Benesse 「よく生きる」

Learners’ Voice 学び続ける大人たち

学びは、
自分の可能性を広げる扉

竹原めぐみさん

動画クリエイター

北海道大学大学院修了後、東京の食品メーカーで商品開発担当として勤務。その後、家庭の事情で地元札幌に戻り、北海道大学で研究室の技術補助員として働きながら、在宅でフリーのクリエイターとして働くことを目標に、2020年、動画制作の学習を独学で始め、わずか半年で独立を果たす。現在は、動画クリエイターとして活躍しながら、初心者から独立を目指すクリエイターを支援するオンライン講座の講師も務める。
「人生100年時代」と言われる現在、人生を豊かにするためには、大人になってからも学び続けることが欠かせません。本コーナーでは学びにより自己実現を果たした方へのインタビューを通して、学ぶ気持ちの後押しや学び続けるためのヒントを発見し、学習者を応援していきます。

今回は、一児の母として育児や家事をしながら、独学で動画制作を学び、動画クリエイターとして独立を果たした竹原めぐみさんにお話を聞きました。

自分の才能を
生かせる仕事をしたいと考え
独学で動画制作を学び始める

動画クリエイターとして活躍している竹原めぐみさんは、After Effectsを使ったモーショングラフィックスやPhotoshopを使った動画サムネールなどの映像制作を手掛けるほか、独立を目指すクリエイターを支援するオンライン講座の講師も務めています。

竹原さんが得意とするのは、前職の食品メーカーで担当していたマーケティングの経験を活かした食品関連の動画制作です。企画内容にもアドバイスを行うきめ細かいフォローが好評で、ジュエリーや化粧品などの動画制作にも活躍の場を広げています。

「独立してよかったのは、自分が面白いと思う動画制作を仕事にできて、お客様に評価していただけることです。依頼者の要望を踏まえて、1から企画を考え、撮影・編集を行い、時にはキャッチコピーも自分で考えます。独立して間もないため、技術的に未熟な部分もあるので、その都度、学びながら進めています」

そんな竹原さんが、動画制作の方法を学び始め、「フリーランスになる」という夢を叶えたまでの期間は、わずか半年。その原動力は、「現状を変えたいという強い気持ちだった」と振り返ります。
「大学と大学院では食品学を専攻し、大学院修了後は東京の食品メーカーで約7年間、商品開発の仕事に携わっていました。しかし、家庭の事情で退職し、地元札幌に戻ることになりました。当時、結婚して子供もいたため、全国転勤があり、勤務時間の長い商品開発の仕事に再就職することは難しく、大学の研究室でパートタイムの技術補助員として働き始めました。職場の人間関係は良好で、居心地はよかったのですが、以前のようなクリエイティブな仕事をしたいと思いました。しかも有期雇用契約だったため、このままではいけないと思っていました」

小さい頃から自分の作ったもので誰かを喜ばせたり、驚かせたりするのが好きだったという竹原さん。自分のアイデアを生かせる仕事をしたいと思い、商品開発の仕事に就いたことを思い出します。
「商品開発の仕事の中でも、私は企画を考えたり、プレゼンテーションの資料を作成したりすることが得意でした。もう一度、クリエイティブな仕事をしたいと考えていた時に、あるクリエイターの『Adobeの After Effectsで動画制作ができれば、仕事が取れる』というブログを読んだのです。当時、趣味で子どもを撮影した動画を編集していたので、『動画制作を仕事にできたら面白そう』と思い、すぐにパソコンを購入し、After Effectsなどのデザインソフトが使用できるAdobe Creative Cloudを契約しました。その頃、コロナ禍で保育園が休園になるなど、子供を預けて働くことの難しさも感じていたため、在宅勤務ができるフリーの動画制作クリエイターを目指そうと決意しました」

仲間に支えられ、
勇気づけられて学び続け、
フリーランスとして独立

デザインソフト付属のチュートリアルや、自身で購入した書籍で、動画制作を学び始めた竹原さん。日中は研究補助員の仕事、夕方は家事と育児、そして深夜に睡眠時間を削って学ぶという忙しい日々を過ごします。
「独学では、自分の技術力や表現力がどの程度身についたのかがわからなかったため、実力を試そうと、依頼者と制作者をつなぐクラウドソーシングサービスに登録しました。すると、最初の依頼は、動画制作とは無関係のアンケートに答えるという内容で、報酬はたった27円でした。大学院まで出て、会社員としての経験もあるのに、これしか稼げないのかと情けなくなりました。この時期が、1番つらかったです」

