大学生・社会人向け
ベネッセの英語4技能検定

社会人・大学生向け「GTEC」
導入事例

CEFRを軸とした目的意識と成長実感を伴う学習支援

明海大学 ホスピタリティ・ツーリズム学部
甲南女子大学
国際学部国際英語学科 教授
梅原 大輔 先生

導入目的

  • 学生に自身のCEFRレベルの到達度を意識させるため
  • クラス分けをより細かく、高い精度に変えるため

より強く、学生にCEFRを意識させたい

国際学部国際英語学科は2020年に、文学部英語文化学科を発展させる形で新設された学部・学科です。英語文化学科の時代からアセスメントテスト自体は行っていたのですが、一つ大きな課題がありました。

もともと英語文化学科では、アセスメントテストの結果を、習熟度を評価して科目ごとのクラス分けに活用するだけでなく、CEFRレベルと対応づけて何ができるかを意識させようとしていました。しかし、予算や実施上の都合もあって、実施できていたのは2技能のアセスメントテストでした。その結果、いざ実施しても、学生はアセスメントテストのスコアばかりに目を向けがちで、本来意識してほしいCEFRのレベルやそれに紐付けられたCan-doに目を向ける学生は多くありませんでした。

テストのスコアを上げることはもちろん大切です。しかし、そのスコアが何を意味しているのかを理解できる学生はそう多くありません。だからこそCEFRとそのCan-doを意識し、「何ができるようになったか」「これから何をできるようになりたいか」を考えてほしかったのです。

新学科の設立にあたって、なんとしてもこの課題は解決したい。そう考えていたときに「GTEC」Academic の情報を聞きました。CEFRに意識を向けさせるため、カリキュラムの変更と同時に、アセスメントテストを2技能から4技能へとアップデートすることを検討し始めました。問題の難度が本学の学生層にマッチしていて、かつ費用的に実施しやすく、何より4技能を測れる「GTEC」Academic。2回のトライアルを経て、学科内での合意もまとめることができました。

一人ひとりの自律した学習を支えるために

国際英語学科では入学前と2年次までの各学期末に、「GTEC」Academicを全学生が受検します。学内で活用するのはそのスコアだけでなく、換算されたCEFRのレベルも含みます。このレベルによって、大学生活後半の語学のクラスや履修できる科目が変わることになっています。

私たちが学生に期待しているのは、CEFRのレベルを見て「何ができるようになったのか」を考え、「何ができるようになりたいのか」、自分で目標を立てて学習していくことです。ただ、それを一人で考えるのは難しい。そのため様々な方法で学生が自律して学んでいくことを支援しています。例えば1年次に配布する「English Learning Passport(ELP)」というノートには、CEFRのCan-doがまとめられていて、今の自分の立ち位置をいつでも確認できるようになっています。またELPとセットで「Study log」というノートも配布しています。こちらは英語の学習履歴をまとめるノートで、教員にフィードバックをもらいながら、何をどのように学んでいくか考えるきっかけを与えています。そのほか、英語の学習法を個人・グループで考える科目「英語チュータリング」や、英語学習に特化したラーニング・コモンズ「e-space」など、学生が主体的に学ぶための支援をできる限り用意しました。

2020年度のアセスメントテストは、入学前と前期末分の2回が実施済みです。まだ2回ではありますが、既に得られたものもあります。一つは学生の能力の傾向の把握。本学科においては、Readingのスコアが低い学生は他の技能のスコアも低いようでした。また1年生ということもあって、全体的にSpeakingのスコアが低い点も特徴的でした。今後、こうした傾向より明らかになっていけば、学科全体の指導も個別の指導も充実していくはずです。

また、クラス分けの精度が向上したことも大きな収穫でした。これまでは2技能のアセスメントテストのトータルのスコアでクラス分けを考えていたのですが、アセスメントテストが4技能にアップデートされたことで、SpeakingのクラスであればSpeakingのスコアでクラス分けを行うことが可能になりました。本学のような中堅大学は特にですが、学生のスキルが多様であることから、一人ひとりの学生に寄り添った指導をし、科目を提供してくことが重要になります。その意味で、きめ細かなクラス分けができるようになったのは非常に意義があることでした。今後も「GTEC」Academicを継続して実施し、CEFRに関する取り組み、そして個々の学生に対する支援を活性化させていければと思います。

