・豊島
AIに聞けば、すぐに答えが返ってくる時代。人間に求められる力も大きく変わりつつあります。知識を覚えることや、正解にたどり着く速さだけではなく、これから必要になるのは物事の本質を捉えて自分なりの問いを生み出し、粘り強く考えていくこと。そのためにも、多様な視点に触れながら、自分の言葉で考えを深める体験の積み重ねがこれからの学びを形作る大切な要素となります。
ベネッセは、新年度を目前にした春休みの機会を利用し、これからの時代を生きる子ども達に必要な力を育む取り組みとして、瀬戸内海の直島と豊島での「問いの島」キャンプを実施しました。全国から集まった小中学生たちが参加し、刺激的な原体験を通じて得た自分だけの「問い」の記録をお届けします。
自然×アート×社会課題に触れて島を巡り、自分なりの「問い」を見つける2日間
今では世界中から多くの人が訪れ、「アートの島」として知られるようになった瀬戸内海に浮かぶ小さな島、直島。そして、日本最大級の産業廃棄物の不法投棄事件で傷んだ過去をもちながら、島本来の美しい姿を取り戻すための長きにわたる挑戦が繰り広げられてきた島、豊島。自然豊かな日本の原風景を残しながら、現代アートが点在し、その背景に様々な地域課題や社会課題が交錯する2つの島が今回の「問いの島」キャンプの舞台です。
春休みに入ったばかりの2026年3月26日。応募者の中から抽選で選ばれた、北は青森から南は大分まで全国から集まった「進研ゼミ」を受講している小中学生7名が岡山駅に集結。最初の目的地である直島へと向かいました。
1日目:直島 ~島に息づく文化を感じ、多様な現代アート作品に触れる~
直島に到着してからは、イントロダクションとしてみんなで砂浜に座りながらしばし自然や海に触れた後で、美術館へ。
「ベネッセハウスミュージアム」では、同じ作品を見ながらそれぞれの視点での捉え方を共有する「ベネッセアートサイト直島」の対話型鑑賞を体験しました。
その後は、島の中を散策へ。本村地区に点在する、かつて実際に使われていた家屋や建物の記憶と歴史を紡ぎながら、現代アートを介して空間そのものを新たに蘇らせた「家プロジェクト」の作品を鑑賞します。
さらに、昨年5月に開館したばかりの「直島新美術館」では、アジアのアーティスト達による未来への眼差しや力強いメッセージを感じられるたくさんの作品にふれた後、フェリーに乗って次なる目的地の豊島へと向かいます。一日を締めくくる夜には今日見つけた問いを持ち寄りあい、豊島に住む住民の方を交えた夕飯や全国から集まった仲間同士の交流も楽しみ、充実した初日が終了しました。
2日目:豊島 ~社会課題の実態にふれ、自分と向き合う~
2日目の豊島では、かつてこの島を揺るがした産業廃棄物の不法投棄事件の跡地を訪れるプログラムからスタート。総量90万トンを超える廃棄物が撤去された後に残った広大な跡地を目の当たりにし、この事件に島民として向き合い、住民運動を率いてきたリーダーの一人でもある石井亨さん(廃棄物対策豊島住民会議)からは、島で起こった実際の出来事と、豊かで美しいふるさとをなんとしても守るために。強い思いからなる、人々の選択や行動についてお話をいただきました。
その後は、清らかな湧き水に触れたり、休耕田が整備され美しい棚田が広がる景色を見たりして、再生への挑戦が続く豊島の今の姿を目に焼き付けます。体験のクライマックスとして訪れたのは瀬戸内海を望む小高い丘に佇む「豊島美術館」。自然と建築とアートが一体となった空間に身を置きながら、これまでの体験を振り返りつつ思い思いに自分と向き合う時間を過ごし、すべてのプログラムが終了しました。
体験の後に残った、それぞれの「問い」と成長
2日にわたる強烈な体験の後に、参加した子ども達に残った「自分だけの問い」とは。
キャンプの締めくくりとして行われた最終のワークショップでは7人それぞれに自分の中に芽生えたキーワードを言葉で伝えあいました。
- 【最終ワークショップでの発表から】
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- 2日を振り返って考えたのは「想像と創造」という言葉です。アートを見ながら考える「想像」と、アート作品を作ったり何かを生み出そうとする「創造」。この2つをこれから学校や社会に出た時にも大切にしていきたいし、自分の考えたものを形にしていくことが、これからは大事だと思いました。
- 豊島の不法投棄の事件のお話を聞いて、なぜこんなことが起きたのか。どうしてゴミを捨ててしまったのかをすごく不思議に感じました。今でも活動が続いていることを知って、もっと知りたいと感じたし、ここで色々なことを「不思議」と思った気持ちを忘れないで学んでいきたいです。
- 豊島にきて最初はとても綺麗な場所に見えましたが、ここで起きたことや現実を知り、当時の状況を想像しました。そして「豊かな島を取り戻す」ために島の方々が運動を続けたことで、今の景色を自分たちの手で作り上げてきた。「創造」してきたことに感銘を受けたし、歴史を知ることで今の美しさの価値をより深く考えることができました。
- 豊島事件の話を聞いて、衝撃を受けました。島が今、普通に綺麗で、平穏に過ごせているように見えるのは、決して「当たり前」のことではない。島の方々が自分たちの生活を守るために戦ってきた歴史があるからだ、ということを学びました。
- 「当たり前は当たり前じゃない」。直島のアートも、豊島の自然も、誰かの思いや行動があって、守られ、作られてきたものです。その「当たり前じゃない今」を大切にしたいし、自分に何ができるかを考え続けていきたいと思いました。
- 豊島美術館で水をじっくり観察したり、考えたりしてみると、今まで気づかなかった新しい発見がたくさんありました。普段の生活で「当たり前」だと思っていることも、よく見てみることで、もっと世界が深く分かるようになるんだ、と気づきました。
- たくさんの現代アートを見て、最初は「何だこれ?」と思うようなものもありました。でも、作品の背景にある物語を知ったり、自分なりに問いを立てて対話したりしていくことで、作者が本当に伝えたかったことや、社会の課題といった「本質」に少しずつ近づける感覚がありました。問いを持って理解しようとすることで、世界がよりよく見える。これからも、「本質」を考えることを大切にしていきたいです。
- 2日間の体験を通して、何気なく見ているものに対しても、意識して問いを持つようにすると、今まで見られなかった景色が見えてきました。次はどんな問いが出てくるんだろう、とワクワクする気持ちも生まれました。直島や豊島で、自分でも数えきれないくらいの問いを見つけることができ、とても濃い時間が過ごせました。
当たり前は当たり前じゃない、問いを意識して考える、そして行動することで見えてくる景色や世界がある――こうした数々の言葉からは、日常から離れた島へと足を運び、現地に根付く文化や自然、アート、そして多様な人との交流という濃密な体験を経たからこそ得られた気づきや深い思考があったことが窺われ、一人ひとり自分の言葉で発表する姿に大きな成長も感じられた瞬間でした。
ベネッセが直島でアート活動に取り組み始めてから、およそ40年。「問いの島」キャンプは、その長い歩みの上に生まれた、アートと教育との融合による新しい学びの試みの一つです。
AIが台頭していく時代だからこそ、自分なりの問いを立て、考える力が子どもたちの未来を支えることを願って。これからも、ベネッセは直島をはじめとする場のもつ力、アートを活用した様々な学びや体験をお届けしていきます。
関連リンク
- ベネッセアートサイト直島
- https://benesse-artsite.jp/