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人材育成計画は永遠のプロトタイプ。兵庫県が進める共同調達と学習文化づくり

人材育成計画は永遠のプロトタイプ。兵庫県が進める共同調達と学習文化づくり

兵庫県 企画部 デジタル改革課 デジタル改革推進班<br>藤本 洋(ふじもと ひろし)さん

兵庫県 企画部 デジタル改革課 デジタル改革推進班
藤本 洋(ふじもと ひろし)さん

2014年入庁。大学院派遣研修等を経て、2021年より現職。庁内業務改善を担当後は一貫して個人番号連携システム関係業務に従事。

【聴き手】

株式会社ベネッセコーポレーション 社会人事業本部 市場開発部 稲葉 創士(いなば そうじ)

2019年入社。高等学校支援を経て、地方創生の実現に向け2023年より現職。関西・東海の自治体職員のDX人材育成を支援。

目次

自治体DXの土台となる人材育成が急務──兵庫県が抱えていた課題

画一的な研修ではDXが進まない。対面からオンライン学習への転換

デジタル人材が育つ現場づくりに欠かせないのは「人材育成計画」

「学びの枠組みを作り、自走を支援する」兵庫型共同調達のモデル

学び続ける文化をどうつくるか。兵庫県のDX推進・デジタル人材育成の未来

 様々な人口規模・組織体制の市町が共存する兵庫県では、各自治体のニーズに合ったデジタル人材育成が喫緊の課題となっていました。そこで兵庫県は、各自治体が自ら学び続ける仕組みを構築できるよう、兵庫県電子自治体推進協議会(以下、協議会)を通じた共同調達による研修環境の整備に乗り出しました。
 今回お話を伺ったのは、その推進役である兵庫県デジタル改革課の藤本さんです。各自治体への丁寧なヒアリングや現場のニーズに合った学びの環境整備を進める藤本さんに、兵庫県の自治体DXの未来を伺いました。

自治体DXの土台となる人材育成が急務──兵庫県が抱えていた課題

藤本:兵庫県は人口およそ530万人を有し、41の市町があります。148万人が暮らす神戸市のような大規模自治体もあれば、住人が1万数千人の町もあり、各市町の規模は様々です。特に小規模の市町では、デジタル関連部署に多くの人員を割くのが難しい現状があります。他の業務と兼務、あるいはデジタル担当者が1人の自治体もあり、近年求められる行政のDX化に対応できる知識・スキルを持った人材が行き渡っていないことが課題となっていました。
コロナ禍をきっかけとして社会全体でデジタル化の機運が高まりましたが、兵庫県でもオンライン化のニーズは一気に顕在化しました。同時期に国ではデジタル庁が発足し、自治体にデジタル部門を置く動きもあり、一定規模の市町ではその流れに応じて職員の在宅勤務や窓口DX化(行かない窓口)に対応しました。

しかし、すべての自治体にそのような取り組みを行き渡らせるには、DXを効果的に推し進められるスキルを持った人材が必要です。デジタルツールを導入するだけでなく、それらを使いこなして変革を推進する人材をいかに育てるかが大きな課題でした。

画一的な研修ではDXが進まない。対面からオンライン学習への転換

藤本:兵庫県ではこれまで協議会を通じて対面研修の機会を設けてきましたが、各自治体の規模や抱える課題の差が大きく、画一的な研修ではニーズに合わないと感じていました。例えば、一つの庁舎で業務を行う自治体と、庁舎が複数ある自治体では、DXにおいて必要な知識・技術・システム要件なども大きく異なります。また、ガバメントクラウド移行によってAWSなどの実務に直結した最新の知識が求められるなど、自治体の規模に応じて「職員が必要な学びを必要なタイミングで得られる環境」が不可欠だと考え、eラーニングを共同調達する方向で検討していきました。

ベネッセ稲葉:eラーニングを選ぶうえで重視していたのはどういった点ですか。

藤本:複数のサービスを比較検討し、内容の最新性と、かゆいところに手が届くコンテンツの幅広さの2点を重視しました。もともと価格が安いサービスよりは、元値は高くても質が良いものを共同調達し、各自治体が本当に価値を得られるサービスを導入する方がメリットは大きいと考えていました。それこそが当初考えていた「それぞれの自治体で必要とされる学びを必要
なタイミングで得られる環境づくり」の実現に近づけるとの思いもあり、Udemy Businessの導入を決めました。