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外部試験・CEFRを潤滑油に高・大・社の接続をめざす

明海大学 ホスピタリティ・ツーリズム学部
明海大学
ホスピタリティ・ツーリズム学部 教授
三輪 祥宏 先生

導入目的

  • 進級要件を補完する学内試験として
  • 刷新したカリキュラムの教育効果を検証するため
  • 学生への個別指導を充実させるため

入り口と出口に合った英語教育へ

本学部はホスピタリティ・ツーリズム産業で活躍する人材を育成する学部です。特に英語教育に力を入れており、2005年度の学部開設以来、ReadingとListeningの2技能を測る外部試験を進級要件にするなど、様々な取り組みを行ってきました。しかし、近年、大学や学生を取り巻く環境にいくつかの変化がありました。

一つは高校の英語教育と入試の4技能化です。高校の英語教育が変わり、入試も4技能へと変わりつつある中、学内の英語教育を2技能で行い続けるのには違和感がありました。次に、学生の就職先、つまりホスピタリティ・ツーリズム産業の変化です。グローバル化が進み、以前に増して訪日外国人観光客が増えたことで、ホスピタリティ・ツーリズム産業では英語の「発信力」が重視されるようになってきています。つまり、大学の入口でも出口でも、2技能ではなく4技能の力が重視されるようになっていました。

こうした変化に合わせて、本学の英語教育も4技能を軸としたものへとアップデートする必要がありました。そのために、まず進級要件について、特定の外部試験のスコアではなく、より大枠のCEFRを基準としたものへと変更しました。従来の評価手法であった2技能外部試験のスコアを進級要件にしてしまうと、学生はその試験の勉強しかしません。進級要件はあくまで技能の習熟を図るためのものですから、どの試験を受けるかは学生に任せ、縛りをゆるくした方がよいだろうと考えたのです。

進級要件を補完しつつ、教学改革にも生かす

前述の通り、進級要件を満たすために、どの外部試験を受検するかは学生に任せています。しかし、すべての学生が公開テストのみで十分なスコアを獲得できるとは限りません。そのため学内で行う外部試験も、依然として必要であり、かつ、4技能に対応しなければなりませんでした。

学内で実施できる4技能の外部試験として、候補に上がったのが「GTEC」Academicでした。これにはいくつか理由があります。

1つは高校時代に受検したことのある学生が多いことです。英語の能力以前の問題として、試験の形式に慣れないと点数が伸びない学生が一定数いたことから、英語の能力を純粋に測るためにも、重要な観点でした。

次に、フィードバック性の高さです。学生個人、大学ともにデータの提供に関して充実しており、とくに学生向けのスコアレポートがよくまとめられていて、学生が使うにも、教員が指導に使うにも、使い勝手のいいものだと感じました。

3つ目に、試験時間の短さが挙げられます。CBT形式の試験を学内で行う場合、あまり試験時間が長いと1日に受検できる学生の数が限られてしまいます。1学年に200人の学生がいることを考えると、試験時間は可能な限り短くないと、実施上の効率に影響するだろうと考えました。そのほか、検定料が低額であることなども採用の理由になりますね。

進級要件の変更と同時に、カリキュラムも4技能に関連した科目を増やすなど、大きく手を入れました。今後はそのカリキュラムの効果検証や、各学生への個別指導にも、「GTEC」Academicの受検データを活用していく予定です。また学生には、自身の英語4技能力の証明を単位認定のためだけではなく、就職活動時にもアピールして欲しいと思っています。ベネッセiキャリアは、検定試験だけでなく、ポートフォリオ型就活支援サービス(dodaキャンパス)も学生向けに提供していると聞いています。学部の特性上、どうしても特定の業界しか目に入らない学生が多いので、自身の英語力がどんな企業・業界に通用するのか意識できるようになれば、学生の就職活動ももっと充実していくでしょう。活用の幅は広いように感じています。

