NTT西日本株式会社は、「全社員総活躍」を掲げ、社員の自律的キャリア開発を「知る」「相談する」「学ぶ」「挑戦する」の4本柱で支える仕組みづくりを進めています。リスキリングを単なるスキル習得にとどめず、「お客様の課題解決につながる実践的な学び」と再定義し、全社員が学び続けられる環境を整備。その中核施策の一つとして、2024年度からUdemy Businessを導入しました。今回は、人材育成戦略とUdemy Businessの活用について、社員の皆さんからお話をうかがいました。

※こちらの記事は、取材時、2025年9月時点の内容となります。

常務執行役員 総務人事部 部長 梶原全裕さん
総務人事部 プロフェッショナル人材戦略部門 部門長 田瀬博幸さん
総務人事部 プロフェッショナル人材戦略部門 人事・能力開発担当 担当課長 栁田真友さん
総務人事部 プロフェッショナル人材戦略部門 人事・能力開発担当 小山苑佳さん
エンタープライズビジネス営業部 N&S部門 ソリューション担当 三浦大輝さん(NTT西日本で初めてのトップガン認定者)

「通信会社」から「課題解決企業」へ
 

NTT西日本は、通信事業にとどまらない新たな価値創出を目指し、社員一人ひとりの自律的な成長を支援する環境づくりに取り組んでいます。その背景には、事業の多角化や技術革新の加速により、従来の通信ビジネスだけでは顧客の期待に十分応えきれなくなってきたという課題がありました。常務執行役員、総務人事部 部長の梶原全裕さんは、次のように話します。

「現代表取締役社長の北村は、2024年4月の着任以降、『我が社はお客様の課題を解決する企業になりたい。しかし、その課題は年々複雑化・高度化している。だからこそ、私たち自身がスキルアップしなければならない』というメッセージを社員に発信し続けてきました。それを受けて、全社員が自ら学び、変化に対応できる人材へと成長するための戦略を考えました(図1)」

図1 人材育成戦略の全体像(提供資料を元に弊社作成)
図1 人材育成戦略の全体像(提供資料を元に弊社作成)

同社は、2021年頃から社員のリスキリングに取り組んでいましたが、必ずしも全社に十分に浸透しているとは言えませんでした。

「『リスキリング』の言葉だけが先行し、何のために、何を目指して取り組むのかを、社員に十分に伝え切れていませんでした。そこで、『全社員総活躍』を掲げ、学びを通じて組織全体を変革する方針を打ち出し、さまざまな施策を企画・実施することにしました」(梶原さん)

「知る」「相談する」「学ぶ」「挑戦する」、4本柱で進める自律的キャリア開発支援
 

「全社員総活躍」に向けて、社員の自律的キャリア開発を支援するため、「知る」「相談する」「学ぶ」「挑戦する」の4つを柱とした施策を導入しました(図2)。

図2 自律的キャリア開発支援の4本柱

それぞれ次の施策を行っています。

「知る」:経営層からのメッセージの発信やセミナー等を通じて、社員にキャリア形成へのモチベーションを醸成。「キャリアデザインポータルサイト」を構築し、キャリア開発に関する各種制度や研修の情報など、社員が必要な情報にスムーズにアクセスできる環境を整備。

「相談する」:社員がキャリアについて相談できる「キャリア相談窓口」を設置。相談員は全員がキャリアコンサルタントの有資格者で、その多くが社内ダブルワーク制度を活用し、本来の業務と両立しながら相談業務を担当。2024年度末までに、相談件数は1,500件を超え、利用者の満足度は94%。

「学ぶ」:自己学習と集合研修を組み合わせた多様な学習機会を提供。各事業分野に応じた研修やeラーニング、通信教育などに加え、2024年度からUdemy Businessを導入。2025年度には、全社員向けに生成AIなど最新技術をテーマとしたeラーニングの提供も実施予定。

「挑戦する」:学んだスキルを活かす実践の機会として「社内ダブルワーク制度」を用意。所属部署以外の業務に挑戦する社員と、それを支援した上司を表彰する「E-1グランプリ」も開催。

数ある施策の中でも、社内ダブルワーク制度は社員から特に高い評価を得ていると、プロフェッショナル人材戦略部門 部門長の田瀬博幸さんは話します。

「開始当初は利用者が2桁程度でしたが、現在は300を超えるポストで活用されています。別の部署で自分のスキルを活かしながら、実践を通じてスキルアップできる点が大きな魅力です。社内ダブルワークを経験した社員が元の部署に戻ると、周囲に良い刺激を与え、『自分も挑戦してみたい』という声が広がるという好循環が生まれています」

こうした自律的キャリア開発支援の取り組みが評価され、NTT西日本は「グッドキャリア企業アワード2024」大賞(厚生労働大臣表彰)を受賞しました。

Udemy Businessを導入し、学びのハードルを下げる
 

自律的キャリア開発を支援する上で、大きな役割を果たしているのがUdemy Businessの導入です。利用促進を担当するプロフェッショナル人材戦略部門 人事・能力開発担当の小山苑佳さんは、導入理由を次のように語ります。

「『全社員総活躍』を実現するには、社員一人ひとりが自律的に学ぶ文化の醸成が不可欠だと考えました。その点で、Udemy Businessは非常に適した学習ツールだと感じ、導入を決めました」

