伯東株式会社は、半導体を中心とした商社としての機能に加え、電子装置の自社開発やケミカル事業の研究開発も行う、商社とメーカーの機能を併せ持つ企業です。2024年の10月からUdemy Businessと生成AIのアカウントを全社員に付与し、社員の自律的な学習を支援する制度を整えています。また、社員一人ひとりの成長を通じて変化を生み出す「イネーブラー人材」の育成を推進しています。今回は、ESG経営推進ユニット、そしてコーポレートインテリジェンスユニットの皆さんに、わずか1年弱でビジネスインパクトを創出するに至ったUdemy Businessを活用したリスキリングの取り組みについてうかがいました。
ESG経営推進ユニット 執行役員 ユニットマネージャー 谷川聡一朗さん(写真左)
ESG経営推進ユニット HRソリューション部 HR開発グループ 小林優美さん(中央)
コーポレートインテリジェンスユニット デジタル戦略推進部 部長 大谷浩実さん(右)
コーポレートインテリジェンスユニット デジタル戦略推進部 DX推進グループ DXグループ長 藪根正樹さん(左から2番目) コーポレートインテリジェンスユニット デジタル戦略推進部 DX推進グループ スペシャリスト 浅田晋吾さん(右から2番目)
INDEX
「イネーブラー」をキーワードにし、主体的な思考を促す
伯東は、2025年4月に策定した「中期経営計画Hakuto2028」(以下、中期経営計画)において、2030年に目指す姿として「顧客の進化を加速させるイネーブラーとしてかけがえのない存在になる」を掲げました(図1)。

コロナ禍以降の世界的な半導体の需要拡大を受けて、同社は業績を伸ばし、「量的な転換」を果たしました。その次の事業戦略として、中期経営計画では持続的な成長を支えるための組織となるため「質的な転換」をテーマとしました。
その中心にあるのが人材の力による変革です。ESG経営推進ユニットのユニットマネージャーで執行役員の谷川さんは、次のように説明します。
「当社は、お客様の声に真摯に耳を傾け、一つひとつの課題に誠実に取り組み、解決へと導くことで信頼を築いてきました。当社がさらに貢献していくためには、積極的に次の一手を提案し、お客様や社会の『本当の望み』を叶えていく、新たな挑戦が必要です。そこで、社員一人ひとりの成長を通じて変化を生み出す『イネーブラー人材』の育成を軸とし、組織と個人が連動して進化する仕組みづくりを進めています。
あまり聞き慣れない『イネーブラー』ですが、あえてキーワードにしました。私たちが中期経営計画に『イネーブラー』という言葉を採用したのは、社員一人ひとりにその本質を深く考えてもらいたいという意図からです。聞き慣れない言葉だからこそ、能動的な思考を促すきっかけになると考えました」(谷川さん)
そして、イネーブラー人材の育成に向けて、変革を支える人材像を“成長の羅針盤”として位置づけ、「Think(考える)」「Drive(推進する)」「Refine(磨く)」の3つの力を育成の柱として明確化しました(図2)。社員が自ら考え、行動し、成果を振り返って次につなげる学習サイクルを定着させてリスキリングを加速させ、全社的な質の向上を目指しています。

学習と実践を同時に進めていく仕組みを構築
2025年4月には、情報システム部を「デジタル戦略推進部」に改称し、システム開発・運用部門からデジタルを通じて事業に貢献する部門へと進化させました。コーポレートインテリジェンスユニットデジタル戦略推進部部長の大谷さんは、その意図を次のように説明します。
「中期経営計画の策定にあたって、情報システム部は、全社員がデジタルを活用して自分の業務を改革する『All-Hands Digital Innovation』をビジョンに掲げました。その具現化に向けて部が果たす役割として、ビジネス部門とバックオフィス部門をデジタルでつなぎ、業務の効率化や新規事業の立ち上げなどを図り、それによって企業価値を高め、お客様にさらに貢献していく、イネーブラーになっていくことを目指しています」
その具現化に向けて打ち出したのが、eラーニングで学びながら、生成AIを活用することによって、社員一人ひとりが学習と実践を同時に進めていき、能力を高めていくという教育方針です。それは、アメリカの教育学者のデイヴィッド・コルブ氏が提唱する「経験学習モデル」を基にしています。現場で実践し、それを振り返り、成果を共有し、概念化して、それを基に次の実践をするといったサイクルを回すことで力がつくという人材育成の考え方です(図3)。