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英語教育による地域貢献を推進する原動力

松本大学
教育学部 教務課
上條 直哉 係長

導入目的

  • 学生一人ひとりの英語4技能の推移を可視化し、科目間・クラス間で学生の英語力の強みや課題を共有し、英語カリキュラム全体で指導を充実させるため
  • 英語教育の目標を大学全体の教育目標達成にまで高めることを目標として、知識・技能以外にも思考力・表現力、主体性等を育成するためのカリキュラム改善を強化するため

学生の英語4技能をバランスよく育むとともに、
教育の質保証を果たし、DPの実現を図る

松本大学では、2017年度、甲信越地方の私立大学では唯一となる教育学部を新設しました。DPの1つには、「地域貢献」という大学の基本理念を踏まえ、「地域社会に貢献する教育に関する専門性を身につけた人材の育成」を掲げています。

教育学部の第1期である現3年生は、全員が小学校教諭免許の取得を希望しています。小学校では2020年度に全面実施される次期学習指導要領で英語が必修化されるため、英語を教えることができる小学校教員の養成には地域から大きな期待が寄せられています。そうした中、松本大学教育学部では、英語の指導の充実を最重要課題として位置づけました。単に英語力を高めるだけではなく、英語教育を通して思考力・表現力、主体的な学修習慣、成功体験による自己肯定感を育むことで、英語以外の学修への意欲はもちろん、人生に対する前向きな姿勢まで醸成していきたいという思いがあります。そうした人材こそ、地域に必要な人材と考えているためです。

2018年度からは、英語教育のさらなる充実を目指し、以前から課していた資格検定試験に加えて「GTEC」Academic(以下、「GTEC」)を実施することにしました。1年次は4月と1月の2回、2年次と3年次は1月に全学生に受検させ、英語力の推移を把握しています。英語を通じて学力の3要素を伸ばし、なおかつ、地域貢献に資する力の育成というDPを実現するためには、2技能の試験では十分とは言えません。英語の授業で4技能をバランスよく育むことが必要であり、教育の質保証をしっかり果たしていくためにも、アセスメントとしての信頼度が高く、学生の4技能の英語力を可視化できる「GTEC」が必要だと考えました。

英語科目では、これまで別の資格検定試験におけるリスニング・リーディングの結果によってクラスを分けていましたが、「GTEC」の導入に伴い、その4技能のスコアに基づいてクラスを編成することにしました。2018年度入学生の英語科目は、1年次が2技能によるクラス分け、2年次が4技能によるクラス分けをした結果、1年次と2年次のクラスでは、学生の顔ぶれがガラリと変わりました。スピーキング・ライティングというアウトプットのスキルがクラス分けに加味された結果、2年次のクラスには、ペーパーテストが得意な学生や、コミュニケーションに長けた学生など、各クラスに多様なスキルを持った学生が集まることになったのです。ペーパーテストが苦手な学生がアウトプットの場面で他の学生をリードするなど、学生同士が互いのスキルを認め合い受け入れる雰囲気が生まれています。

■松本大学教育学部DPとDP達成のための英語教育マネジメントの考え方

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自分の強みや課題に基づいて「ロードマップ」を作成し、
主体的に学びに向かう学生たち

英語教育の成果をDPの実現につなげるために重視しているのが、学生自身で行う目標設定です。そこで、独自のツール「ロードマップ」を活用します。授業を受ける前の自分を分析し、全授業の修了後にどうなっていたいのかという展望を描かせることで、学修に対するモチベーションを高めるというねらいがあります。

「ロードマップ」には、学生一人ひとりが直近の「GTEC」のスコアに基づき、自分の具体的な強みや課題とともに、前期あるいは後期に向けた目標を記入。目標実現に向けた英語のトレーニングの内容やスケジュールを練り上げていきます。

「GTEC」を通して、学生英語4技能が客観的に把握できるようになったため、学生一人ひとりの強みや課題に応じたアドバイスを行いやすくなりました。例えば、スピーキングやリスニングに課題がある学生には、学内のイングリッシュカフェの利用を勧めています。

