Benesse 「よく生きる」

Learners’ Voice 学び続ける大人たち

学び続け、
昨日の自分より強くなる

川平陽明さん

フロントエンドエンジニア

中央大学理工学部経営システム工学科卒業後、ITソフトウェアの会社に入社し、業務・Webアプリケーションのシステム設計から開発、テストなどの業務に携わる。その後、システム開発会社に転職し、Webアプリケーションの要件定義から開発、テストまでを担当。2023年1月からフリーのエンジニアとして独立し、現在は、Carstay株式会社と業務委託契約を結び、開発業務を行っている。
「人生100年時代」と言われる現在、人生を豊かにするためには、大人になってからも学び続けることが欠かせません。本コーナーでは学びにより自己実現を果たした方へのインタビューを通して、学ぶ気持ちの後押しや学び続けるためのヒントを発見し、学習者を応援していきます。

今回は、大手企業2社でエンジニアとして勤務後、自分の理想の働き方を求めて、フロントエンドエンジニアとして独立した川平陽明さんにお話を聞きました。

慣れないプログラミングに
悪戦苦闘、
30分間の朝勉強を開始

フリーランスのフロントエンドエンジニアとして働く川平陽明さん。2つの企業と業務委託契約を結び、開発業務に携わっています。

川平さんは、高校時代にITと経営学に興味があり、その両方が学べる経営システム工学科のある大学に入学しました。
「卒業後はIT業界で世の中を変えられるような新しいサービスを開発したいと考え、SIer(エスアイヤー)企業を中心に就職活動を行い、ITソフトウェアの会社に入社しました」

念願叶いエンジニアとして働き始めた川平さんでしたが、入社後1年間は苦労の連続だったと振り返ります。
「大学時代に情報システムを学んでいましたが、プログラミング言語に少し触ったことがある程度だったため、研修で一からエンジニアとしての知識や技術を身につけていきました。最初の半年はわからないことばかりで、本当に辛かったですね。同僚に疑問点を聞いても、自分と同じようにつまずいている人が多く、なかなか解決せず、『エンジニアとして本当にやっていけるのかな』という不安しかありませんでした」

そんな川平さんが、自信をつけていくきっかけになったのが「学び」でした。
「仕事でわからないことが多かったため、毎朝30分間、早起きして、昨日できなかったことをインターネットで調べて、疑問だった点を解決することを習慣にしていきました。新しい知識を吸収し、実務で定着させていきました」

そうした学びを半年ほど続けたところ、突然ブレイクスルーが訪れました。
「今まで点でしか理解できなかった知識がつながって線になり始め、急に仕事がスムーズに進むようになったのです。それ以降、新しい言語や技術を学ぶ際も、『学び続けていれば、いつか必ずできるようになる』と思えるようになりました。この経験は今も根幹にあり、学びの原動力となっています」

開発環境の異なる2社で
経験を積み、
理想の働き方を求めて
フリーランスに

新卒で入社したITソフトウェアの会社は、グループ会社の情報・通信システムのソフトウェア開発や、社内ITシステムの開発・運用などを行っています。そこでものづくりの基礎を身につけていった川平さん。

「社内向けのITシステム開発に携わることができ、ものづくりのやりがいを感じることができました。ただ、既に要件定義フェーズが終わったシステムの詳細設計から携わることが多かったため、次第にお客様と折衝しながら要件定義から関わり、開発をしたいと考えるようになりました。また、新たなフレームワークを用いた開発や、クラウド環境での開発などにも挑戦したいと考え始め、入社4年目に転職しました」

川平さんは、より上流工程から関わる仕事をしたいと考え、システム開発会社に転職。Webアプリケーションの要件定義から開発・テストまでを担当しました。

「大手企業向けの社内システムの構築を担当し、プロジェクトマネージャーと一緒にプロジェクトを回していく経験を積むことができました」

転職を機に、将来のための勉強も始めました。

「エンジニアとして自分のやりたい案件を担当するためには、なによりも技術力が必要だとわかりました。自身のスキルアップとしてUdemyを利用し、フロントエンジニアとしての技術を磨くために『フロントエンドエンジニアのための React アプリケーション開発入門 2018年版』と、AWSの資格を取得するための『【SAA-C03版】AWS 認定ソリューションアーキテクト アソシエイト模擬試験問題集』などを受講しました」

