株式会社リコーは、「OAメーカー」から「デジタルサービスの会社」への変革を進めています。大きな転換期を迎える中で、同社では社員のデジタルスキルを強化・育成することが必要だと考え、社内研修プラットフォームとして「リコーデジタルアカデミー」を設立しました。その研修メニューの1つとしてUdemy Businessを導入しています。
今回は、人的資本戦略の全体像と、Udemy Businessを活用した自律的リスキリングの取り組みについて、同社の皆さんにうかがいました。
※写真左から
人材戦略室 室長 岩井貞之さん
デジタルアカデミー推進グループ 原口沙絵さん
デジタルアカデミー推進グループ リーダー 大関かおりさん
技術統括部 技術経営センター 所長 中原逸広さん
INDEX
事業成長のため、全社的なリスキリングを開始
リコーグループは、働く人の創造力を支えるデジタルサービスの会社への変革を目指し、全社的なリスキリングに取り組んでいます。技術革新が加速する中、事業ポートフォリオの見直しと人的資本の流動性を両立させる必要性が高まっていました。その背景について、技術統括部 技術経営センター所長の中原逸広さんは次のように説明します。
「コロナ禍を経て、リモートワークやハイブリッドワークが定着するなど、お客様の『働く』を取り巻く環境は劇的に変化しました。そうした環境の多様化に対応すべく、当社は、強みであるデバイスとITサービスを融合させ、働く人の創造力を支える『デジタルサービスの会社』への変革を進めています。それを確かなものにすべく、成長事業に会社の資源を集中させ、必要な部署に最適な人材を配置したいと考えました」
同社は、2025年度までの第21次中期経営戦略において、人的資本戦略として「自律」「成長」「“はたらく”に歓びを」の3つを柱に掲げ、全社でリスキリングに取り組み始めました(図1)。中原さんは、同戦略のポイントを次のように説明します。
「リコーグループでは、“個人の成長と事業の成長の同軸化”を重視しています。社員の自律と成長を促し、働くことに歓びを感じてもらうことが、デジタルサービスの会社への変革を加速させ、同時に事業の成長にもつながると考えました。具体的には、どの事業領域を重点的に強化するかを明確にした上で、必要となるスキルや経験をバックキャストで整理し、それに基づいた人材育成を図ることにしました」

自律的なキャリア形成を支える「ジョブ型人事制度」の導入
同グループは、従来の年功序列型の人事制度を見直し、2022年度から国内リコーグループに「リコー式ジョブ型人事制度」を導入しています。人材戦略室 室長の岩井貞之さんは、その詳細を次のように説明します。
「管理職に、マネジメントを担う『マネージャー職』と、専門性を追究する『エキスパート職』と2つの職位を設定しました。そして、それぞれの職位に職務定義書(ジョブディスクリプション)を作成し、必要な資格やスキルを明示しました。これにより、社員は自分の現在地と目標とするポジションに必要なスキルとのギャップを把握し、自ら立てたキャリア計画に沿って主体的に学習に取り組む環境が整いました」
特に、エキスパート職の技術者の職務定義書には「専門性レベル認定制度」を導入しました。ITSS(ITスキル標準)に準拠したスキル評価を実施するもので、専門性を軸としたキャリア形成が促進され、人材の流動性や挑戦意欲が高まることを期待しています。
社内研修プラットフォームの教材としてUdemy Businessを利用
“個人の成長と事業の成長を同軸化”する鍵は自律的なリスキリングにあると考え、その実践の場として設置されたのが、社内研修プラットフォーム「リコーデジタルアカデミー」です。
同アカデミーは、国内リコーグループ全社員のデジタルスキルの底上げを図る「デジタルリテラシー」と、重点育成人材の分野で選出された社員の専門的な能⼒向上を目的とする「アップスキリング」の二層構造としました(図2)。

いずれのカテゴリーにおいても、Udemy Businessをはじめとする動画やeラーニングを活用した教材を組み合わせた研修を用意し、最新技術やビジネススキルを自分の必要に応じて学べる仕組みを整えました。
数あるオンライン学習プラットフォームの中からUdemy Businessを選んだのは、先行して導入していたグループ会社のリコーITソリューションズ株式会社で、IT系の資格取得のためにUdemy Businessを活用したという社員の情報が社内チャットで広がり、社員の自律的な学びの促進につながった実績があったからでした。DXに関する講座が豊富で、レベルに合った内容を選べるため、全社員向けのデジタル教育に大いに役立っています。デジタルアカデミー推進グループのリーダー、大関かおりさんは次のように話します。
「Udemy Businessは講座数が非常に多いため、何を受講すればよいか迷う社員が少なくありません。そこで、Udemy Businessのラーニングパス機能を活用し、スキル別におすすめの講座をまとめて紹介しています。現在、提供しているラーニングパスの数は、110種類に上ります」
ランチセミナーなどを開催し、学習の日常化を図る
2024年度は、Udemy Businessを活用した自律的なリスキリングを社内文化として定着させるため、Udemy Businessの活用法を紹介するランチセミナーを計7回開催しました。参加者は延べ約700名に上り、参加者の約9割が満足と回答するなど、非常に高い評価を得ています。セミナーの運営を担当するデジタルアカデミー推進グループの原口沙絵さんは、次のように話します。
「セミナーではUdemy Businessの基本的な活用法に加え、受講して資格を取得した社員による具体的な学習方法などの『生の声』を共有しています。資格取得者の約9割がUdemy Businessを活用し、取得者は取得できなかった人と比較して受講時間が約1.4倍長いことが分かっています。そのため、セミナーを通じて、Udemy Businessの積極的な活用が広がることを期待しています。Udemy Businessを活用している社員からは『調理中や通勤時間などに受講している』という声も聞かれ、学習の日常化が着実に進んでいることを実感しています」
また、研修で習得したスキルを実務で活用して定着させるための「スキルアッププログラム」も実施しています(図3)。これは、新たな挑戦を希望する社員に対し、リスキリング完了後の配属先(活躍の場)を保障した上で、4〜12か月間にわたり必要なスキルに関する集中学習を行う仕組みです。
「デジタル人材を育成しても習得した知識・技能を実践する場がないという話は、様々な企業から聞いていました。そこで、実践の場を先に用意した上で、人材を育成するという取り組みを始めました。2024年度、本プログラムを通じて多くの社員がデジタルサービス領域の戦力として活躍し始めています。2025年度以降も、即戦力人材の輩出をさらに推進していく方針です」(岩井さん)

ESG目標の前倒し達成と今後の展望
こうした取り組みの結果、2025年度までの第21次中期経営戦略に掲げた「リコー独自のデジタルスキルレベル『レベル2以上』の人材を4,000人育成する」というESG目標は、2024年度までに累計4,600人を超えたことで、1年前倒しで達成しました(図4)。
デジタルを中心とする社員の自律的な学びの積み重ねは、事業成長にも寄与しており、2022年度に40%だったデジタルサービスの売上比率は、2024年度には49%まで上昇しました。

中原さんは、今後の展望を次のように語ります。
「『デジタルサービスの会社』へ変革するためには、我々の強みである『技術』をしっかりと継承しながら、デジタルを融合させ、発展させていくことが不可欠です。時代の変化に応じて新たに価値提供できる商品・サービスを創出していくことは、我々の大きな課題であり、ミッションでもあります。今後も『モノ・コト』で価値創造ができる人材育成にさらにチャレンジしていきたいと考えています」
※参考
リコーのDX(リコーのデジタル人材育成・強化の戦略について詳細を掲載)
https://jp.ricoh.com/about/dx