また、年度末には英語の授業を担当する全教員が学生一人ひとりの「GTEC」のスコアを分析し、授業での工夫の成果や課題などを振り返りながら、1年間の総括と次年度に向けた対策を記入する「ティーチングポートフォリオ」を作成します。極端にスコアを下げるなど、課題が大きい学生については、面談などの個別対応を行っています。また、指導力の底上げを図れるよう、スコアを高めたり、時間外学修時間を伸ばしたりする学生が多いクラスの指導のノウハウは、教員全体で共有することにしました。

4技能重視の指導によって、学生には大きな変化が見られます。例えば、入学当初は控えめでも、授業でのコミュニケーションを通じて活発に自分の考えを述べられるようになった学生や、教員や学生同士の親密な人間関係に感化され、英語への苦手意識を克服した学生が少なくありません。また、「GTEC」のスコアが励みになっている学生も目立ちます。ペーパーテストが苦手なため2技能の資格検定試験で伸び悩む学生も、スピーキングを生かして「GTEC」のスコアを伸ばし自信を深めていると感じます。

今後は、「GTEC」の結果を生かしたカリキュラムの改善に力を入れ、スコアの伸びが低いスキルの育成に特化した科目を増やしたり、1科目内における4技能の配分に強弱をつけたりしていく予定です。

■総合英語Road Map

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■ティーチングポートフォリオ(例)

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指導改善を推進する英語4技能のエビデンス

岡山大学
基幹教育センター/副センター長
佐々木 健二 教授

導入目的

  • 学生の英語4技能を客観的に測る指標を得るため
  • 学生の主体的な学習改善への支援を強化するため
  • 英語の指導の成果検証とそれを踏まえた改善を充実させるため

学生の4技能をバランスよく育成するためには、
4技能のアセスメントによる成果検証が不可欠

岡山大学では、国際社会で活躍できるグローバル人材の育成を最重要課題として位置づけています。そこで、英語教育に力を入れ、学生の4技能をバランスよく向上させられるよう、1年次から「話す」「聞く」「読む」「書く」活動を中軸に据えた授業づくりを推進中です。そうした方針を全学部・学科で徹底させるため、教養教育全般を担う基幹教育センターに英語教育専門の部署を設置し、教養教育における英語科目の指導は、基本的に同部署が行うことにしました。

ところが、毎年12月に4年生・6年生全員を対象に行う卒業時アンケート調査では、「英語に自信が持てない」「英語に苦手意識がある」などと回答する学生が少なくなかったので、英語教育の指導改善の強化を図りました。

まず取り組んだのは、学生の英語力を適切に評価する体制の整備です。具体的には、4技能の指導成果を客観的に測れるよう、2018年度から1年次の12月に「GTEC」Academic(以下、「GTEC」)を実施することにしました。全学教育の一環として大学が費用を負担して全学生に受検させ、4学期(12~2月)の必修科目の単位認定要件として「GTEC」の受検を位置づけています。

4技能を重視した指導を充実させるためには、4技能のアセスメントによる学生の実態把握が欠かせません。「GTEC」というエビデンスに基づいて指導の成果と課題を検証し、指導改善につなげたいと考えました。また、アセスメントを通して4技能のレベルが可視化されることで、学生は自分の強みや課題を把握できます。そうなれば、学生一人ひとりが必要な学習を意識し、主体的に学びに向かうきっかけになるという期待もありました。

4技能別に必修科目を設置し、
エビデンスに基づいた指導改善を推進

2019年度には教養課程の英語のカリキュラム編成を刷新し、1年次には、4技能をよりきめ細かく指導できるよう、全学部・学科で「スピーキング」「リーディング」「ライティング」「リスニング」と技能別の4つの必修科目を設けました。そして、それらの科目の指導改善にも、「GTEC」の結果を反映させています。

