EPISODE
人と社会の
「Benesse(よく生きる)」
をめざして
【進研ゼミの進化:後編】
50年以上の知見の蓄積と生成AIが拓く、高校生の新しい学び方
50年以上の知見の蓄積と生成AIが拓く、高校生の新しい学び方
高校生進研ゼミデジタル
家庭学習カンパニー 高校生事業本部 本部長
永田 祐太郎
2026年4月、「進研ゼミ小学講座」「進研ゼミ高校講座」が新しく生まれ変わります。それぞれの開発の背景や新たに始まるサービスの特長について、講座責任者の思いとともにご紹介します。
本記事は後編、「高校講座」についてお届けします。大学入試の多様化や生成AIの進化を背景に、今の高校生に届けたい学びとは。「高校講座」の責任者である永田に、話を聞きました。
大学入試が多様化する今、高校生が必要とする学びとは
- ―
- 2026年4月に「進研ゼミ高校講座」がリニューアルしてスタートします。新たな開発に取り組む決断をした理由を教えてください。
- 永田
- いまは大学入試が多様化しています。学力試験中心の一般選抜だけでなく、総合型選抜や学校推薦型選抜などが増え、直近では一般選抜でない入試の方が多くなっているほどです。そうなると、1回の入学試験で高得点をねらう勉強だけでなく、高校1年生から日々の授業をきちんと理解し、定期テストで確実に得点を重ねて内申点につなげることが大切になってきます。これまで「進研ゼミ高校講座」では、入試に向けた勉強と、授業理解・定期テスト対策、どちらも重視してきたのですが、このような変化を受け、思い切って、授業理解・定期テスト対策に注力する講座に刷新する決断をしました。
- ―
- なぜ、今だったのでしょうか。
- 永田
- もう1つの背景として、AIの進化があります。高校の授業は、本当に様々です。進度がばらばら、教科書を使わない先生もいらっしゃる。学校の授業にぴったりの教材を届けることはかなり難しいです。ですが、生成AIを使えば、高校生一人ひとりにあった学習を届けることができるのでは、と考えました。日本の高校生の約6割が、勉強でわからない問題に出合った際に生成AIに質問している(「高校生の意識・まなび調査2025」進研ゼミ高校講座)状況もふまえ、実現できると確信を持ちました。
長年培われた「進研ゼミ」の知見を、生成AIで活かす
- ―
- 具体的に、講座の特長を教えてください。
- 永田
-
大きく2つあります。1つは「AI定期テスト」、もう1つは「AIチューター」です。
「AI定期テスト」は、学校で配られるプリントなどに記載されたテスト範囲を撮影すると、学習すべき範囲とそれまでの学習履歴を掛け合わせ、その人が高得点をとるために最適な問題を、テストまでの期間を考慮した量で、提供する機能です。
もう1つの「AIチューター」は、わからない問題についての疑問をその場で解消できるものです。まずヒントを提示し自分で考える機会を設けた後に、丁寧な解説に進みます。さらに理解度を確認し定着させるため、関連する講義や類題への取り組みを提案します。単に解答や解説を示すのではなく、「考える→わかる→解ける」のステップを踏むことで、解説を見て「わかったつもり」で終わらせない、たしかな理解につなげます。
- ―
- AIチューターは、2025年、Google Cloud主催の生成AIイノベーションアワードで、最優秀賞を受賞しました。特に「図解」が評価されたとのことですが、図解にこだわったのは、なぜでしょうか。
- 永田
-
まずはユーザー視点で、文字ばかりだとわかりにくいからです。もう1つは、これまでの「進研ゼミ」の価値を受け継ぐためです。通信教育では、一人で解説を読んで理解いただくことが大事です。そのために提供してきた丁寧でわかりやすい解説が、ずっと続いてきた「進研ゼミ」の価値であり、強みでした。その価値を、新講座でも残したい、AIでも再現したいと考えたときに、わかりやすい図解を活用することが有効だと考えました。
図解を含め解説は、「進研ゼミ」が50年以上にわたり蓄積し、改良を重ねてきた解き方のデータベースから抽出しています。クオリティの高さは自負していますし、試作段階で高校生に使ってもらった際、まずみなさんが評価してくれたのは「解説がどこよりもわかりやすい」ということでした。
AIが身近になる中で、わからない問題にぶつかるとAIで直接答えを確認するという使い方が広がっています。その使い方自体は止められませんが、私たちはその場しのぎではない、「使ったら学力が上がる」ものを届けたかった。そこで、AIを使用してただ答えや解説を提示するのではなく、「進研ゼミ」が長年培ってきた知見をAIで活かす形で表現する機能をつくりました。
中高生のリアルな声を反映し進める開発
- ―
- これだけの開発を少人数で、スピード感を持って進めているとのことですが、制作やチーム運営において工夫していることはありますか。
- 永田
- ユーザー視点をできる限り取り入れたいので、プロダクトづくりには中学生や高校生にも協力してもらい、リアルな声を反映しています。これまでの経験上、一度会って意見を聞くだけではなかなか本音は引き出せないものです。そのため協力者を募って「アプリ開発室」のようなLINEグループを作り、千人以上の中高生と、日々やり取りをしながら率直な意見を集めています。全く想定していなかった観点からの指摘を受けることも多く、まさに一緒に作っているという感覚です。
- 永田
- また、チーム運営としては、メンバーにかなり裁量を持たせています。相談を受けた際、「そこは自分で決めて」と促すこともあります。そうすると、決断する過程において自分に足りないものが見えてくるので、その人はインプットを増やし成長します。その姿を見た周囲が刺激を受け、自分も、と努力する好循環が生まれます。互いに切磋琢磨し伸びて行けるようなチームを目指しており、チームの誰もが「キーパーソンは自分だ。自分が事業を作っている。」と自覚できるマネジメントに力を入れています。決裁の段階も少なくなるので、スピードも明らかに向上しました。
- ―
- 今後、「進研ゼミ」をはじめとする教育サービスを通じて、実現していきたいことはありますか。
- 永田
- 変化の激しい世の中においても5年後、10年後も使える、価値の高い学習サービスをつくりたいです。それを、通信教育だけでなく様々な教育現場においても使えるように広げ、勉強がうまく進められない子どもたちに役立ててもらいたい。また、受験をゴールとするだけではなく、その先の将来やキャリアにつなげられるようなサービスへと進化させていきたいとも考えています。
- 永田 祐太郎(Yutaro NAGATA)
- ベネッセコーポレーションでDX活用の先駆的事例となるサービス開発に携わった後、小学生~高校生向けに展開する「進研ゼミ」のオンライン講座の基盤開発を担当。オンラインの習い事サービス「チャレンジスクール」を立ち上げ、責任者を務めながら、2025年4月より高校生事業本部本部長として、新講座開発を推進する。
※ご紹介した情報、プロフィールは2025年12月取材時のものです。