Benesse 「よく生きる」

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Co-Creation 共創で拓く未来 「自治体✖️ベネッセ」で挑んだ、地元企業と求職者をマッチングする「“学ぶ"と"働く"をつなぐ」新たな仕組み

自治体とベネッセで切り開く、
地元で「"学ぶ"と"働く"をつなぐ」新たな仕組み

自社の枠を超え、同じ志をもつ皆さまと取り組む新しい動きをご紹介
ベネッセコーポレーションの「社会人の学びに関する意識調査2022 ※注1」によると、国内社会人の41.3%は学びに無関心(社会人になって以降、学習したことがなく、今後1年以内にも学習するつもりがないと回答)で、そのうち「仕事で必要になれば学ぶ」という人が37.5%という結果があります。社会・市場の変化に対応するため働く人の「リスキリング」の必要性は高まっている状況ですが、学ぶことがキャリアアップや昇給などの実利につながると実感できず、意欲を妨げる一因になっているとも考えられます(同調査分析より)。

この状況を変えていこうと、ベネッセグループでは「"学ぶ"と"働く"をつなぐ」をコンセプトとした新たな社会人教育プログラムの提供を始めています。なかでも<Udemy(ユーデミー)注2>事業を中核とした第1弾が、2022年10月~2023年3月に行われた奈良県の「雇用予定型リカレント教育事業」の企画・運営の受託です。

教育を起点に、自治体とともに地域の雇用・就労の新しい仕組みを創り出す取り組みをご紹介します。
取材協力
奈良県 産業・観光・雇用振興部 雇用政策課 課長補佐 糸谷佳訓(いとたに・よしのり)氏
ベネッセコーポレーション 社会人教育事業本部 事業開発課 課長 行政/大学・専門学校向けUdemy事業責任者 大宮千絵(おおみや・ちえ)

奈良県の「雇用予定型リカレント教育事業」について

企業が求めるスキル・人物像をあらかじめ明確にした上で、それに応じて求職者が1か月間のオンライン研修と2か月間の職場実習を行った。求職者には、この間も給与が支給された。このような仕組みを導入することで、金銭的な課題を感じずにリスキリングに挑戦できる人を増やすとともに、求職者の就職と業務での活躍を支援した。本事業において、ベネッセは、事業全体の企画・運営と、スキル習得のためのオンライン学習ツール<Udemy Business(ユーデミー ビジネス)>を活用した支援を提供した。
対象者: 奈良県内企業への就職を希望する県内在住者 定員10名
プログラム期間: 2022年10月1日~2023年3月31日

※本事業は、株式会社ベネッセコーポレーションが奈良県から受託し、マンパワーグループ株式会社と共同実施。

ープログラムの主な流れー

01 企業の求めるスキルを持つ人材を育成し、県内での就職につなげたい

まず、今回の「雇用予定型リカレント教育事業」の背景にある奈良県の雇用・就業に関する課題を伺えればと思います。
奈良県 糸谷氏
コロナ禍をはじめとする厳しい雇用情勢の中、県内企業のDXの推進など、新たな企業課題が出てきています。また、県内在住の求職者でも、大阪府などを中心に県外の企業に就職するケースが多いという、以前からの課題もあります。

従来の職業訓練においても一定の訓練を受講し、個々に就職活動を行いますが、求職者が受けた訓練内容と企業が求めている人材・スキルが一致しないこともあり、必ずしも就職に結びつかないことがあります。

そこで着目したのが、「雇用予定型リカレント教育事業」です。この仕組みを活用することで企業が求める人材と求職者のスキルのマッチングがしやすくなり、就業機会の創出につなげることができると考えたのです。
奈良県 産業・観光・雇用振興部 雇用政策課 課長補佐 糸谷佳訓氏
地元企業への就職につながりやすい「リスキリング」支援ですね。ベネッセではこの主旨をどのように受け止めましたか。
ベネッセ 大宮
雇用とリスキリングは、私たちの生活に直結する社会課題となっています。ベネッセコーポレーションは教育を起点にしているので、そこから課題の解決に取り組みたい、「学ぶことが働くことに繋がる仕組み」を創りたいと、ずっと考えていました。そんなときに奈良県様の事業委託先募集を知り、同じ思いをお持ちだと感じました。そこで、これまでの職業訓練とは異なる方法でもっと実務に紐づくスキルアップ支援に挑戦させていただきたいと、ご提案したのです。
ベネッセコーポレーション 社会人教育事業本部 事業開発課 課長 行政/大学・専門学校向けUdemy事業責任者 大宮千絵

02 新たな仕組みのカギは、求人企業・求職者との丁寧なコミュニケーション

ベネッセからは<Udemy Business>による1か月間のオンライン研修をご提供しましたが、今回の目的に沿って工夫した点はありますか。
ベネッセ 大宮
就労という目的があるとはいえ、一人で勉強を続けるのは大変です。参加者のモチベーションが下がらない工夫をいろいろと行いました。たとえば全員が顔を出してのオンライン朝会を毎日やり、「きょう一日頑張りましょう!」と声かけしたりもしましたね。

