CASE STUDY

互いの知見と最新技術の掛け合わせによるDXの推進とともに、社会課題解決に向けたシナジーにも期待

ベネッセはDIF(Benesse Digital Innovation Fund)を通じて、ITシステム開発を手掛けるアルサーガパートナーズ株式会社へ出資するとともに、グループの事業および組織のDX推進を加速するため、業務提携契約を締結した。提携の背景や両社が生み出すシナジー、今後へ期待することを、アルサーガパートナーズ株式会社 代表取締役社長 CEO/CTOの小俣 泰明氏と、ベネッセホールディングス 財務部 財務戦略課課長で、Benesse Digital Innovation Fund アシスタントファンドマネージャーの杉田 直樹氏に聞いた。

小俣 泰明

アルサーガパートナーズ株式会社
代表取締役社長 CEO/CTO

日本ヒューレット・パッカード、NTTコミュニケーションズなど大手ITベンダーで技術職を歴任し、システム運用やネットワーク構築などのノウハウを習得。2009年にソーシャルゲーム開発において業界トップクラスであり、東証JASDAQに上場のクルーズ株式会社に参画し、取締役に就任。翌年、技術統括担当執行役員に就任し、CTOとして大規模WEBサービスの開発に携わる。2012年に退任して、ITベンチャー企業を創業し、代表として3年で180名規模の会社にする。2016年にアルサーガパートナーズ株式会社を設立。

杉田 直樹

株式会社ベネッセホールディングス
財務部 財務戦略課 課長
Benesse Digital Innovation Fund アシスタントファンドマネージャー

大手金融機関にて個人向け事業、海外支店・本店営業部にて法人向け事業などに従事。2019年にベネッセホールディングスに中途入社し、財務戦略全般・出資関連業務などを担当。2021年に設立したDIFにおいて出資業務の推進役を担う。

アルサーガパートナーズの事業内容について教えてください。

小俣氏:DX関連のコンサルティングと、IT開発の2本の事業を展開しています。企業のDX事業を成功へ導くパートナーとして、純国産にこだわり、ビジネス戦略からシステム設計、開発、運用設計まで、豊富な知識と経験をベースにワンストップで全機能を提供しています。

「純国産」にこだわるのはなぜでしょうか?

小俣氏:日本はよくモノづくり大国と言われますが、製造業は今かなり厳しい状況にあります。一方のソフトウェア産業も、大手システムインテグレーターの多くは、オフショア開発と呼ばれる海外で開発する体制をとっていますが、これは世界から見ると、日本では開発をしていないのと同じです。日本国内でしっかり開発する、ソフトウェアとして価値を生み出すということをやらないと、日本の産業がなくなってしまう。

僕はずっとIT領域でエンジニアをやってきて、日本で頑張っていたものがGAFAMのような企業に塗り替えられる歴史を見てきました。iモードのようなプラットフォームも、スマートフォンの時代になってあっという間にAppleやGoogleに取って代わられてしまった。この先もそうならないために、国内に強いソフトウェア産業を育てないといけない。そういう思いで起ち上げたのが、アルサーガパートナーズになります。

両社が資本業務提携に至った理由を教えてください。

杉田氏:グループ内の様々な事業においてDXを進めていくにあたり、資本を入れさせていただいて業務提携をした方が、より深い関係になれると考えました。私たちの資金がアルサーガパートナーズにとって成長の種になってほしいという想いも、もちろんあります。

小俣氏:アルサーガパートナーズがベネッセのDXを全てやれるわけではないので、様々な領域ごとにそれぞれマッチしたところが選ばれていくと思いますが、その中で出資をするという選択肢をとったほうが良いところもあれば、個別の案件としてかかわるほうがいいという場合もあると思います。ベネッセとアルサーガパートナーズは出資という柔軟な形で連携していくことにより、これまで以上のシナジー効果を生み出し、お互いに大きな価値が創出できると考えました。

DX推進のパートナーとして、アルサーガパートナーズを選んだ決め手は何ですか?