社員の85%以上がUdemy Businessを受講、生成AIの利用率も98%に
学習と実践を自律的に行う環境を整えるため、Udemy Businessと生成AIツールのアカウントを全社員に付与しました。
「実践を振り返り概念化することは個人で取り組むことが難しいと考え、外部の知見を借りるためにUdemy Businessを導入しました。そして、まずは誰もが使ってみることができるようにすることが大切だと考え、アカウントは全社員に付与しました」(大谷さん)
実際、導入1年目で、社員の85%以上がUdemy Businessを受講し、生成AIの利用率も98%に達しました。社員のアンケートには、「自分の業務が効率化した」などの声が上がっています。Udemy Businessで生成AIに関する講座を受講するなどの結果、年間一人あたり26時間以上の業務効率化を実現。現在も40%以上の社員がUdemy Businessで継続的に学習しており、全社員に機会を提供する姿勢が、自発的な学びの文化を後押ししています。
どんな場面でどのように生成AIを使えるのか、プロンプトも含めて具体的なユースケースをUdemy Businessで学び、かつ生成AIを使って業務ですぐ実践できる環境にしたことで、社員はUdemy Businessと生成AIの両方の有用性を実感できました。
デジタル戦略推進部DX推進グループ長の藪根さんは、新たな人材育成の仕組みの手応えを次のように語ります。
「Udemy Businessの受講率が85%以上、生成AIの利用率が98%という高さには、両者の相乗効果が示されていると捉えています。すべての部を回って社員にヒアリングをしたところ、DXに関して取り組みたい施策が60案以上も上がりました。社員の生成AIの活用に関する意欲の高まりを肌で感じています。全社員にアカウントを付与したのは、会社の愛情でもあり、社員を大切にし、キャリアアップしてほしいという会社の思いが、社員にきちんと伝わったからこそ、この成果が出たのだと思っています」
ラーニングパスに「伯東DXリテラシー標準」の学習内容を組み込む
新しい技術を自分の業務に取り入れて浸透させていくためには、デジタルスキルに関する人材要件を示す必要があると考え、同社独自のスキル標準も設定しました。国の「デジタルスキル標準(DSS)」を基に、日常的な業務に生かせる、全社員が取得すべきスキルの「伯東DXリテラシー標準」と、専門人材向けに「伯東DX推進スキル標準」の2層構造で示しました(図4)。上位の「伯東DX推進スキル標準」では、データの分析等を業務に生かす「デジタルデータアナリスト」、現場でのエンジニアリングを推進する「デジタル自活エンジニア」、コミュニケーションのハブとなる「DX推進リーダー」の3つの人材ロールを定義しました。

そのようにデジタルスキルの重要度を明確に示した上で、「伯東DXリテラシー標準」に関する学習内容をUdemy Businessのラーニングパスに組み込み、社員が学習しやすいようにし、標準のスキルとして全社員が定着できるようにしました。
デジタル戦略推進部DX推進グループスペシャリストの浅田さんは、社員の学習の状況を次のように語ります。
「当社は職層が細かく分かれているため、その職層に沿った適正なデジタルスキルの指針があると、より現場に浸透しやすいと考えました。約700名いる社員の学習頻度は高く、この仕組みの導入から約1年で『伯東DXリテラシー標準』の浸透はかなり進んでいます。『伯東DXリテラシー標準』の習得が終わり、『伯東DX推進スキル標準』のカリキュラムに取り組む社員が増えているところです」
社員がそれぞれ工夫したプロンプトなどを職層別に共有
社内にデジタルスキルに関する情報を共有するプラットフォームを設け、社員各自の実践を紹介するようにしました。加えて、生成AIの活用においてどのようなプロンプトがどの業務に有効かを、職層別に活用方法をまとめて共有しています。
「メールの作成や画像からのテキスト化、業務プロセスの簡素化など、業務改善のための生成AIの活用が非常に進んでいます。その活用方法をプロンプト含め、同じ職層の社員と共有し、横展開しています。さらに、新技術を起点とした発想や提案が生まれるなど、企業文化の変化も進んでいます」(浅田さん)
今後は、業務の効率化にとどまらず、新しい技術をすぐに実践して学べる場を生かして、AIシステム開発など、デジタル技術を活用した価値創出に挑戦し、売上に貢献していく攻めの部分での生成AIの活用を目指していきます。「伯東と組むと、より良い価値が生まれる」と感じてもらえる企業を目指し、全社員がDXを自分ごととして捉える組織づくりをさらに加速していく考えです。
「当社に限らず中堅規模の企業は、人材不足が課題となることが多いかと思います。一方で、個人的には中堅規模だからこそ動きやすく、成果が見えやすいと感じています。当社はそうした中堅規模の特性を生かしながら、全社一丸となって新たな組織文化をつくり、人材育成を進めていきます」(谷川さん)