同社は以前から、通信教育や外部講座など、多様な研修制度を整えていましたが、研修ごとに申し込みが必要な点が社員の心理的な負担になっていました。

「Udemy Businessは、アカウントがあれば、いつでも好きなだけ講座を受講できます。思い立ったときにすぐ学べるため、学習のハードルが下がり、業務や生活の中に学びを取り入れやすくなりました」(小山さん)

導入以降、約7,000人が受講。人事部門からの発信に加え、受講者の口コミによって利用が広がり、社内全体で学習意欲が向上しています。

7つの重点領域における高度スキル人材を育成
 

同社は、顧客のニーズや社会環境の変化を踏まえ、今後強化すべき分野として、「コンサルティング」「プロジェクトマネジメント」「クラウド」「AI・データ」「セキュリティ」「システム開発」「将来ネットワーク」の7つを重点領域に設定。それぞれの領域で高度なプロダクトやサービスを継続的に開発・提供するため、高度スキル人材を計画的かつ持続的に育成する制度を整備しました。

また、全社員のDXに関するスキルレベルを「全社員」「推進者」「牽引者」「トップガン」の4段階に設定しました。ビジネスを牽引する役割を担う「牽引者」と最高ランク「トップガン」を「高度スキル人材」と定義し、2027年までに約2,000人の育成を目指しています。

図3 7つの重点領域と高度スキル人材

田瀬さんは、「高度スキル人材認定制度」の狙いを次のように話します。

「お客様が抱える課題は非常に高度化・複雑化しています。それらの課題に対して、どのように付加価値の高い支援ができるかを考えると、高度スキル人材の活躍が欠かせません。社内外を問わず高い専門性を発揮できるエンジニアを『トップガン』として育成・認定し、その能力を最大限に発揮できるポストに配置することで、特定の領域で長く活躍できるキャリアを築けるようにしています」

高度スキル人材の認定にあたり、全社員の経験・スキル・有資格を統合して可視化しました。そのデータに基づいて認定希望者を選考することは、人事が把握しきれていなかった「埋もれた優秀な人材」の発掘にもつながっています。

同制度を運営する、プロフェッショナル人材戦略部門 人事・能力開発担当課長の栁田真友さんは、次のように述べます。

「高度スキル人材への認定は、人事部門だけでは難しい部分があったため、各領域の主幹組織であるCoE(Center of Excellence)に育成や人事配置等一部権限を委譲し、現場を巻き込みながら人材確保・育成を進めています」

高度スキル人材認定によりモチベーションが向上
 

NTT西日本独自に導入した「高度スキル人材認定」制度において初めて 「トップガン」に認定された三浦大輝さんは、エンタープライズビジネス営業部N&S部門のソリューション担当として、AWSの導入プロジェクトのリーダーを務める傍ら、クラウドエンジニアの育成にも関わっています。

「クラウドに関する勉強会を開催しています。教材にUdemy Businessを活用し、クラウド系の資格取得に役立つ講座をラーニングパスとして設定して、案内しています。勉強会は年数回開催しており、毎回部署を問わず100人以上の社員が参加しています」(三浦さん)

三浦さんは、「トップガン」として認定されたことで自身のモチベーションが高まったほか、若手社員からキャリアに関する相談を受ける機会が増えたと言います。

「専門分野に特化した人材が正当に評価される仕組みが整ったことで、私も含めエンジニア全体の意欲が高まっているのを感じています。また、若手エンジニアから、技術的な質問だけでなく、キャリア形成に関する相談を受ける機会が増えています。スキルアップのためにどのように学べばよいのか、どのようにステップアップしていけばよいのかといった具体的な相談を寄せられるのは、社内にさまざまな学びの制度が整備され、組織全体として学習意欲が高まっている表れだと思っています」(三浦さん)

今後の課題について、栁田さんは、適切な人材配置と高度スキル人材認定制度の認知度の向上を挙げます。

「事業目標の達成には、必要なポストへの高度スキル人材の配置が重要ですが、同制度の全社的な認知度は十分とは言えない部分があります。今後は、より多くの社員が制度を目標として意識するよう、動機付けの強化にも取り組んでいきます」

学びが広がる企業文化の醸成を目指して 

「知る」「相談する」「学ぶ」「挑戦する」の4つの柱を中心とした施策を通じて、同社には社員同士が刺激し合い、学びが連鎖的に広がる企業文化が生まれつつあります。

小山さんは、Udemy Business活用の今後について次のように話します。

「今後は、Udemy Businessで学んだ内容を実務で実践し、具体的な成果に結び付ける取り組みを進めていきます。学びを個人のキャリア開発につなげると同時に、会社の成果も上げることで、学びと実務が循環する仕組みを築いていきたいと考えています」

田瀬さんは、今後の展望について次のように語ります。

「社員一人ひとりが学びの機会を活かし、実務を通じてスキルを高めていくことが重要です。そのためには、人事からの情報発信だけでなく、学びを実践し、成果を上げている社員が周囲に良い影響を与え、学び合いが自然に広がる文化の醸成を目指していきます」

その実現に向けて、同社は自律的キャリア開発支援をさらに拡大するとともに、他社との共創を一層強化していく方針です。

「Udemy Businessを活用している企業様と、学びを事業成果に結び付けるための活用方法や、社員の学習意欲を高めるための工夫などについて情報交換を行っています。今後もさまざまな企業様との交流を通じて、学びの循環を広げていきたいと考えています」(小山さん)