デジタル推進員制度×学びの環境整備でつくる、明石市の実践型DX文化
デジタル推進員制度×学びの環境整備でつくる、明石市の実践型DX文化

明石市 総務局 デジタル推進課 課長
木下 集(きのした あつむ)さん
2000年入庁。広報課、シティセールス課、市長室などを経て2024年からデジタル推進課書かない窓口、行かない窓口など窓口改革に取り組む。

明石市 総務局 デジタル推進課 係長
寺田 浩章(てらだ ひろあき)さん
2007年入庁。障害福祉課、土木総務課等を経て、2022年からデジ
タル推進課。デジタル化ツールの導入、デジタル人材育成等を担当。
目次
・
DX推進の転機となった、オンライン申請とデジタル推進員制度の導入
・
デジタル推進員の任命では「職員自ら立候補すること」にこだわった
・
デジタル推進員の個別のニーズに応えるため、学習環境を整備
・
「デジタル推進員見本市」で成功事例を共有。庁内DXの横展開が進む
・
市民にやさしいDXを実現に近づける鍵は「一人ひとりの人材の力」
明石市は令和5年度にデジタル推進員制度を立ち上げ、デジタル推進課による組織横断的な支援を組み合わせながら庁内DXに取り組んできました。令和7年度からは兵庫県の共同調達のもとでオンライン学習環境の整備を行い、デジタル人材の育成を行っています。
デジタル推進員制度は多くの自治体で導入されていますが、明石市の取り組みにおいて特徴的なのは、職員の自主性を重んじていること、そして現場での実践を力強くバックアップしていることです。この制度が誕生した背景と得られた成果、そして今後取り組みたい内容について、デジタル推進課の木下さん・寺田さんにお話を伺いました。
寺田:令和4年度に立ち上がったデジタル推進課は、行政サービスのオンライン化や窓口改革、デジタル人材の育成など、広くDXを推進する部署です。「明石市行政DX(デジタル改革)推進方針 」に則って、職員の業務効率化を図ることはもちろん、市民サービスの利便性向上・スピードアップに向け、数々のデジタル化の取り組みを進めてきました。
木下:明石市のDXが大きく前進した転機の一つに、オンライン申請の導入があります。職員にとって使いやすいツールだったことと、市民の皆さんからの寄せられた「役所に行かずに手続きできたら」というニーズも相まって、想像以上に速いスピードで庁内に広がりました。また同時期に庁内チャットツールも導入し、情報共有スピードが飛躍的に向上しました。
しかし、単にツールを導入するだけでは、行政の仕組みは変わっていきません。ツール導入と人材育成を車の両輪としてとらえ、人材を起点としてDXを進める「実践型の育成」を大切にしている点が、明石市の大きな特長です。
寺田:両輪を強化するために力を注いでいるのが、令和5年度からスタートした「デジタル推進員制度」です。デジタルツールを使いこなす職員を増やし、庁内の実務で活用・実践する機運を高めることをねらいとしています。
寺田:デジタル推進員制度は、「デジタル技術を使って現場の課題を解決したい」と考える職員が自ら手を挙げて参加する取り組みです。現在、62名がデジタル推進員として活動しています。
制度設計で最も議論した点は、「デジタル推進員を各課から1名ずつ選ぶ方式にするか、職員の手上げ方式にするか」です。もちろん、全課に1名ずつ配置すれば非常にわかりやすく、制度も成立しやすいです。一方で、現場の職員目線では「やらされ感」が芽生えるのではとの危惧もありました。
木下:管理職の立場からすると「日々忙しい中、デジタル推進員を担う時間が本当に捻出できるのか」という不安はありました。けれども、自ら手を挙げた人が実際に業務改善を成功させられれば、その職員が所属する課も職員本人も、得るメリットはとても大きいです。今ではデジタル推進員がいる課はどんどん効率化が進み、「やってよかった」と話す管理職が増えています。
寺田:現場で働く多くの職員は、自分たちの業務の問題点を把握しています。そのうえで「ここを改善したい」という思いもあるものの、周囲の目が気になったり業務負担が増えることを考え、一歩踏み出せない人も多いのではと思います。だからこそ自分で手を挙げ、その職員にとって最初の一歩を踏み出す事ができたら、組織に対するインパクトも大きいのではと考えました。
木下:時期を同じくして、管理職向けのDX研修を実施したこともポイントだったかもしれません。市全体として「みんなでDXを進めよう」という雰囲気が芽生えました。
寺田:職員自らデジタル推進員に手を挙げてもらうには、次のような要件が必要だと考えました。
やりたいことを応援してもらえる環境の整備
デジタル推進に必要な知識が学べる場
他部署のデジタル推進員とつながり情報交換する機会

