日立グループの情報通信事業の中核企業である株式会社日立情報通信エンジニアリングは、日立のサーバやネットワーク、ストレージ、各種デバイスなどのITプラットフォーム製品を開発するエンジニアリング事業と、お客様の課題をITで解決するネットワーキング事業の両面から、トータルな価値提供を行っています。2023年度から進めているジョブ型人財マネジメントに伴い、従業員一人ひとりのキャリア志向に合わせた自律的な学びを支援する仕組みとして、Udemy Businessを導入しました。本記事では、日立グループおよび同社の人財戦略の方向性と、Udemy Businessの導入背景や具体的な活用方法について、同社の従業員の皆さまにお話を伺いました。

グローバル市場で勝ち抜くために、ジョブ型に転換 

日立グループは、お客様の経営課題を解決する社会イノベーション事業をグローバルに展開し、現在では売上高・従業員数の約6割を海外拠点が占めるまでになりました。こうした変革期において、同グループは従来の日本型人事制度から脱却し、「ジョブ型人財マネジメント」の導入をグループ全体で推し進めています。

→※詳しくは以下参照。
経済産業省『日立製作所における人財施策(グローバル人財マネジメント基盤とジョブ型人財マネジメントへの転換)
(P.10「1.4 日立がめざすジョブ型人財マネジメント①」)

この転換の背景について、日立情報通信エンジニアリング執行役員、人事総務本部本部長の岩見健太郎さんは次のように説明します。

日立情報通信エンジニアリング執行役員、人事総務本部本部長の岩見健太郎さん

「日立グループがグローバル市場で勝ち抜くためには、多様な属性を持ち、環境の変化や新たなチャレンジに自律的かつスピーディーに対応できる人財が求められています。そうした多様な人財が生き生きと活躍できるよう、時代に合った柔軟な働き方を整備する必要があり、ジョブ型人財マネジメントへと転換を図ることにしました」

この転換において実現したいのは、組織・個人双方の「成長」と「成長し続けるというマインド」を組織全体に根付かせることだと、岩見さんは強調します。

「会社と従業員は、『仕事』をキーとした対等なパートナーです。会社は多様な人財が成長・活躍できる環境を提供し、従業員は仕事を通じて自己実現をめざすことで、両者が成長・発展すると考えています」

適所適財を図るため、全従業員のスキルを可視化 

日立情報通信エンジニアリングにおいても、2023年度からジョブ型人財マネジメントへの本格的な転換が進められています。同社は、エンジニアリング事業およびネットワーキング事業を幅広い分野で展開し、特に、DXとOT(オペレーショナルテクノロジー)に強みがあります。OTは、発電所や鉄道、医療などの現場で稼働する設備・システムからデータを収集・分析し、お客様のビジネス課題の解決を支援する技術領域です(図1)。

「DXを推進しているITベンダーはほかにも存在しますが、OTとDX、さらにAIを組み合わせて、開発からエンジニアリングサービスまで一貫して提供できる弊社のような企業は限られています。情報通信や産業分野、医療での製品開発で培った知見を生かし、今後は、例えばエッジAI・生成AIエンジニアリングやエネルギーマネジメントといった分野にも戦略的に注力していきます」(岩見さん)

図1 日立情報通信エンジニアリングの事業領域
※日立情報通信エンジニアリング『会社案内』より抜粋

様々な分野の事業を手がける同社において、従業員一人ひとりが持つ多岐にわたる専門性は競争力の源泉です。そこで、従業員の能力を最大限に生かすため、個々のスキルや経験を可視化し、適所適財の配置をタイムリーに行う仕組みを構築しました。

具体的には、従業員が定期的に自身のスキルや経験を登録し、それらの人財情報をデータベースに蓄積。案件のアサイン時にそのデータベースを見て、適切な人財を配置できる体制としました。