杉田氏:ベネッセの事業は幼児からシニアまでお客様も幅広く、それぞれにビジネスモデルも違いますし、お客様側から見たDXの許容度や理解度も違います。それぞれの事業のフェーズに応じたDXの推進と、組織のDX能力の向上。この2つを掛け合わせてDXを推進していくというのが、当社のDX戦略です。

アルサーガパートナーズは、IT戦略とか案件の企画といった上流のところから、実際の開発とか保守とかいう下流のところまで、一気通貫のワンストップで提供されていることが特徴です。私たちの事業に対しても、それぞれのフェーズに合わせたDXであるとか、組織能力の向上というところで、幅広く価値を提供いただける。そういう意味で素晴らしいパートナーだと感じています。

もちろん日本の社会構造や社会課題、現状を打破していくというチャレンジングな姿勢、志の高さみたいなところにも共感するところがあって、資本業務提携を決めさせていただきました。

資本業務提携によって期待することを教えてください。

杉田氏:やはりDXへの幅広い貢献ということになると思います、今依頼させていただいている案件も、アプリ開発、Webのリニューアルや更新といったものから、新規事業の企画まで、すでに幅広く貢献をしていただいていいます。小俣さんもそうですし、アルサーガパートナーズの主要メンバーの皆さんはこれまでに新しい事業を立ち上げて、成功されてきた実績や経験をお持ちなので、私たちの新しい事業についても単純に開発をお願いするだけでなく、企画のところから深く、幅広くかかわっていただいて、一緒に立ち上げていけたらいいなと思って、期待をしています。

小俣氏:新しい事業でいえばIT領域ではこれまで、だいたい7年くらいの周期でビッグバーンが起こっています。たとえばスマートフォンの誕生によって、そこで遊べるソーシャルゲームのような新たなビジネスが生まれるといったことが、繰り返し起こってきました。そのときに最先端の技術を最速で形にして、事業につなげられる状況を作るのが、僕らにできる貢献だと思っています。2023年には生成AIが大きな話題を集めましたが、弊社はその領域の開発でも国内ではかなり進んでいると自負しています。

杉田氏:実際に、アルサーガパートナーズの新しい技術とか領域に対する感度の高さは、一緒に仕事をさせていたく中で日々実感しています。ちょうど昨日も、生成AIに関する技術を見せていただきながら、それを教育事業に展開していくとこういう可能性があるという話をいただいていました。そういう踏み込んだ話ができるのも、資本をも入れさせていただいているからこそ。当社の事業である教育とか介護と最先端の技術をどう掛け合わせるかというところに、常にアンテナを張ってくださっている。だからこそ私たちの事業の中でデジタルをどうやって活かすかというところの掛け合わせも、うまくできていくのではないかと思います。

出資を含めた提携によって、どのような価値が得られたと思いますか?

小俣氏:出資していただくことで弊社の財務状況なども全部見ていただくので、そういう信頼感の中で開発ができるのは大きいと思います。定期的に責任者クラスの戦略定例会議を行っていますが、進行中の様々なプロジェクトを俯瞰して見て軌道修正するとか、そういう取り組みができています。DXの領域の情報交換や、プロジェクトを俯瞰したチェック体制のような組織構造を、出資後の1年で構築できているというのはとても大きな価値じゃないかと思います。

杉田氏:そうですね、そこはまさに大きな価値だと思います。案件ごとに初めましてだと機微を感じ取れないみたいなこともありますが、戦略定例会議を通じて関係性を近く持ってそれがさらに時を経ていくと、お互いの機微を感じ取れる部分もさらに出てくる。ある程度お互いの機微がわかる会社が、取引先のそのひとつにあるということは、プロジェクトを安定稼働させていくという意味で、とても価値のあることなのではと思っています。

今後どのようなシナジーを生み出していきたいと考えていますか?

杉田氏:ベネッセが提供しているサービスの価値どう上げていくか。その答えはDXだけではないと思いますが、私たちが長い歴史の中で培ってきた教育、介護といった領域の知見と、デジタルの力を掛け合わせることで、企業理念である一人ひとりが「よく生きる」ための価値をさらに大きくすることができると信じていますし、そこを一緒に伴走してくれるパートナーとしての期待が大きいです。

小俣氏:DXによってベネッセの各事業の価値を高めるのはもちろんですが、少し長い目でみたときにも、両者で生み出せるシナジーは大きいと思っています。たとえばベネッセでもプログラミング教育を手がけられていますが、その教育を受けた子どもたちが大人になって、将来プログラミングの仕事をやりたいと思ったときに、日本では仕事がないという状況にもなりかねません。両者が協力体制を作ることが、将来の子供たちに国内でエンジニアとして働ける環境を用意してあげること、日本でやりたい仕事に就けて充実した人生を送れることにもつながっていく。そういう状況を一緒に作っていきたいと考えています。

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