そこで管理職研修の実施や、市トップの会議体である局部長会を通じた情報発信などを通してDXの重要性を庁内全体に広げ、デジタル推進員が活動しやすい環境づくりに努めています。
また知識・スキルの習得にはUdemy Businessを活用し、それぞれのデジタル推進員が必要なことを個人のペースで学べる環境を提供しました。明石市では令和5年度からUdemy Businessの導入を開始し、令和7年度からは兵庫県による共同調達に切り替えて職員の学びの場を整備しています。
木下:デジタル推進員に手を挙げることは、職員にとって非常に勇気が必要な行動であり、不安も大きいはずです。その不安を解消するアプローチの一つとして、現場に即した実務的なスキルが学べるサービスを検討した結果、Udemy Businessが適切だと考えました。
寺田:共同調達によって、導入コストは明石市が単独で契約していた頃より安くなりました。また県が調達する信頼感のもと、明石市としても安心して導入できるメリットがありました。
寺田:それぞれのデジタル推進員が取り組むテーマは、手続きのオンライン化・調査業務のデジタル化・業務フローの自動化など多様です。デジタル推進員が活動を開始して以降、さまざまな部署で成果が出ており、業務時間の削減では年間600時間の効率化を行ったり、2万枚の紙書類削減につながった例もあります。
デジタル推進員制度のポイントは「実践して終わりではない」こと。推進員同士が情報を共有し、その成果を庁内に広く知らせつつデジタル化の機運を高めるためのイベントも開催しています。その一つが、令和6年度に実施した「デジタル推進員見本市」です。
3日間にわたって開催されるこのイベントでは、講演会やデジタル推進員による事例発表などを行います。昨年度は、明石市の職員だけでなく、DX推進に興味を持つ県内外約50自治体からも見学いただきました。オンライン・オフラインを含めて多くの参加者が集い、明石市のDXへの取り組みを知っていただく機会となりました。また庁内では、DXの成功事例を見える化したことにより、他部署への横展開やサポートが進むきっかけにつながりました。
木下:見本市に登壇したデジタル推進員は、自信を得てさらにDXへ取り組むようになります。また、管理職層が他部署の成功事例を見て「うちでも試してみよう」と前向きになったとの声も届いています。これらの取り組みにより、庁内の空気が徐々に変化しています。
寺田:令和7年度からは、新たに「庁内デジタル推進支援制度」を開始しました。これは「業務をデジタル化したいが、経験やノウハウがない」と悩む部署と、蓄積した経験・知識を生かすことができるデジタル推進員とをマッチングする取り組みで、デジタル推進員が部署の垣根を超えてデジタル化の支援ができるというものです。すでに15件ほどマッチングが進み、支援を受けた部署からも好評を得ています。

木下:デジタル推進員は、自身のDXの活動を人事評価シートに記載することができます。人事部門と協働して人事評価制度マニュアル内に「デジタル・IT」の文言を入れ込み、職員が日頃からDXへの意識を高める仕掛けも整備しました。これにより、ますます庁内の機運醸成が進むのではと期待しています。
寺田:DXは目的ではなく、市民サービスをより良くするための手段。だからこそ、職員一人ひとりがデジタル技術を使いこなしながら、「今の業務を市民にとってより良いものにするには?」と考えることが重要です。
今後の目標は、デジタル推進員制度を明石市の文化として根づかせることです。「明石市といえばデジタル推進員」と言われるまでに育て、より多くの職員が誇りをもってDXに取り組む明石市にしたいですね。
木下:明石市はこれまで、着実な DX の取組を進めてきました。市として掲げるスローガン「市民にやさしいインクルーシブなDX」のもと、デジタル技術の活用によって多様な市民ニーズへの対応と、市民に寄り添う行政サービスの実現を目指しています。
ツールを導入するのは私たちの役割ですが、それを活かすのは職員一人ひとりです。技術の進歩にしっかりとキャッチアップしつつ、職員が「やってみたい」を実践できる環境を整えることをこれからも大切にしていきたいです。
関連記事はこちら
Contact
各自治体の課題やご要望に応じて、 学び方のご紹介、プランに応じた
お見積りも行っております。 お気軽にお問い合わせください。
各自治体の課題やご要望に応じて、 学び方のご紹介、プランに応じたお見積りも行っております。 お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ
Copyright © Benesse Corporation, Inc. All rights reserved.