「例えば、『エンジニアリング』と『ネットワーキング』のそれぞれの強みを融合させるため、ネットワーキング事業で製品開発を経験したエンジニアを、需要が拡大している自動車の自動運転技術の開発プロジェクトにローテーションするといった形で、人財ポートフォリオマネジメントを意識した配置をしています」(岩見さん)

適所適財を実現するためには、従業員一人ひとりが自身のキャリアについて自律的に考えることが欠かせません。同社は、従業員が「自分はどのようなキャリアを築きたいのか」というイメージを明確に持ち、会社がその実現を支援することが重要だと考えています。そのため、日頃から継続的に、上司と部下が今後のキャリアやめざす姿について対話することを重視しています。

→※詳しくは以下参照。
経済産業省『日立製作所における人財施策(グローバル人財マネジメント基盤とジョブ型人財マネジメントへの転換)
(P.43「4.5 アップスキリング・リスキリング JDの活用によるリスキル教育の強化」)

「理想の姿と現在の自分を照らし合わせながら、足りない部分をいつ、どのように補っていくのかを意識することが、従業員の成長のスピードを早めると思います。その過程では、上司の助言が鍵になると考えています。上司と部下の対話の中で、上司が『次はこんな仕事に挑戦してみたら、成長につながるのではないか』と具体的に提案し、部下の可能性を広げる関係が理想ですマネージャー層には、部下の成長のために十分な時間を投資してほしいと伝えています」(岩見さん)

自律的な学びを支援する仕組みとしてUdemy Businessを導入 

日立グループは、他の日本企業に先駆けて、1961年にコーポレートユニバーシティを設置し、1,300コースの研修が提供され、年間の受講者は延べ15万人に上ります。しかし、充実した計画的で一律な教育機会があることによる課題もあったと、人事総務本部グループマネージャの三宅唯勝さんは述べます。

人事総務本部グループマネージャの三宅さん

「これまで従業員には『成長の機会は会社から与えられるものだ』という考え方が根付いていました。そのため、ジョブ型人財マネジメントを導入し、『自分のキャリアは自分で考えよう』と呼びかけても、自分のキャリアを主体的に設計し、自律的に学ぶことができず、戸惑う従業員が少なくありませんでした。こうした背景から、弊社ではキャリア形成を自分事として捉える意識と自律的に学ぶ文化を醸成することが大きな課題となっていました」

そうした課題への対応として、グループ会社から紹介されたのが、最先端・実践的な講座が自由に学べるUdemy Businessでした。

「一部の技術者に試用してもらったところ、Udemy Businessは弊社の事業領域に合う最新技術を学べる講座が充実しており、使い勝手も良いと高く評価されました。そこで、教育機会の拡大を目的に自律的な学びを支援するツールとして、2023年度から導入することに決めました」(三宅さん)

自律的な学びの文化を根付かせるため、3年かけて段階的に導入
 

同社がUdemy Businessの導入にあたり重視したのは、自律的な学びの文化を段階的に醸成することでした。そのため、導入から3年にわたり、利用範囲や施策を少しずつ広げていきました。

1年目は、アカウント数を従業員の4分の1に限定し、受講を希望した従業員のみにアカウントを付与しました。その理由について、三宅さんは次のように語ります。

「自律的に学ぶ文化が根付いていない状態で全従業員にUdemy Businessのアカウントを付与しても、効果的な活用は期待できません。そこで、学習意欲の高い層をイノベーター・アーリーアダプターと位置づけ、Udemy Businessの有用性を周りに広めてもらい、それに合わせて段階的に利用枠を増やそうと考えました。

その狙いどおり、1年目から従業員間の口コミを通じてUdemy Businessの活用が広がっていきました。特に評判を呼んだのが、資格取得への活用です。人事総務本部主任技師の寺西美佳さんは、次のように話します。