最初はみなさん緊張していたものの、学んだ成果や個人的にやっているスキルアップについて話が弾むようになり、だんだんと仲間意識が生まれていきました。10名全員が研修を完了してくださったのですが、そういうコミュニケーションも気持ちの後押しになったのではないかと思います。
採用する側である企業の方々へのサポートは?
ベネッセ 大宮
「こういう人材が欲しい」というお話を伺い、それを具体的に可視化するお手伝いをしました。たとえば「エンジニアが欲しい」といってもさまざまで、どういったスキルを求めておられるかを明確にするプロセスが必要でした。共同で携わっていただいたマンパワーさんとも検討しながら、地元企業様が求める人材要件や、そこに必要とされるスキルの整理をしていきました。
奈良県 糸谷氏
県としても初めて実施する事業で、想定していなかった課題が生じることも多々ありましたが、ベネッセの担当の方に熱意を持って取り組んでいただき、常に前向きなご提案をいただいていました。

ベネッセさんは、教育関連のコンテンツ提供のイメージが強かったのですが、企業の開拓や求人募集などに関しても、さまざまな部門がチームとなって参画してくださったことは、新たな発見です。
ベネッセ 大宮
私たちも、県庁のみなさんが県民のためにどう役立つかを考え抜いていらっしゃることを、日々実感していました。スタート時に、この事業のホームページを立ち上げたのですが、応募者を集めるアイデアをあれこれ練っているときに、「それなら県のホームページで告知しましょう。ほかにも発信ツールがあるので活用しましょう」と、一緒にご検討くださいました。地元での就労の新しいかたちを目指し、一緒に取り組ませていただいていることに、ワクワクしましたね。

03 キャリア選択は人生を変える大事なテーマであることを忘れず、次のステップへ

22年度の事業は3月に終了しましたが、結果はいかがですか。
奈良県 糸谷氏
多くのご応募のなかから選考した10名に研修を受けていただき、職場実習を経て、4名が正規雇用となりました。この方々は就職後も意欲的に就労されているそうで、うれしく思っています。また、県内の多くの企業様にご参画いただき、概ね好評であったことには手応えを感じています。

6名の方がミスマッチとなったことに関しては、初めての取り組みということもあり、当初想定していなかった課題が生じていました。今後は、その要因を分析し、より多くの方が本事業を通じて正規雇用で就職できるよう、努めていきたいと考えております。
ベネッセ 大宮
今回よかったのは、就職につながるプロセスをきちんと作ったうえで実施できたことです。ある参加者の方は、「今までは、勉強をしても就職につながるのだろうかと迷いがあったけど、この仕組みなら学びと就職がつながるかもしれないと思えた」と話されていました。実際この方は、就職することができました。

うまくマッチしなかったケースもありましたが、知識や技術のレベルだけではなく、ヒューマンスキルや社風にマッチするかなどさまざまな要素が交わったうえでの就職なので、職場実習での現場体験は非常に好評でした。さらに課題を解決しながらより良い仕組みを開発していきたいと思います。

キャリア選択は「お一人おひとりの人生を大きく変える大事なテーマ」であること、それを忘れずにやっていきたいです。
今後の取り組みについて、それぞれお聞かせください。
奈良県 糸谷氏
奈良県では2023年度も同事業の実施を予定しています。具体的には、参加企業数を増やすことはもちろんですが、求職者に就職先の選択の幅が広がるように、企業が奈良県内の特定の地域に偏ったり、特定のコースに偏ったりしないように多種多様な業種・職種や立地条件等、県内のさまざまな企業に参加してもらうようにしていきたいです。次は定員の拡大も予定しています。
ベネッセ 大宮
スキルがなく就職をあきらめたり、収入を上げていくことが難しいという話をよく聞きます。“学ぶこと”と“はたらくこと”が少しでも繋がるように道筋を描いていきたいと考えています。

収入を得るというだけではなく、その人の「よく生きる(Benesse)」人生を実現するために、どういったサポートができるのか。そういった観点も追究したうえで事業を展開していきたいですね。
最後に糸谷さんから、自治体のお立場からベネッセに期待することをお聞かせください。
奈良県 糸谷氏
教育関連企業としての実績を残されていますので、学び直しという観点からも、地域社会が求める人材を育成するために必要な知識・技能を身につける、充実した学習コンテンツを提供していただくことを期待しています。
注1「社会人の学びに関する意識調査2022」18~64歳の学生を除く社会人に学習状況を調査した。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001055.000000120.html
注2 <行政・自治体向けUdemy>について
https://www.benesse.co.jp/udemy/government/

※内容、プロフィールは2023年4月取材当時のものです。

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