悔しい思いをしても、パソコンやソフトも購入し、動画制作の学習もかなり進んでいたため、ここで諦めるわけにはいかないと思った竹原さん。自分と同じようにクリエイターを目指す仲間と交流できたらモチベーションが高まると考え、人と関わることが好きな社交的な性格を生かして、そうしたコミュニティに参加したり、自身が学ぶ様子を積極的にSNSで発信したりしました。
「仲間と共に学んだり、交流したりすることができて、一気に学びが面白くなりました。学習中にわからないことがあっても、SNSでつぶやくと仲間が助けてくれました。After Effectsを学ぶならUdemy(※2)がおすすめだと教えてくれたのも、仲間の1人でした。今では、同じ講座の受講者と、互いに学習状況を発信し合っています。1人で学んでいても、つらくはありません」

同じ目標を持つ仲間との出会いが、今の仕事にもつながっていきました。自分では全く関係がないと考えていた前職の商品開発の経験が、クリエイターとしての武器になると、仲間からアドバイスを受け、過去の経歴をアピールした売り込みを始めました。また、コミュニティで知り合ったイラストレーターから、「イラストを動画にしてほしい』といった依頼もあり、動画制作の仕事が徐々に増えていったのです。

(※2)Udemy(ユーデミー):米国Udemy社が運営する世界最大級のオンライン動画学習プラットフォーム。「教えたい人(講師)」と「学びたい人(学習者)」をオンライン上でつなぎ、社会人の学びを支援。(株)ベネッセコーポレーションは、Udemyの日本における独占的事業パートナー。

ゆるくても前に
進み続けていたら
道が開けていくはず

そうしてパートと同程度の収入を得られるようになり、独立に踏み切った竹原さん。仕事が軌道に乗った今も、Udemyでの学習を続けています。
「Udemyでの学習は、筋トレのようなものだと思っています。次々と新しい技術が生まれているため、スキルのアップデートが必要ですし、経験豊富なクリエイターの作品を真似しながら自分の引き出しを増やしていきたいと考えています」

竹原さんがUdemyでよく受講しているのは、かも(kamo)さんという講師のAfter Effects講座です。この講座を受講したことで、知識や技術に加えて、「できなくても前に進み続ける」ことの重要さを学んだと言います。
「講師のかもさんは、独学で動画制作を学び、第一線で活躍されていますが、講座の中で『1つのことにこだわりすぎず、できなくても前に進もう』と話されていて、できなかったら飛ばしてもよいのだと知り、気持ちがすごく楽になりました。受講時にマスターできなくても、『あの動画のエフェクトは素敵だったな』と思ったら、必要な時にそのセクションに戻って学習できるのが、オンライン学習の魅力です」

自身の経験を後輩のクリエイターにも生かしてほしいと考え、Udemy講座「【ランクなし、案件0から認定ランサーになろう】超初心者向け副業・在宅フリーランス入門|デザイン・動画の営業のコツ」を開講し、講師を務めています。そうした竹原さんの活躍を応援し、支えているのが、竹原さんの夫です。
「パート時代は、忙しいわりには収入が少なく、夫に家事や育児を頼みづらい部分がありました。最初はフリーランスになれるのか懐疑的だった夫も、『独立しただけでなく、講師にまでなるなんてすごい』と驚きつつ、家事や育児を率先してするようになりました。家族に認められて、自分に自信を持てるようになりました。仕事は早朝や子供が寝た後に行い、日中にジムで汗を流すなど、趣味を楽しむ時間もできて、プライベートも充実しています」

竹原さんは、学び始めるのをためらっている人に次のようにアドバイスします。
「自分がやってみたいことがあるなら、ぜひ挑戦してみてください。『できなかったらどうしよう』と不安になると思いますが、手を動かした分だけ、絶対に何かが変わります。私も、最初の報酬が27円で落ち込みましたが、諦めないで学び続けることで、道が開けていきました。私は健康に関心があり、夜寝る前に江戸時代の儒学者・貝原益軒の『養生訓』を読んでいるのですが、その中に『完璧を求めてはいけない』という趣旨の一節があります。学びも同じです。10分でも、15分でもいいので、続けていくことをまず意識するのが大切だと思います」

目標を明確に描き、仲間と助け合いながら地道に学び続け、独立を果たした竹原さん。今後は何を目指しているのでしょうか。
「食品関係の動画制作という得意分野を軸にしつつ、収入の柱を増やしたいと思っています。例えば、Udemyの講師をしたいけれども、動画制作ができない人に、自分の経験を活かして、動画制作のサポートをするといったことなどです。『学びは、自分の可能性を広げる扉』だと思っています。これからも新しいことに挑戦し、自分の強みを増やしていきたいです」