より質の高い教育の提供は、日本のみならず世界の国々の重要なテーマ。ベネッセグループには海外で「子どもの教育」と向き合い、事業に取り組む社員がいます。約10年に渡りインドネシアの現地法人で働く鈴木達之助に聞きました。

PT. BENESSE INDONESIA シンケンジュク事業部 鈴木 達之助(すずき たつのすけ)

1999年ベネッセコーポレーション入社。<こどもちゃれんじEnglish>、<World Wide Kids>など英語教材の編集を経験したのち、2012年に社内公募でインドネシアに赴任。<進研ゼミ>教材を使用して子どもたちに算数を教える塾事業<Shinkenjuku>に立ち上げより従事。

手を上げて海外赴任。しかし、一人では何もできないことを痛感

もともと海外志向があったわけではありません。転機になったのは2011年に教具作りに関する研修をするために中国の現地法人を訪れた時です。現地の若い編集者のみなさんが子どもたちのためによい教具を作りたいと、どん欲に知識を吸収しようとする姿に感銘を受けました。言葉や文化は違っても、同じベネッセの仲間が子どもたちのために一生懸命になっている姿を目の当たりにして、自分も海外展開に貢献したいと思い始めました。そして翌年、社内公募でインドネシアに赴任しました。

現地に赴き改めて痛感したのは、日本では「ベネッセ」の存在は知られているのが前提で、先輩方が培ってきた知識・経験、社内外含め多くのつながりがある中で仕事をしていたということ。頭ではわかっていたのですが、いざ実際自分で動いてみると、教材の印刷会社を探す、塾の物件を探す、先生を募集する、会社設立のための許認可をとるなど、数えきれないくらい『一人ではできない』ことのオンパレードでした。

そんな日々を過ごす中で、何より必要だったのは『仲間を募る』こと。とまどっているときに「こうやればいいよ」「インドネシアではこうするんだよ」と助言をくれたりサポートしてくれる仲間を探し、つながりを広め、深めていくことが、とても大切だと気づかされました。

PT. BENESSE INDONESIAスタッフと共に(2019年4月)

子どもたちが成長していく姿と、現地スタッフがそれをうれしそうに話してくれるのが何よりのはげみ

仕事でうれしいのは、<Shinkenjuku>に通う子どもたちと触れ合い、入塾前の無料体験会の段階から一人ひとりの成長を継続的に目の当たりにできること。子どもたちが力強く成長していく姿は何よりのはげみになります。

ある時、こんなことがありました。自分から<Shinkenjuku>に通いたいと希望され、教室に来てくれたお子さんがいらっしゃいました。お母さまに話を伺うと、その子は内気で、運動も不得意、友だちとうまくコミュニケーションを取れず、学校でも自信がない様子だと。でも、塾に通ううちに算数が得意になり、友だちの中で一目置かれるようになってきました。そうすると今までうまく話せなかった友だちともどんどん話せるようになり、自信がついて性格も明るくなっていきました。本人からもお母さまからも、生き生きとした様子をたくさん聞かせていただきました。

子どもたちが成長していくのを見守ることに幸せを感じていますし、今は、各拠点の現地スタッフがうれしそうに生徒の成長ストーリーを語ってくれるのを聞くのが、何よりの楽しみです。

教室という現場のある事業なので、大小含め日々様々な課題が発生します。最初は私を含めた駐在員が考え、指示していましたが、今では数十人に増えた現場スタッフが、自ら考えて行動してくれるようになっています。個別のできごとに答えを求めるのではなく、<Shinkenjuku>は何を大切にし、どう考えるのかという根幹が現場に浸透し、想いの共通化ができてきたことも、うれしいことのひとつです。

「インドネシアの魅力は何といっても子どもたちの笑顔! キラキラした目が、この国の未来の希望そのものです」(鈴木)

文化や習慣が異なっても、「よく生きる」ことの大切さは世界共通

<Shinkenjuku>事業を開始して5年。愛してやまない子どもたちの笑顔を見守り続けるためにも、継続して利益を出せる事業として確立することは今後の目標の大前提です。その想いの源流となるのはベネッセの企業理念「よく生きる」。ここインドネシアでも多くの方に共感いただいています。文化や習慣、宗教が異なっていても、人間にとって「よく生きる」ことの大切さは共通だと思うのです。

世界中の保護者の方々、学校の先生、社会が、その地の子どもたちに対して「希望」を持っています。その希望を叶えるお手伝いをし、その想いに賛同してくれる仲間を増やして、誰かのために応援し、力になれることを探し続ける。それが私自身の大きな目標です。

※本記事は、ベネッセグループ社内サイトに掲載された「Benesse Mind」(2019年4月号)を再構成したもので、所属・写真は取材時のものです。