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自ら学び実践する職員が組織を変える。尼崎市の“全職員DX”への取り組み

自ら学び実践する職員が組織を変える。尼崎市の“全職員DX”への取り組み

尼崎市 総務局 デジタル推進課 係長<br>藤原 悟(ふじわら さとる)さん

尼崎市 総務局 デジタル推進課 係長
藤原 悟(ふじわら さとる)さん

2014年入庁。市有地の管理・活用やBPO推進を担当後、現在はデジタル推進課で全庁的な業務改革・DX人材育成・ペーパーレス化等の推進に従事。

尼崎市 総務局 デジタル推進課 書記<br>松井 翔吾(まつい しょうご)さん

尼崎市 総務局 デジタル推進課 書記
松井 翔吾(まつい しょうご)さん

2021年入庁。情報政策課で市民サービス向上・業務改善を担当。現在はデジタル推進課で全庁的な業務改革・DX 人材育成・ペーパーレス化等の推進に従事。

目次

点から面へ。デジタル推進課が描く“現場とともにあるDX”

「選ばれ続けるまち・職場」をめざして。市民・職員目線の両輪で掲げた構想

オンライン学習・集合研修・伴走支援の3本立てにより、現場に成果が見え始めた

「見える化」が意識を変える。DXダッシュボードで幹部職員の意識も向上

職員が自ら課題を見つけて解決策を見出し、変革が進む組織をめざして

人材不足が加速する中、自治体のDX推進ではツール導入だけでなく、現場の課題を自ら見つけ改善できる職員の育成が求められています。そこで兵庫県では、各自治体が自ら学び続ける文化の醸成をめざし、令和7年度より共同調達による研修環境の整備に乗り出しました。尼崎市もこの共同調達に参加し、庁内のデジタル人材育成に取り組んでいます。
尼崎市では、紙を電子データに置き換える「単純なデジタル化」からさらに一歩進み、庁内の業務改革とツールを使いこなせる人材の育成を一体的に推進しています。その取り組みの中心にいるのが、総務局デジタル推進課です。学びを起点とした庁内DX推進の仕組みと成果についてお話を伺いました。

点から面へ。デジタル推進課が描く“現場とともにあるDX”

尼崎市デジタル推進課は、2年前までは各課の要望に応じて個別にツールを活用した業務改善などを支援する形で活動していました。しかし、単発の改善では庁内全体のデジタル化に至らない点と、デジタル推進課以外の職員の知識やスキルが向上しないという課題が見え始めました。
そこで、令和6年度からは支援のあり方を「点」から「面」へと転換。個別の業務を改善するのではなく、業務全体を俯瞰するBPR(業務プロセス改革)や効果測定・システム要件定義にまで踏み込む「一貫した伴走体制」へとシフトしました。

その代表的な取り組みが、子どもの育ち支援センターのプロジェクトです。ケースワーカーが主な業務として行う相談・支援の時間を計測し、1回の平均時間から1年間の業務量に換算しました。そのうえで、業務のどのプロセスに最も時間がかかっているのかを分析し、導入すべきツールの要件を整理していきました。このようにデジタル推進課が現場に入り込んで伴走することで、業務改善への道筋ができ、予算要求につなげることができました。

「選ばれ続けるまち・職場」をめざして。市民・職員目線の両輪で掲げた構想

尼崎市が令和5年度から令和7年度までの3か年計画として公表した「あまがさき共創DXプラン」は、市民と職員の両方にアプローチする点が大きな特長です。
市民に対しては、サービスの向上・拡充によって「選ばれ続けるまち」を実現すること。職員に対しては、多様な働き方の中で生産性を高め、「民間企業と比べても選ばれ続ける職場」をめざすことを掲げています。この両立を支える6本柱の一つに、職員の人材育成が位置づけられています。
人材育成とは、単にデジタルツールの使い方を学ぶことではありません。業務プロセスを把握し、「なぜこの業務が必要なのか」と問い直す思考力や、変化に挑むマインドを育てることを重視しています。この考え方をもとに、尼崎市では令和6年度に「DX人材育成の枠組み」として3層のピラミッド構造を設計しました。

最上層のDX専門人材にあたるデジタル推進課が全庁の方針を定め、中間層のDX推進員(各部署に一人配置)が現場の改革をけん引、全庁職員がその取り組みを日常業務に落とし込むという流れです。この構造によって、デジタル推進課だけがDXに取り組む状態から「全庁で取り組むDX」へと変化しています。
令和6年度は、DX推進員に対して「DXゼミ」と呼ばれる集合研修を月1回開き、ノーコードツールの使い方やデータ利活用といった実務に直結するテーマを学んでいました。一定の効果はあったものの、職員からは「研修終了後に学習を進める時間的余裕がない」「現場でDXを進めたいが、スキルが追いつかない」という率直な声がありました。
そんな課題を受け、令和7年度からは月1回のDXゼミに加え、DX推進員に対し、兵庫県の共同調達を活用したオンライン学習プラットフォームUdemy Businessの提供を開始しました。DX推進員が個人のレベルに合わせて、いつでも必要な知識・スキルを得られる環境を整えることで、現場の業務に精通した職員が自ら学び課題を解決できる状態をめざしています。