人事総務本部主任技師の寺西さん

「弊社は、社員の能力向上のため、資格取得時の費用補助や報奨金を支給する資格取得支援制度も整えてきました。Udemy Businessの講座を活用して、AWS(*1)などのクラウド系資格の取得に役立ったという声が技術者の中で広がり、利用者や学習時間が増えていきました」

2年目には、アカウント数を従業員の2分の1まで拡大し、希望者に加えて、部長・課長といったマネージャー層にもアカウントを付与しました。マネージャー層がUdemy Businessで学び、その価値を実感することで、部下への活用促進につながると考え、マネージャー層向けのビジネススキルに関する講座をラーニングパスとして設定し、学習を推奨しました。また、従業員が学びやすいよう、就業時間中に学習してもよいこととしました(年間の下命学習時間の目安を設け、上司と部下で合意する)。さらに、学習コミュニティサイトを立ち上げ、受講者がおすすめ講座を紹介し合う仕組みを整えることで、従業員の間に自発的な学びが広がるよう支援しています。

そうした学習環境の整備により学習者は増えていったと三宅さんは話します。

「学びに取り組んでいる人が社内の過半数を占め、残された従業員が周りの取り組みに対して興味を持つようになり、『自分も何かやらねば』と思うようになると考えました」

併せて、経営層が全社的な利用促進に向けたメッセージを発信しました。社長自ら、Udemy Businessの導入が従業員一人ひとりの成長を後押しするための重要な施策であることを伝えたほか、役員が全従業員向けのタウンホールミーティングなどでUdemy Businessの活用を周知しました。

導入3年目となる現在は、Udemy Businessによる学習支援を一過性の取り組みにとどめず、日常のマネジメントサイクルへ組み込む段階に移行しています。具体的には、人財部門担当役員からのメッセージを通じ、マネージャー層が部下との1on1や日常の対話の中で、学習支援やキャリア形成に関する対話を積極的に行うよう促しています。

資格取得者数が大幅に増加し、従業員のエンゲージメントも向上 

Udemy Businessの受講者数は、導入から3年間で300名から2,600名へと大幅に増加しました。受講者からは、「使いやすい」「講座を探しやすい」「実務に役立つ」といった高い評価が寄せられています。寺西さんは、次のように話します。

「Udemy Businessは、学びたいと思ったタイミングで、最新のトレンドを学習できる点が魅力です。集合研修は実施時期が決まっており、その時でなければ学べませんが、Udemy Businessは『必要なときにすぐに学べる』のが大きな魅力です」

同社にて特に技術力向上を強化してきた分野の資格取得者数も、Udemy Business導入前の105名(2022年度)から448名(2024年度)へと大幅に増加しました。また、2025年度は日立グループ推奨の生成AI分野の資格取得者が、急速に増えています。

自律的に学べる環境を整えたことで、従業員のエンゲージメントサーベイの数値も上昇しています。

「学習環境に関する設問の『当社の従業員はスキルや能力を向上させる機会が与えられている』について、『そう思う』と回答した割合が、62%(2022年度)から76%(2025年度)に増加しました。Udemy Businessの導入によって学びの機会が確実に増えたことを、多くの従業員が実感しています」(三宅さん)

今後の人財育成について、三宅さんは次の二つを実施したいと語ります。

「一つは、弊社独自に取り組んでいるスキル・経験のさらなる可視化です。従業員一人ひとりがどのような専門性を持ち、どの領域で活躍しているのかを把握できる仕組みを整備し、人財情報を体系的に整理・活用することで、より迅速な適所適財を実現していきます。もう一つは、個人に適した学びを提供するパーソナライズの推進です。部門別・職位別に用意している受講推奨講座を活用しながら、自分のキャリアに合った学びを主体的に選択・推進してもらうことで、自律的な学びの文化をさらに醸成していきたいと考えています」

