Benesse 「よく生きる」

EPISODE 人と社会の
「Benesse(よく生きる)」
をめざして

保護者と先生をつなぐデジタルツールtetoruがめざす、子どもを育む環境づくり
デジタル保護者学校教育社会課題

Classi株式会社(ベネッセグループ)

左:小中事業開発部プロダクトマネージャー 米谷和馬

右:プロダクトデザイン本部 UXデザイン部 UXデザイナー 原田紘子 

ベネッセグループのClassi(クラッシー)が開発した小中学校向け保護者連絡サービス「tetoru(テトル)」は、デジタルを活用して保護者と学校との連絡をスムーズにし、子どもを育む環境をよりよくしていきたいというコミュニケーションサービスです。わかりやすくシンプルな機能を無料で提供し、全国約1000校で活用されています(2022年11月)。保護者としての実体験からサービスを立ち上げたという責任者・米谷と、だれもがラクに使える仕組みづくりにこだわる原田に話を聞きました。

保護者として実感した連絡ツールの不便さ。
デジタルサービスの開発で解消できればと

「tetoru」の開発は、米谷さんが保護者として感じた困りごとがきっかけだったそうですね。
米谷
テクノロジーを活用した教育プラットフォームの開発・運営を行うClassiが、保護者向けサービスを考え始めた当時、私も小学生の保護者でした。

実は子どもが幼稚園の頃、途中からアプリが導入されていろいろと便利になり、まわりの保護者たちも大喜びだったんです。それまで電話をかけるのが手間だったのにアプリで連絡できる、と。ところが小学校に入るとデジタル環境が未整備で、幼稚園との大きなギャップがありました。せっかく教育に関わる仕事をしているのだから、学校に向けてやれることがないだろうかと、チームを組んで議論を重ねながらサービス開発に取り組みました。
保護者の利便性だけでなく、先生の業務負荷軽減も目的としたサービスですね。
米谷
全国800自治体の教育関係者に学校と保護者の情報共有がどのように行われているかを調査するなど、連絡手段の課題を学校・先生の視点からも洗い出しました。その結果、デジタルを導入していない方々からは「情報が行き届いているか不安」、「伝達速度が遅い」といった困りごとや、既存のデジタルツール利用者からは「資料が添付できない」、「広告が出てきて操作しにくい」などが上がってきました。先生の長時間労働は社会課題とも言われるなか、ご提供するサービスで手間や不安を解消し、業務効率を上げて負担軽減につながればと。ここは重要なポイントでした。
「tetoru」ホームページより。グループ会社の株式会社EDUCOM(エデュコム)と共同開発を行っている。

こだわったのは、シンプルにまとめた機能と
デジタルに強くなくても使える画面デザイン

2022年4月からサービスの提供が始まりました。そこまでの開発で大変だったことは?
原田
いちばん衝撃的だったのは、テスト版を使っていただく学校に、メールを使える環境がなかったことです。ちょうどコロナ禍で、ネットのサービスやデジタル活用が一気に進んだ時期だったので大丈夫だろうと思い、学校のメールアドレスを使って先生にログインしていただく仕組みにしていました。ところがまさかの展開で、大きな変更が生じてしまい・・・。そういった想定外のこともいくつか乗り越え、2年間かけて本番リリースとなりました。
サービス構成や画面デザインでとくに工夫している点を教えてください。
原田
ひとつは、シンプルな機能に徹することですね。新しいツールで先生方の手間が増えてしまうのでは、受け入れていただけません。それとテスト版の試行で、ICTリテラシーが高い方ばかりではないとわかったので、デジタルに強くなくても触ったらなんとなくわかる・操作できそうに思えること、間違ってもすぐに戻れることなど、直感でも進めていける工夫にはすごくこだわっています。また、社内の保護者社員たちにも使ってもらい、当事者としての声を聞きながら改善を続けています。
米谷
教育系のシステムは往々にして、さまざまなご要望をいただきそれに応えようとします。その際に、ご要望をいかに吸収し、かつシンプルにまとめるかは、とくに意識する必要があります。学校や自治体にサービスをご紹介するときに操作画面を見ていただくのですが、ひと目で内容を理解し「いいね」と言っていただけるのは、そういった工夫の結果だと受け止めています。
保護者用の画面見本。「tetoru」が導入されている学校であれば、子どもたちが異なる学校に通っていても保護者は一つのアカウントの同じ画面上から、それぞれの学校とつながれる。