デジタル人材が育つ現場づくりに欠かせないのは「人材育成計画」

ベネッセ稲葉:兵庫県の共同調達は、2つの大きな特長があると考えています。1つ目は、事前に41市町すべてにヒアリングを行って学習ニーズを吸い上げ、人材育成計画の策定を推奨しつつ、Udemy Businessによる学習環境を提供していること。2つ目は、各自治体が学びを自走できる環境を作っていることです。

特に1つ目のポイントでは、共同調達のキックオフイベントで「人材育成計画の策定から始めましょう」と発信していたことが印象に残っています。他自治体では、学習コンテンツの活用法などの情報提供から入る場合が多いのですが、藤本さんが人材育成計画の重要性を話題にした理由をぜひお聞かせください。

藤本:単に研修コンテンツを提供するだけではなく、「どんな人材を育てたいか」「求められるスキルは何か」「そのためにオンライン学習をどう活用するか」がセットになって初めて、eラーニングによる研修への投資は有効性を増し、次年度以降の継続も可能となります。
その大切な指針となるのが人材育成計画です。デジタル人材の育成・確保はどの自治体でも重要な課題ですが、方針なしに「人材が必要だ」と言っても何も始まらず、学習者側も何を学べばいいのか迷ってしまうでしょう。
今後は、共同調達に参加した市町が互いに情報共有を行い、「あの自治体はすでに計画を立てたらしい」という刺激が連鎖し、自発的に各自治体で人材育成計画の策定が進めばいいなと思っています。

ベネッセ稲葉:はじめに人材育成計画の重要性を伝えたうえで学習を進めたからこそ、兵庫県の共同調達は円滑に進んでいる印象です。また、個人的には人材育成計画は必要に応じて変化させてもいいと思っていますので、数年かけて最適な計画になればいいですよね。

藤本:人材育成計画は”永遠のプロトタイプ”です。一度作って終わりではなく、受講者の学習状況や社会情勢・現場の変化を踏まえ、更新し続けることが重要です。例えば「スタート時はこんな人材が理想だと思ったが、現場の声を聞くと別のスキルにニーズがあるようだ」とわかれば、そのギャップを学びで埋める方法を考え、計画に落とし込むやり方もあります。

「学びの枠組みを作り、自走を支援する」兵庫型共同調達のモデル

ベネッセ稲葉:兵庫県の特長の2つ目として、協議会がラーニングパスを示しながらも「各自治体が独自に作るカリキュラムを尊重する」スタンスも注目すべき点です。学びの枠組みを強制せず、それぞれのニーズにあわせて自走する仕組みを作っていますよね。
また共同調達をきっかけとして、自治体がオープンに情報交換できる場が生まれたことも素晴らしいと思います。情報交換会では、それぞれの市町の人材育成の工夫やUdemy Business活用法を共有しており、私もその場に参加して「自治体同士の交流は重要だ」と改めて感じました。これまで各自治体に閉じていた情報がオープンになったことで、今後さらに人材育成の取り組みが広がっていくことでしょう。

藤本:自治体が個別に導入する場合、コストに対する懸念がつきものですが、共同調達であれば少ないアカウント数から始めることができます。情報部門に限った利用や、全庁から関心のある職員の発掘に利用する等、スモールスタートだからこそ可能だった事例もいくつか聞いています。

学び続ける文化をどうつくるか。兵庫県のDX推進・デジタル人材育成の未来

ベネッセ稲葉:最後に、協議会の今後の展望についてお聞かせください。

藤本:まずは、41市町すべてがデジタル人材育成計画を持つ状態をめざします。そして、計画を更新し続ける文化を根づかせたいですね。そのうえで各自治体が独自の学習カリキュラムを立て、学びの自走が進んでいくことを期待しています。
短期的には、Udemy Businessを導入した市町を中心に学びの文化をさらに広げ、未導入の市町からも関心が寄せられるような大きな流れを作りたいと思います。そして同時進行で人材育成計画の立案も行い、各自治体のニーズに沿った計画が定まることで、より良い人材育成につなげます。DX推進やデジタル人材育成は終わりのない取り組みですので、今後も各市町と連携しながら、兵庫県全体の行政DXを加速させる礎を作っていければと思います。

ベネッセ稲葉:協議会として「各市町が自走して学べる仕組みづくり」を最優先に進める姿勢は、単なる共同調達ではなく、質の高い行政サービスの構築に向けた力強い歩みだと感じます。兵庫県のさらなる進化が楽しみになるお話でした。本日はありがとうございました。

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