オンライン学習・集合研修・伴走支援の3本立てにより、現場に成果が見え始めた

さらにオンライン学習と実践を結びつける取り組みとして、尼崎市では令和7年度から「DX推進員は業務の約10%(年間約170時間)をDX関連業務に充当すること」を定めました。年度初めにDX推進員がそれぞれDX関連のミッションを設定し、年度末までに成果を取組報告フォーム(報告内容を庁内グループウェアにて展開)や発表会を通じて庁内に共有します。加えて、従来の「DXゼミ」も継続して行い、DX推進員同士の情報交換が加速するようチャット形式のコミュニティを形成するなどモチベーションアップを促しています。
さらに、学んだ知識・スキルを発揮したくても「どうすればいいかわからない」と悩むDX推進員が多い実情もありました。そこでデジタル推進課では「DXパーソナルアシスト」として、DX推進員1人につき年1回の伴走支援が受けられる体制を構築しました。
「オンライン学習(Udemy Business)+月1回の集合研修(DXゼミ)+個別伴走支援(DXパーソナルアシスト)」の3本立てにより、学習を個人の努力ではなく業務の一部として位置づけ、学びに対する心理的ハードルはもちろん、DXを現場で実践しやすくなったとの声も聞かれています。

現場ではすでにいくつかの成果が見られます。たとえば、ある職員はRPAを独力で構築し、業務自動化を実現。また別の事例では、DXパーソナルアシストを活用し消防操法大会(事業所向けの消防大会)の点数集計のデジタル化を達成し、運営効率が大幅に向上しました。こうした成功体験が職員の意欲を刺激し、「自分にもできる」という当事者意識を育んでいます。

「見える化」が意識を変える。DXダッシュボードで幹部職員の意識も向上

デジタル推進課では、学習促進のためグループチャットで視聴状況を共有する取り組みを行っています。DX推進員に「先月より学習時間が増えています」と声をかけたり、「朝の出勤準備をする時間や通勤時間中に動画で学ぶのがおすすめです」とデジタル推進課職員の学習方法について情報発信するなど、押しつけではなく互いに学び合う雰囲気づくりを大切にしています。
さらに、学びと実践を可視化する仕掛けとして「DXダッシュボード」を導入しました。これは、行政手続のオンライン化率やペーパレス化率を可視化し、部局単位の成果をリアルタイムで確認できるというものです。

当初は「あまがさき共創DXプラン」で定めた目標をダッシュボードによって見える化することが目的でしたが、このダッシュボードを見た職員が「自分の部署のペーパレスが進んでいない」と課題感を感じ、紙で行っている業務のデジタル化を検討し始めたという事例もあります。ダッシュボード導入による見える化から生まれる前向きな競争は、当事者意識の醸成と各部署が自走するDXの基盤となり、幹部層を巻き込んだ庁内全体の意識向上にもつながっています。
これらの風土づくりの裏側では、デジタル推進課が中心となって人的面の組織運営を司る人事課や行政管理課と協働し、根拠となるデータをもとに説得を重ねた結果「DXは一部の人が行う活動ではなく、尼崎市全体で解決すべき課題」として理解が進み、組織全体で学びや改革を進める制度を構築できたことが大きいと感じています。

また、Udemy Businessの導入では兵庫県の共同調達を活用したことで、尼崎市だけで調達するよりも低いコストで学習環境を整えられました。さらにキックオフや中間発表会といった、共同調達に参加する各自治体の現状を知る機会もあり、職員育成ノウハウや学習に関する困りごとを相談できる場があるのは非常に助かっています。こうした横のつながりにより、地域に学びの輪を広げるきっかけになればと考えています。

職員が自ら課題を見つけて解決策を見出し、変革が進む組織をめざして

尼崎市は現在、「あまがさき共創DXプラン」に続く次のプランを策定中です。引き続き「市民に選ばれるまちであること」「職員にとって働きがい・成長実感のある職場であること」の両軸を継続する方針を掲げつつ、職員一人ひとりが日々の業務の中で課題を見つけ、学びをいかして改善し、成果を共有するサイクルをより加速することをめざしています。
その過程では、デジタル推進課がDXの知見を持つプロとして現場を支えることも重要となります。DXパーソナルアシストの仕組みをはじめ「現場とともに考え、一緒に行動を起こす関係性」が、庁内のDXに対する不安を軽減し、デジタル推進課も現場の様々な問題や運用を実務レベルで把握することで新たな取り組みに挑戦する後押しとなっていると感じます。
それが尼崎市役所で働く楽しさや成長実感となり、同時に市民サービスの向上にもつながって、「生涯にわたって住みたい・働きたい尼崎市」を形づくるのではないでしょうか。

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