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“学びを科学する” 「進研ゼミ」分析センター 新たな教育を⽣み出す
源流
260万⼈のビッグデータ

データソリューション部 國吉

デジタル学習によって蓄積された学習記録データの分析を通し、学習効果の⾼い学びを追求している「進研ゼミ」の分析センターを取り上げる。
昨今はスマートフォンやタブレットを活用した学習スタイルも増え、学習を科学的に分析することが可能になってきている。また収集したビッグデータを活かした、一人ひとりにあわせた学習(アダプティブラーニング)の実現に対する期待も高まっている。「進研ゼミ」の分析センターでは、どのようにビッグデータを活用し、そこから何が見えてきたのか。データソリューション部 國吉に詳しく聞いた。

問いを立てながら、“学びを科学”する

「成績の伸びた子どもはどんな学び方をしているのだろう?」

「進研ゼミ」の分析センターは、問いを立てながら、分析を通して、学習効果の高い学びを追求する部門だ。デジタル教材の膨大な学習記録データを分析し、どうしたら学習効果を高めることができるか、どうしたら学習習慣をうまく身につけられるか、その法則をみつけている。問いを立て、膨大なデータを分析し、商品やサービスをどのように進化していくとよいか提案し、検証することが、同部門の役割となっている。

國吉は分析センターについて「学習効果の高い学び方を解明することをミッションとして掲げ、世の中に貢献したい」と語る。「進研ゼミ」では紙教材がメインだった時代から、データ分析に取り組んでいたものの、紙教材で取得できる情報は限定されていた。塾であれば、目の前に子どもがいて、子どもの様子を確認しながら、授業を進めることができるが、紙の教材による通信教育では、そういったことができなかった。しかし、デジタル教材を導入してからは、紙の教材では難しかった、一人ひとりの学習状態が、リアルタイムでわかるようになり、その学習記録データを活用することで、より学習効果の高い商品やサービスを提供できる可能性が広がってきている。

一人ひとりの学習の理解の状態を解析し、それぞれの人に合った効果的な学習の提供も可能になってきている。分析センターはデータ分析を通して、そういった一人ひとりの学びにもっと寄り添えるような、新しい学び方を生み出したいと思っており、日々活動を行っている。

一人ひとりの学びに寄り添うために
分析から見えてきたこと

「進研ゼミ」と〈こどもちゃれんじ〉で合わせて260万人もの会員数を誇るベネッセの通信教育。分析センターでは、一人ひとりの学びにもっと寄り添い、学習効果を高めるために、デジタル教材の利用者を中心に、学習に取り組んだ日時、解答に要した時間、正誤の学習記録などさまざまな学習データを分析している。このような学習データから、どのような分析結果が得られたのだろうか。

國吉はそのひとつとして、中学生に見られた学習タイプを挙げた。ログイン情報などを分析すれば、一人ひとりがどのように学習に取り組んでいるのか、その様子が可視化できるのだ。その結果によると、「たくさんきて、学習もしっかり取り組むタイプ」「短期集中できて、学習をしっかりやるタイプ」「一定ペースできているのに、学習にはあまり取り組まないタイプ」など、いくつかのタイプに分類できることが分かった。ほかにも、4月最初から頑張る子どももいれば、逆に4月最初はログイン回数が少なくても、ゴールデンウィークあたりから頑張れる子どもがいるなど、細かな状況が分かってきた。今まで詳しく分からなかった教材の活用リズムが明らかになった。

こうしたデータ分析の結果に基づき、それぞれの学習タイプに合わせてアドバイスをしたり、やる気を後押しするようなコミュニケーションを取ったりすることで学習の改善が期待できる。頑張っている子どもは褒めると同時に、上手な学習方法を伝えることが重要であったり、定期テスト前に頑張るタイプには、学習のきっかけになるようなイベントを与えたりするのが効果的だという傾向も見えてきた。

また分析結果を元に、子どもたちへ働きかけも工夫している。たとえば、タブレットの最初の画面に表示するメッセージを、学習者のタイプや学習時期によって個別に出し分けている。「進研ゼミ」を使いはじめたばかりの子ども、しっかり学習ができている子ども、モチベーションが高い新学期のタイミングなど、「どの子どもに、いつ、どんなメッセージを出せばいいか、こだわって考えています」と國吉は語る。学習データを活用することで、生徒に合わせたサポートが提供できるというのだ。

「子どもたちの学びのために」という共通の想いが強み
新しいものを生み出す力へ

このように膨大な学習データを扱う分析センター。國吉はほかにも、一人ひとりの学びに寄り添うために、データ分析を通して、活動してきたことが、実を結びはじめていると話す。

たとえば、2020年3月にリリースされた進研ゼミ高校講座会員向けアプリ「AI StLike(AI ストライク)」は、その代表例だ。同アプリは、AIを活用して、一人ひとりの学習の理解の状態にあわせて数学の問題演習を進めることができる点が特徴だ。問題を間違えると生徒の誤答傾向を分析して、その傾向に応じた問題に取り組めるようになっている。分析センターも商品開発プロジェクトに入り、商品開発チーム、教材編集チームとともに、企画検討を一緒に進めてきた。今後はデータを見ながら、商品をさらに磨いていく予定だ。

「データを活用して、進研ゼミのデジタル教材が進化」

このように「進研ゼミ」の分析センターは、単にデータ分析の業務だけを担うのではなく、時に新商品の開発プロジェクトに入り、企画や提案も行う。データ分析だけでは気づけないことも多いという問題意識のもと、商品開発チーム、教材編集チームといった、様々な力をもったメンバーと一緒に検討を重ねながら、学習効果の高い学びを追求している。

「“子どもたちの学びを良くするためにはどうすればいいか”という目的に向かって、分析していくことが大切だと思っています。「進研ゼミ」では、商品開発チーム、教材編集チームと分析センターが一緒にデータを見て、仮説を出し合い、意見交換をする活動が根づいており、分析結果を教育的な知見に基づいて、深く考察することができます。そして、そこで見つけたことを、新しい商品やサービスにつなげていけることは強みだと思っています。そして何より、そういった検討をたくさんの仲間と一緒にできることはとても刺激的で、楽しいです」(國吉)。

また、商品開発チーム、教材編集チームといった「進研ゼミ」のなかでの意見交換だけでなく、大学との共同研究などを通して、様々な専門家とも意見交換を行っている。出てきた数字だけを見るのではなく、たくさんの人からアドバイスをもらい、多角的な視点で分析結果を考察していくことを地道に続けている。

一人ひとりの成長を応援するために
これからの未来に向けて

これからの学びについて、國吉は以下のように語る。

「一人ひとり、その人ならではの情熱や才能があると思っています。そして、得意なことがあり、苦手なことがあります。今後、教育分野では、そうしたことを踏まえて、一人ひとりの成長を応援する“個別化”された学びが、さらに求められていくと考えています。テクノロジーが進化して、膨大なデータも蓄積されていくなかで、それらをうまく使いながら、子どもたちの学びを良くするためにはどうすればいいか考えつづけることで、これから学びはさらにアップデートすることができると信じています」

アダプティブラーニングに代表されるような個別化された学びは、今後AI時代に向けて需要が高まると言われている。一方で、データやアルゴリズムといったテクノロジーだけに偏重すると、学びの一面だけを捉えてしまい、その可能性を引き出しきれない恐れがある。

子どもたちの学びの軌跡を集積した学習ビッグデータ。その中から、本当に一人ひとりに合う学びの環境を作り上げることができるのか。分析センターの挑戦に今後も期待したい。

取材:2020-03
掲載:2020-05

  • ※部署名やサービス名などは取材当時のものです。

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