例えば、2018年12月の「GTEC」ではスピーキングに課題がある学生が多かったため、2019年度の1年次では、「話す」活動の充実を全必修科目共通の目標としました。具体的には、「スピーキング」はもちろん、他の必修科目でも、学生同士のディスカッションやスモールトークなどを積極的に行っています。実際の英語によるコミュニケーションでは、2つ以上の技能を同時に用いることも少なくないので、技能別の科目編成ではありますが、どの科目でも複数の技能を統合して学ぶ場面を大切にしています。2019年12月の「GTEC」では、そうした指導改善の成果も検証する予定です。

学生が主体的に英語を学習できる支援にも力を入れています。その1つが、学生に身につけさせたい英語力や段階的な達成目標などを4技能別にまとめたCAN-DOリストです。2020年度から全学部・学科で活用できるよう、現在、基幹教育センターが作成を進めています。

段階的に目標が示されたCAN-DOリストにより、学生は次の目標が立てやすくなります。「GTEC」によって洗い出された課題を解決したり、認識した自分の強みを生かし、さらなる高みを目指したりするためのヒントを見つけたりすることもできるしょう。学生が自ら考え、行動に移せるようになることが、学習改善のPDCAサイクルの確立につながります。

一連の指導改善により、学生はより主体的に英語を学ぶようになりました。4技能をバランスよく伸ばそうとする意識も高まっており、「GTEC」の結果から自分に必要な学習を判断して取り組む学生の姿が目立ちます。最大の成果は、「GTEC」の導入により、エビデンスを伴った指導改善が推進されたことです。4技能の課題を客観的に把握し、それを着実に指導に反映させる体制が整いました。今後は、指導の成果検証を強化し、さらなる指導改善を目指します。例えば、過年度比較で「GTEC」のスコアの推移を見取り、変化の要因の解明に力を入れていきたいと考えています。

英語力の変化の要因は様々ですが、それらを適切に把握できるようにすることが今後の目標です。そうなれば、学生の実態に応じた指導改善をエビデンスが伴った形でより充実させることができます。グローバル化が進む中、英語力を身につけることの重要性はますます高まっています。卒業までに学生一人ひとりの4技能をしっかり向上させられるよう、また、そのエビデンスを学生が持つことで、自信をもって本学を卒業し、社会で活躍できるよう、今後も指導改善に力を入れていきたいと考えています。

国際的なビジネスリーダーに必要な
英語4技能の育成を目指す

中央大学
国際経営学部
飯田 朝子 教授

導入目的

  • 学生の英語4技能を適切に把握するため
  • 学生一人ひとりの英語力に応じた指導を行うため
  • 専門科目を英語で受け、留学するために必要な実践的英語能力を向上させるため

学生一人ひとりの英語力に応じた指導ができるよう、
入学直後に4技能を測定し、英語の授業のクラス分けを実施

中央大学は、2019年度、グローバルに活躍できるビジネスリーダーの育成を目指し、国際経営学部を新設しました。全カリキュラムの7割を英語または中国語で行い、経営学や経済学、統計学、マーケティングなどの必修科目では、1冊800ページ程度の英語の原書を教科書として用いています。また、海外でのフィールドワークやインターンシップなども充実させ、グローバルビジネスに必要な実践力の育成を図ります。

国際的なビジネスシーンにおけるコミュニケーションでは、英語を英語のまま理解し、英語で返事ができる実践的な英語力が欠かせません。そこで、英語教育を専門教育と並ぶ柱として位置づけ、指導改善を推進しています。

その1つが、英語を学ぶ科目における工夫です。例えば、1・2年次には週2回の必修科目「アカデミック英語」を設置し、1回は英作文を通してアカデミックレポートや論文を書けるだけのライティング力やリーディング力を養う授業、もう1回はコミュニケーション主体でリスニング力やスピーキング力を育む授業という構成にしています。また、さらに高度なプレゼンテーション能力やネゴシエーション力などを育めるよう、3・4年次には選択科目「アドバンスト英語」を設けることにしました。そうして、卒業までにCEFRスケールでC1あるいはC2の英語力を身につけさせたいと考えています。

