森永製菓株式会社は、1899年創業、120年以上にわたり、菓子・食品・冷菓・健康分野(ゼリー飲料など)において多様な商品を提供してきました。近年、社会全体でデジタル化が急速に進む中、同社においても事業変革を一層加速させるうえでDX人材の育成が喫緊の課題となっています。そこで今回は、同社のDX人材育成の取り組みと、Udemy Businessを活用した学びについて、社員の皆さまから話をうかがいました。

(お写真お名前、左から)
DX推進部 部長 折見直彦さん
DX戦略企画室 DX人材開発担当 野瀬未来さん
DX戦略企画室 DX人材開発担当 リーダー 大野潤平さん

データ活用を軸に、DX推進人材の育成を本格化 

森永製菓グループは、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、中長期的な成長を通じて企業価値を高めていくため、「2030経営計画」を策定しました。同計画では3つの基本方針の1つとして「事業戦略と連動した経営基盤の構築」を掲げ、事業戦略・DX戦略・人事戦略を連携させて実行しています。DX推進部 部長の折見直彦さんは、次のように語ります。

「2025年4月に就任した新社長の森は、就任時に『無形価値の最大化』を掲げ、『人的資本経営への取組とDXの加速』を対外的に発信しました。これを受け、DX推進部は『2030経営計画』達成に向けて5つの戦略のもとでDXを推進しています。(図1)」

図1 DX戦略概念図
図1 DX戦略概念図(提供資料を元に弊社作成)

5つの戦略の背景には、顧客行動の変化がありました。現在は顧客一人ひとりがデジタルデバイスを保有し、企業との「つながり」はデジタルを介したものが中心となっています。その中で企業には、データを活用して顧客の要望を的確に捉え、戦略的に活かす力が必要とされています。

森永製菓グループにおいても、顧客ニーズに即した商品を開発・提供するため、データの活用やデジタルスキルの強化を目的に、社員のリスキリングが求められていると、折見さんは説明します。

「例えば、お客様が商品を購入される際、SNSやWebサイトなどのソーシャルデータを参考にすることは今や当たり前になっています。より良い商品を開発・提供するためには、企業の『経験や感覚』だけでは対応しきれません。多様なデータを分析し、お客様との距離を縮めながら、変化に柔軟に対応できる力を育む必要があると考えました。」

アセスメントに基づき、DX推進人材のスキルを可視化
 

DX人材育成の第一歩として取り組んだのが、同社におけるDX人材の定義です。経済産業省が策定した「デジタルスキル標準(DSS)」に基づき、同社はDX人材を「DX推進人材」と「デジタル活用人材」の2つに大別しました。

DX推進人材は、高度なデジタル施策を推進し、社内のDXを加速させる人材を指します。一方、デジタル活用人材は、DXリテラシーを身につけ、日々の業務にデジタルを積極的に活用しながら価値創出につなげる人材です。

DX推進人材に求められるスキルを明確にするため、株式会社エクサウィザーズが提供する「DIA(デジタルイノベーターアセスメント)」を導入しました。同アセスメントは、受験者のデジタルスキルやイノベーターとしての素養を定量的に評価し、現状を把握することができます。まず、DX推進の実務を担うDX推進部および関係会社のITグループに所属する社員を対象にアセスメントを実施し、スキルを可視化しました。

その結果、組織全体のDX推進スキルの強みや課題を客観的に把握でき、優先的に強化すべき分野が明確になりました。

「特にデジタルテクノロジーの活用やデータ分析に関するスキルに課題があることが見えてきました(図2)。この結果を踏まえ、DX推進人材を『DXを自律的・自立的に推進できる人材』として育成を図ると同時に、そうした人材が活躍できる組織づくりを進めていきたいと考えました。」(折見さん)

図2 アセスメント結果比較図
図2 アセスメント結果比較図(提供資料を元に弊社作成)

DX推進人材の定義においては、森永製菓グループの2030ビジョンや経営計画を踏まえ、DX推進人材の「あるべき姿」「状態目標」「期待行動」を明文化しました。さらに、それらをデジタルスキル標準(DSS)と照らし合わせ、ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティなど、同社に必要な8種類の人材ロールを選定しました。(図3)。

この人材定義に携わったDX戦略企画室 DX人材開発担当 リーダー大野潤平さんは、次のように語ります。

「8つの人材ロールそれぞれにおいて、デジタルスキル標準(DSS)に記載されている内容を当社向けに読み替え、スキルの重要度も設定しました。その際、各部門の部門長にヒアリングを行い、現場が求める要素も反映しています。人材ロールごとに必要なスキルを明確にしたことで、社員が『どのスキルを伸ばすべきか』『どのような役割を担うのか』を具体的にイメージできるようになりました。」