子どもを育む環境がより良いものになるように。
伝えあう、通じあう、手をとりあう。「tetoru」

「tetoru(テトル)」という呼び名は、チーム全員の熱い思いを込めたと聞きました。
原田
はい! ラクに負荷なく伝えあって、気持ちが通じあえば、保護者と学校・先生の信頼関係を築けるコミュニケーションが生まれるはず。子どもを取り巻くみんなで手をとりあって、子どもの成長を見守ろうというメッセージを込めています。

これはサービス名とロゴを検討するプロジェクトによって、思いをぎゅっとひとつに固めることができた結果です。共同開発の仲間であるEDUCOMからもプロジェクトに参加していただき、名前に込めたい思いを熱く語り尽くしたのです。各社の立場から譲れない点もあったのですが、共通項を模索しながら、納得いくものに行き着きました。
実際に使っていただいた方からの反応はどうですか。
原田
アプリのレビューでは、便利さに関するコメントが多いようです。利用者へのアンケートを見ると、学校や教育委員会からは「機能がシンプルでわかりやすい」、「朝の欠席連絡の電話が大幅に減ったため、働き方改革につながっている」といった評価をいただいています。また保護者からは、「直接連絡がもらえるのはとても助かる」、「学校の様子も随時写真付きで教えてもらえる」、「いつでも欠席連絡ができる」、「スマートフォン操作が苦手な人でも、精神的負担がなく、すぐにできる」などの感想をいただいています。保護者の方がこのサービスを知って、学校に導入を提案されたケースもあるようです。
「tetoru」がこれからめざすところを聞かせてください。
原田
先生と保護者が負担なくラクにつながっていただきたい。手と手をとりあって、子どものことをちゃんと見守ることに時間と心を使っていただきたいという軸は、ずっとぶらさずにいきたいです。そういう未来になったらいいなというのが、いちばんの思いです。
米谷
保護者に、「学校が見える」情報を届けるサービスにしたいですね。これも自分の体験からですが、コロナ禍で子どもがオンライン授業を受けているのを見て、「この先生、すごく授業が上手だな」とか「こういうふうに子どものやる気を上げているんだ」とわかり、学校への信頼感がわきました。そういった機会が日常的にあり「つながりの好循環」が生まれていく仕組みが、「tetoru」ならできるんじゃないかと思っています。
ただ便利なだけではない、コミュニケーションの場をつくる役割ですね。
米谷
そうですね。現在の無料サービスは全国でより広く使っていただきながら、さらに保護者に必要とされる付加価値を有料でご提供するといった事業構造を描いています。

子どもの学びも学力だけで判断される世界から変わってきていますから、学校が楽しく前向きに学べる場所になるための過程を支援できたらうれしいです。
米谷和馬(Kazuma YONETANI)
UXデザイナー/ディレクターとして大手企業の新規プロダクト開発やUXデザイン組織の立ち上げ支援などに従事。並行して2015年よりClassiにてUXデザインのアドバイザーを経て、2019年に1人目のプロダクトマネージャーとして入社。現在は小中学校向けの保護者連絡サービス「tetoru」のプロダクトマネージャーを務める。
原田紘子(Hiroko HARADA)
デジタルマーケティング会社の営業、UXデザイナーを経て2020年2月にClassiへ。「tetoru」の開発立ち上げから関わり、UXリサーチ、プロダクト体験設計、ブランドマネジメントなどデザインに関する多岐に及ぶ業務をデザインリードとして担う。

社員撮影:デザインオフィス・キャン(2022年11月取材) ※ご紹介した情報、プロフィールは取材当時のものです。

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