入学時における学生の英語力には差が見られるため、「アカデミック英語」では、学生一人ひとりの課題にきめ細かく応じた指導ができるよう、学生の英語力に応じた14クラスを設け、1クラス15?20人の少人数制教育を行っています。プレイスメントテストとして活用しているのが、入学直後の4月に実施する「GTEC」 Academic(以下、「GTEC」)です。「GTEC」には、受検者の正解状況に応じて問題の難易度が変わるCAT(Computer-adaptive Testing)が導入されており、短時間で適切に英語4技能を測れるところに魅力を感じました。例えば、スピーキングでは、学生が遭遇しそうなシチュエーションがうまく盛り込まれています。加えて、「冠詞が落ちている」「三人称単数が出てこない」「過去形で不規則動詞が出ない」など、英語力の本質を問う設問も目立ちます。私自身が英語の授業を行う際もそうした問いかけを重視しており、授業を進める際の基礎となるデータを得られると考えました。

客観的な指標によって学生の実態把握を強化し、
指導を通して課題改善を図る体制を整備

国際経営学部では英語の専任教員は置かず、「アカデミック英語」はすべて専門科目との兼任としています。日本の大学で教えた経験のあるネイティブの教員、あるいは英語に堪能な日本人・中国人教員が中心です。認可された教員の定数をすべて専門科目にあてることで、専門性の高さを担保しようと考えました。

「GTEC」の結果は教員間で共有し、指導改善に生かしています。具体的には、2019年度の1学年では、スピーキングのスコアが他技能と比べて低くなりました。そこで、英作文を中心とした「アカデミック英語」の授業であっても、スピーキング活動を行う場面を積極的に設け、発話力の向上を図ることにしました。

また、1年次の専門科目を担当するある教員は、授業がリスニング一辺倒にならないよう、授業の最後の15分間に、その授業における学習内容に関連した発展的なテーマを示し、学生5?6人1組で英語によるディスカッションを行わせることにしました。それには、専門科目の内容を踏まえたスピーキング力の育成というねらいがあります。

入学から数か月間が経ち、学生は学内で日常的に英語を使うことに違和感を持たなくなっています。教員との日常の挨拶や会話も英語で行う者が目立ちます。また、「GTEC」によるクラス分けは、能力に応じた適正なレベル分けができており、教師の実感とも合致しています。例えば、CATの試験で、学生一人ひとりの英語力に合わせた出題になっているということもあり、学生の能力の弁別が正しくとれていました。また、技能別の学生の特徴を早期に把握することができ、指導に還元することができたのも良かったと感じています。

今後は、「GTEC」を継続して受検させ、その結果を用いて指導の検証・改善により力を入れていきます。具体的には、1年間の英語力の推移を把握できるよう、1年次4月のプレイスメントテストに加え、2月の受検も必須化する予定です。また、1年次の2月のスコアは、2年次の「アカデミック英語」のクラス分けに活用することを考えています。

4技能英語学習カリキュラムへの「外部試験」の活用

愛媛大学
教育・学生支援機構/副機構長 英語教育センター/センター長
折本 素 先生
教育・学生支援機構 英語教育センター/准教授
三浦 優生 先生

導入目的

  • 学生が自身の客観的な英語力を把握するため
  • 英語教育センター作成の英語成績評価テストの妥当性を検証するため
  • 成績評価の一部として活用するため

どの学力層にも自身の客観的な英語力を把握してもらい、
大学は妥当性のある成績評価を提供していきたい

愛媛大学は全学部の1年生に英語の必修科目を課しており、その授業内で4月と1月に「GTEC」Academic2技能版を実施。その結果を学生・大学それぞれで活用しています。

外部英語試験を導入した目的は、①学生自身に自分の英語力を客観的に認知させ、自らの学習計画に生かさせる②英語教育センター独自の成績評価テストの妥当性を検証する③成績評価の一部として活用することでした。また、必修科目の英語で修得を目指すのはコミュニケーションに必要な汎用能力としての英語(English for General Purpose)であり、対象が1年生であることを鑑みて、当初は、高校卒業レベル程度の英語力を測るPBT(paper based test)の試験を導入しました。