図3 選定した8つのDX推進人材ロール
図3 選定した8つのDX推進人材ロール(提供資料を元に弊社作成)

Udemy Businessを活用し、実践的な学びを促進 

DX戦略をさらに加速するため、これまで手薄だったテクノロジー・データ活用分野の業務に注力できる組織体制に刷新。新しい組織に8つの人材ロールを割り当てるとともに、育成ロードマップを作成しました。体系的なプログラムを通じて、効率的かつ効果的な知識・スキルの習得と、学習と業務経験をリンクさせた実践的なスキルの底上げを図っています。

育成プログラムの1つとして導入したのが、Udemy Businessです。導入理由について、大野さんは次のように説明します。

「『DIA』には、アセスメント結果に基づき、一人ひとりの課題や目標に応じたUdemy Businessの講座を自動でレコメンドする機能(DXパーソナライズラーニング with Udemy Business)があります。社員は、Udemy Businessの豊富な講座の中から自分に最適なものを受講できるため、効率的に知識・スキルを高められると考えました。」

DX戦略企画室 DX人材開発担当の野瀬未来さんは、Udemy Businessの導入後、社員から学びに対して前向きな声が上がっていると言います。

「『1セクションだけでも学ぼう』と昼休みや出勤前後の隙間時間を有効に活用しているという声を聞きました。1セクションあたりの学習時間が短く設計されている点は、忙しい社員にとって大きなメリットです。また、実務に直結する知識・スキルを学べるため、打ち合わせや提案の場で自信を持てるようになったという声もあります。個人の学びにとどまらず、チーム内でUdemy Businessでの学びを共有する部署もあり、組織全体の力になっていると感じています。」

Udemy Businessの活用促進を目的に受講者説明会を実施し、定期的にメルマガも配信。さらに、様々なキャリアを持ったメンバーが在籍していることを活かし、多角的な視点を身に着けるために勉強会を月に1回程度で開催し、学習の効果を高める取り組みを進めています。

また、DX推進部に配属された新入社員や他部門から異動してきた社員には、オンボーディング施策としてUdemy Businessの講座をラーニングパスとして設定し、計画的な自己学習を促しています。

組織と学びを連動させ、DXを加速

アセスメントによるスキルの可視化、育成ロードマップの策定を通じてDX推進人材育成を進めてきた同社。DX戦略・組織体制・人材育成が密接に連動する仕組みを構築したことで、人材育成がDXの加速と事業成長に直結する好循環が生まれています(図4)。具体的には、DX推進人材のUdemy Businessを使った学習時間が増加し、「DIA」のアセスメントスコアが向上しました。さらに、国内基盤システムの刷新やAIの利活用の可能性探索・実証実験、ITガバナンス・サイバーセキュリティ体制の構築など、さまざまなDXプロジェクトで成果が生まれています。

「リスキリングを通じてデジタルツールの活用が定着し、業務効率が大きく向上しました。加えて、新たなスキルの習得への意識が社員の間に広がり、学びの文化が組織に醸成されつつあります。リスキリングは一過性の施策ではなく、組織文化として根付かせることが重要です。そのためには経営トップの強いコミットメントと、社員が安心して学べる環境づくりが欠かせません。今後も中長期的な視点で、学びの環境整備に取り組んでいきたいと考えています。」(折見さん)

図4 戦略・組織・人材育成循環サイクル(提供資料を元に弊社作成)

学びによって生まれた成果を評価にも反映していきたいと、折見さんは続けます。

「非効率な業務を減らし、企業価値の向上や競争力強化に直結する業務に時間を使える環境を整えることが重要です。そして、そこで生まれた成果を正当に評価する。この好循環をつくることが大切だと考えています。」

2025年に実施した施策は、DX推進部やITグループを中心としたDX推進人材向けの取り組みでした。2026年度以降は、全社員のDXリテラシー向上を目指し、デジタル活用人材に向けた施策を検討していく考えです。

「一部の社員がDXを進めるだけでは、真の変革は実現できません。社員一人ひとりがDXの重要性を理解し、日々の業務の中でデジタルを活用できるようになることが、当社の競争優位性を高めることにつながります。プロフェッショナルから現場の社員まで、全社へのDXの浸透を今後も目指していきます。」(折見さん)