Udemyの講座はとても実践的で、業務や資格取得に役立ったと言います。

「動画を見ながら自分でも手を動かして学べる講座が多いため、現場ですぐに使える技術を身につけることができました。また、同じAWS資格でも、豊富な講座が用意されています。その中から試験に向けて問題演習が多くできる講座を受講し、効率的に学習を進めていきました」

転職先では、要件定義から関わるようになり、お客様と折衝する機会が増えた川平さん。新たなジレンマを感じるようになりました。

「上流工程から業務に関わるようになったため、お客様とのヒアリング後、要求をまとめてドキュメントを作成し、システム開発にかかる予算の見積もりを作成するといった工程を担うようになり、開発以外の業務にかなり時間と労力をあてる必要が出てきました。そうした仕事ももちろん面白かったのですが、大学時代に自分が思い描いていたのは、新たなサービスを生み出す仕事。次第に、自社サービスを持つ企業でプロダクト開発に取り組みたいと思うようになりました」

そんな時、SNS広告で、スタートアップでの働き方を聞くことができるイベントを知りました。

「自分の周りにスタートアップで働いているエンジニアはいませんでしたが、これまで働いたことのない環境に興味があったので、イベントに参加しました。そこで、プロダクト開発は、フリーランスエンジニアとも契約して開発していると聞き、自分もこれまでの経験を生かせば、そうした働き方ができるのかもしれないと感じました。自社開発を行う会社では、その会社のサービスしか開発できませんが、フリーランスであれば様々な企業のサービス開発に携われると思いました」

世の中を変えられるような
仕事をしたい、
できることを増やしたいから
学び続ける

いきなりの独立にはためらいがあったので、勤務先で副業が解禁されたのを機に、仕事をしながら、独立の機会をうかがいました。ダイレクトスカウトサービスに登録したところ、すぐに数社からオファーがあり、その中から一番熱心に声をかけてくれたCarstay株式会社と業務委託契約を結び、仕事を始めました。Carstay株式会社は、キャンピングカーやバンのカーシェア・レンタルを行う企業です。川平さんは主に、スクラム体制構築や要件定義、各種サービスの機能開発、機能改善に携わっています。

副業が軌道にのり始め、ほかに1社と業務委託契約を結んだことから、2023年1月に独立を果たしました。

「どちらの企業でもBtoCサービスの開発に携わっています。SNSなどで直接お客様からリアクションを頂くこともあり、今までになかった手応えを感じています。また、Carstayでは、『サイトにバグが出た』『システムが動かない』といった社内の方の困りごとへの対応も担当しています。フリーランスでありながら、会社を支える一員として責任感を感じながら仕事ができる環境に満足しています」

独立後、今まで以上に仕事でやりがいを得られるようになったことに加え、プライベートもより充実させることができるようになったと川平さんは語ります。

「フリーランスになり、自由に時間を使えるようになったのがうれしいですね。平日は在宅勤務をしている妻とランチをしたり、早めに仕事を切り上げて大学時代の仲間と食事を楽しんだりする余裕も生まれました」

今後、川平さんは、UI/UXデザインについて勉強していきたいと語ります。

「プログラミングを学び始めた時から、自分が入力したコードで画面が動くのが好きで、使いやすくて、美しいデザインに興味がありました。UI/UXデザインのコミュニティにも入り、本格的に学びたいと考えています」

新しいサービスを開発し、世の中を変えられるような仕事をしたいと考え、フリーランスのエンジニアの道を歩みだした川平さん。今後の抱負をお聞きしました。

「フリーランスで働き続けるかは未定です。もしかしたらもう1度、会社に入るかもしれません。どのような働き方をするにしても、エンジニアとして活躍し続けるには、できることを増やす必要があり、そのためには学びが不可欠です。昨日の自分よりも強くなるために、これからも学び続けていきます」