ただ、上位層の学生にとって問題が易しすぎる弁別性の問題や、試験から結果返却までの期間の長さ、試験運用にかかる全学の教職員負担の大きさといった課題があり、よりよい試験を探す必要が出てきました。

これらの課題を解決するうえで最適だったのが、リリースされたばかりの「GTEC」Academic(当時の名称「『GTEC』College Edition」)でした。

出題が大学生向けにつくられていること、個々の受検者の解答に応じて幅広いレベルの問題が出題されるため、受検者の英語力に幅があっても短時間で正確に力を測ることができ、試験結果が即時学生にフィードバックされること、問題用紙や解答用紙の配布回収・確認の必要がなく、英語教育センターのみで試験運営できるようになったこと、など一度に多くの課題がクリアできました。

学生には、入学直後のスコアと約一年学んだ後のスコアを見比べてもらい、2年生以降の英語学習計画を立てるのに生かしてもらっています。実施直後に詳細な結果がフィードバックされ、自身の英語力の現状や成長を把握できることは、学習の動機付けにつながると思います。

また大学としては、1月に実施した試験のスコアを第4クォーターの成績の10%に反映しています。以前は成績の30%に反映していたのですが、外部英語試験を導入してから、英語教育センターが独自に作成した英語統一評価テスト(期末テスト)の精度や妥当性も高まり、授業成績評価の基準もうまく調整できるようになったため、割合を変更しました。

以上のことから、導入当初の目的の多くが達成されたように感じており、現在に至るまで、「GTEC」Academic2技能版を実施しています。

本学の4技能カリキュラムの特徴と
今後の「外部試験」活用の課題

本学1年生の必修科目の授業内容は、第1クォーターがSpeaking重視、第2クォーターがListening重視、第3クォーターがWriting重視、第4クォーターがReading重視というように、クォーターごとに重点を置く技能を定めています。

当初は、クォーター毎に違う能力に焦点を当てることで、学習の継続性に関しての懸念もありましたが、実際に実施してみると、第1クォーターで学習し習得した技能が第2クォーターの学習に生かされ、さらに、第1クォーター、第2クォーターで学習し習得した技能が、第3・第4クォーターの学習活動の中で繰り返し使われる事になり、結果的に反復学習を行うことができることが分かり予想外の良成果を得ました。

このことは、クォーターごとに実施している授業アンケートで、学生の授業に対する満足度が高いことにもあらわれています。特に、第1クォーターで少人数クラスでSpeakingに焦点をあてた学習活動を行うことにより、新入生同士が必然的にコミュニケーションを深め、早く友人を作ることができ、その後の学習を含めた大学生活を円滑に行うのに役だった点が学生たちから非常に高く評価されています。

また、「GTEC」Academicの試験結果について4月と1月を比較したところ、高校時代に比べて英語に関する授業時間数が減っているにも関わらず、全体としてスコアが保たれていることがわかりました。何より、学生の授業評価、満足度が高く、それが、学習態度や学習意欲に良い影響を与えています。これも、本学オリジナルのカリキュラムが有効に機能しているあらわれではないかと考えています。

また、2年次以降には、英語力をさらに伸ばしたい学生向けに「英語プロフェッショナル養成コース」を提供しています。授業の質を高めるために、毎年、募集定員を30名とし、少人数制を取っており、選抜時の出願要件として「GTEC」Academicのスコアを提出させています。

今後については、大学入試で英語4技能能力判定テストが活用される流れを考慮すると、現在実施している「GTEC」Academicも4技能版を活用するということも一つの大事な検討課題となるでしょう。そうすれば、学生にとっては、英語力の把握や伸長の確認が継続的にできるうえ、大学としても、スコアをクォーターごとの成績にきめ細かく反映するなど、さらに深い活用ができる可能性があります。

しかし、この件に関しては、テスト実施費用のみでなく、テストの実施時期(回数)、授業評価への活用の仕方(直接反映させるか否かも含めて)など、様々な方向から、英語教育センターのみでなく、愛媛大学全体で慎重に再検討しなくてはならないでしょう。

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