資格取得の勉強を中心に、自分の可能性を高める 

次に、同社のDX研修を受講し、Udemy Businessを利用している従業員の方々に、具体的な活用方法についてお話を伺いました。

写真左:営業統括本部本部長の濱本一也さん
写真中央:エンジニアリング事業部グループマネージャの杉山拓生さん
写真右:ネットワーキング事業部技師の増井健志さん

営業統括本部本部長の濱本一也さんは、Udemy Businessを使い始めたきっかけを次のように語ります。

「私は本部長職なのでアカウントは付与されず、希望すれば使える状態でした。部下に対して活用を推進する立場にあるため、自分が率先して使ってみるべきだと考え、2024年度から利用を始めました。学んでいるのは英語です。実は英語が苦手で、長年コンプレックスがあったものの、学習時間の確保や費用面から後回しにしていましたが、自分の都合に合わせて学べるUdemy Businessのアカウントが付与されたため、受講し始めました」

濱本さんは、通勤時間を中心にTOEIC対策に取り組んでいます。

「よく地方出張に行きますが、その時も移動中に講座を視聴しています。ほぼ毎日受講していて、受講を始めてから半年ほどでスコアが200点アップしました」

エンジニアリング事業部グループマネージャの杉山拓生さんも、2024年度より、マネージャー層を対象としたアカウント付与に伴い学習を開始しました。アカウント付与当初は十分に活用できていませんでしたが、自身の資格取得を機に本格的な利用を始めました。

「Azure(*2)の資格試験に挑戦しようとUdemy Businessで対策講座を探すと、試験範囲の内容を丁寧に解説している講座が見つかりました。演習問題もセットになっていて、知識のインプットから試験対策まで一通りカバーできる内容だったため、効率よく学べると感じました」(杉山さん)

杉山さんは、マネージャーとして必要なマネジメントスキルの習得にもUdemy Businessを活用しています。

「社内外にもマネジメント研修はありますが、集合研修の場合、受講時間が長かったり、研修内容が自分のニーズと合わないことがあります。その点、Udemy Businessは、自分に必要な内容を選んで、通勤中の電車内で短時間に受講できます。特に役立ったのが1on1に関する講座です。部下との1on1で、自分が話しすぎてしまい、十分に傾聴できていないことがあると感じていましたが、講座で具体的に改善ポイントを学ぶことができました」

ネットワーキング事業部技師の増井健志さんは、同事業部内の業務効率化を支援するツールの開発に携わっています。業務に必要な最新知見の習得に加え、2年間で取得した6つの資格の学習にUdemy Businessを利用しました。

「業務の要件に合わせて最適なサービスを選定し、システムを構築するためには、特定のベンダーに偏らない幅広い知識が不可欠でした。そこでUdemy Businessを活用し、実務直結の知識習得に励みました。その結果、2年間でAWS、Azure、Google Cloud(*3)の主要なクラウドを網羅する計6つの資格を取得することができました。中でも最も難易度が高い『AWS ソリューションアーキテクト プロフェッショナル』の対策講座は、非常に役立ちました。解説が充実しているだけでなく、模擬試験の難易度が実際の試験より高く、『この模擬試験に合格できれば、実際の試験でも必ず合格できる』とモチベーションにつながりました」

最後に、3人に今後のUdemy Businessの活用について伺いました。

「目標点に届くまで、TOEICの学習を続けたいと思います。併せて、部下にもUdemy Businessを積極的に活用するよう勧めていきます」(濱本さん)

「資格取得とマネジメントの学習を今後も継続し、自分自身の市場価値を高めていきたいと考えています。通常業務では必ずしも最新技術に触れられるわけではありません。自分の将来の選択肢を広げるためにも、学び続けていきたいと思います」(杉山さん)

「会社の事業転換は、今後も起こるはずです。そうした変化の中でも会社に貢献できるよう、これからも知識・技術を吸収し続けていきたいと思っています」(増井さん)

*1. AWSは、Amazon.com, Inc. の商標です。
*2. Microsoft Azureは、Microsoft Corporationの商標です。
*3. Google Cloudは、Google LLCの商標です。